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BMW「3シリーズ」(328i)

Text by 岡本幸一郎



 

 おそらく日本でもずいぶん多くの人が気になっているであろう、BMW「3シリーズ」がいよいよモデルチェンジを迎えた。まずは「328i」のみが日本に導入されたのだが、そう遠くないうちに「320i」や「アクティブハイブリッド3」、さらにはディーゼルも入ってくる予定という。

 すでにBMWのモデルを表す数字の下2ケタが、エンジン排気量と一致しないケースが多くなって久しいが、この「328i」もしかり。エンジンは2リッターで、しかも6気筒ではなく4気筒の直噴ターボだ。

 BMWというと、いうまでもなく伝統のストレート6がひとつのシンボルであり、先々代のE46までは「320i」すら2リッターで6気筒だったことを思うと、「28」で4気筒というのはますますしっくりこない気もするところだが、これも時代の流れ。我々のほうが意識改革を迫られていると思うほかない。

 一方、1シリーズにも採用されたくらいなので当然ながら、もちろん8速ATが与えられている。

上級移行した内外装のクオリティー
 ややロングノーズ&ショートデッキとされたバランス感のよい現代的なセダンフォルムや、エクステリアデザインの全体的なテイストは先代E90を踏襲しており、E36→E46や、E46→E90ほどの変化は感じられない。

 パワートレインのダウンサイジングを図ったのに対し、ボディーサイズはわずかに拡大しており、内外装のクオリティ感は明らかに上級移行している。1シリーズもそうだったが、3シリーズもまたクラスを超えた立派さを身に着けている。

 アイキャッチであるキドニーグリルとつながったヘッドライトは、やはりさりげなくインパクトがある。ちなみに外側がバイキセノンで、内側はダミーにつき点灯せず、本来はデイライトである例のリングが日本仕様ではスモールライトとして機能する。

 ボディーサイドに配されたラインやパネルの面構成も美しく、リアビューでは7シリーズや5シリーズに通じるL字型のリアコンビランプが印象深い。

 そして、「スポーツ」、「ラグジュアリー」、「モダン」という3つのデザインラインが設定された点も新しい。標準で付くホイールが異なり、フロントバンパーのベース形状は共通だが、開口部に付くものがそれぞれ違う。キドニーグリルも、バーの本数(スポーツが8枚でその他が11枚)やデザイン(スポーツは尖っている)、色(黒orシルバー)などが異なる。スポーツに与えられる黒光りしたテールパイプも目に留まる。

左からラグジュアリー、モダン、スポーツ キドニーグリルのバーの枚数も違う

 シートマテリアルやカラー、トリム類などインテリアの仕様も差別化されており、非常に豊富なバリエーションの中から選べることも特筆できる。将来的には、これらと並列の関係で「Mスポーツ」もラインアップされるらしい。

 リアのワイドトレッド化もあってか、より踏ん張り感と安定感が増したように目に映るのだが、惜しいのは前後フェンダーの一部に貼り付けられた当て板のようなパネルだ。これは日本の保安基準に適合を図るためのもの。実はギリギリ大丈夫だそうだがマージンを考えて設定したとのこと。ちなみに18インチ車のみで、17インチ車と19インチ車には付かないらしい。

 また、本来は全幅が1811mmのところ、日本仕様は立体駐車場への適合性に配慮し、E90で途中から採られた手法と同じく1800mmに収めるため、フロントのアウタードアノブが薄い専用品となる。ただし、このせいで夜間に足下を照らすランプが付かないなど、本来ある機能の一部が省かれているのが少々残念。願わくは両方をユーザーの好みで選べるようにしてもらえるとありがたいところだ。

セグメント最高の質感
 インテリアは、現行5シリーズのラグジュアリー感も相当なものだが、それに通じる雰囲気があり、マイナーチェンジでブラッシュアップを図ったCクラスや、もともと評判の高いA4をもしのぐ質感を手に入れたといえる。E90ではセンターパネルがほぼ平面になっていたところ、ドライバーに向けて傾けたデザインとなったところもBMWらしい。

 すでに他モデルでも評判のよいブラックパネルのメーターによる独特の質感は上々。E90ではワーニングのみとされていた水温計も復活しているが、キーを差し込むスロットは見当たらない。

 ワイドディスプレイはとても見やすく、電子シフトのセレクターノブのわきに、階層ロジックの整理されたi-Driveの操作ダイヤルとスイットが配されている。

 装備面では、ヘッドアップディスプレイや、俯瞰で車両の周囲の状況を映し出す「トップ・ビュー+サイド・ビュー・カメラ」が設定され、安全装備では「レーン・デパーチャー・ウォーニング」などが設定された。

 室内空間はE90に比べてやや広くなったように感じられ、ホイールベースの拡大もあってか、後席のレッグルームの余裕も増している。トランクの広さは、奥行き、横幅ともまずまず。床面と段差はあるものの、タイヤハウス後方がえぐってあるので、ゴルフバッグを横向きに置けないことはない。また、バンパーの下に足をかざすとトランクフードが開くというユニークな機能もある。

 トランクの右端にファーストエイドキットが置かれるが、その下の工具スペースには、E90でもすでにそうだったのだが、スパナの図が描かれているのにスパナは入っておらず、ドライバーと牽引フックぐらいしか入っていない。昔のBMWとはえらい違いだが、もはや必要なくなったという解釈で問題ないだろう。

 リアシートは4:2:4の3分割で、トランク側からでもレバー操作によりロックを解除することができ、左側を倒すと真ん中もいっしょに6:4で倒れる。

 全車ランフラットタイヤを履くため、フロア下にスペアタイヤのスペースはないが、リアアクスルの真後ろには深さ20cm程度のえぐられた床下収納スペースがある。おそらく将来的にはハイブリッド等で、その場所に何かが配置されることになるはずだ。

トランクルーム
車載工具はこれだけ リアバンパーの下に足をかざすとトランクが開く

 

4気筒ターボも美味い
 メインで試乗したのは、「スポーツ」に諸々で86万円あまりのオプションを追加した車両だ。エンジンスペックについて、最高出力180kW(245PS)/5000rpm、最大トルク350Nm(35.6kgm)/1250-4800rpmというと、そこそこ高性能な部類に入る。数値的には、メルセデス・ベンツ「C250」やアウディ「A4 2.0TFSI」の2WDを大きく上回り、A4のクワトロに比べるとピークトルク値が同じで、ピークパワー値で30PS超も上回るという関係となる。
 
 実際の動力性能も第一印象としてはなかなかパワフル。高回転までストレスなく吹け上がり、回転フィールもスムーズだ。BMWは4気筒も美味いというのは、従来のE90型320iでも感じていたことだが、今回もあらためてそう感じらせられた。

 また、ダウンサイジング直噴ターボというと、微低速の十分に過給の得られない領域では、ピックアップのよろしくないものが少なくないのだが、このクルマは問題ない。厳密にいうと1000回転台ではわずかに感じられることもあるものの、気になるほどのものではない。

 ただし、車内で感じられる音がなんとなく安っぽい。これは4気筒だからというよりも、伝わってくる音質そのものに原因がありそう。けっして静粛性が低いわけではなく、むしろ高いと思うのだが、この音については、もう少し洗練されて欲しいところだ。

 ATセレクターのとなりの「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」のスイッチを操作することで、エンジンレスポンスやシフトタイミング、パワーステアリングのアシスト量などが連動して変化する。「SPORT」や「SPORT+」(※「スポーツ」もしくはオプション装着車に設定)を選ぶと、明快にピックアップが鋭くなり、スタリングの手応えが重くなる。

 タコメーターは6500rpmからが破線で、7000rpmからが実線のレッドゾーンとなっており、「COMFORT」では6800rpm付近でシフトアップするところ、「SPORT」以上を選ぶと7500rpmまで回る。

 なお、シフトパドルは「スポーツ・オートマチック・シフトレバー」、「ステップ・トロニック」とともに2万2000円でオプションという設定なっている。328iであれば全車標準装備でもよかった気もするところだが……。

 ドライビング・パフォーマンス・コントロールを「ECO PRO」モードに設定すると、最大トルクの上限が250Nmとなり、シフトアップのタイミングが早められる。あまりアクセルを開けずに大人しく運転していると、1速では2000rpmを超えるが、2速以上では1500rpmに達するかしないかぐらいのところでどんどんシフトアップしていく。

 それでもごく普通に流しているぶんには、それほどストレスを感じることなく走れるので、通常はECO PROモードを選んでおけば、燃費もよく、不満もなく走れるだろう。

 ちなみに100km/hでのエンジン回転数はわずか1700rpm程度。室内はいたって静かで、むしろタイヤの発するノイズが気になるほどだ。

 また、BMWのほかのモデルでは、ブレーキエネルギー回生システムにより、ブレーキング時に微妙に減速Gが微妙に変化するものも見受けられたが、このクルマは違和感がない。

 信号で停車すると、エンジン・オート・スタート/ストップ機能が作動する。その停止〜再始動のマナーもいたってスムーズに仕上げられている。

まさにスポーツセダン
 ハンドリングは非常に軽快で、ステアリング操作に対して極めて俊敏に反応するさまは、まさに“スポーツセダン”と呼ぶに相応しい。このスポーティな感覚こそ3シリーズの醍醐味で、その点ではメルセデスCクラスやアウディA4を完全に凌駕したといえるだろう。

 エンジンフードを開けると、エンジンは見事なまでにフロントアクスル後方に搭載されていることが分かるし、車検証を見ると、前軸重、後軸重ともに780kgと記載されている。つまり前後重量配分は正真正銘の50:50である。

 半面、そのトレードオフとしてか、乗り心地はやや固め。足まわりは1シリーズと同じくダンパー/スプリングが入力分離方式となっているが、しなかやだなと思っていたら、いきなりドタバタする領域もあって、ややストローク感に乏しい印象も。それはランフラットタイヤのせいではなく、サスペンション自体の味付けによるものと言えそうで、もう少し距離を走ると、また印象は変わってくるかもしれない。

 一方で、タイヤ自体の進化もあって、ランフラットタイヤ特有の路面への当たりの硬さはあまり感じられなかった。また、それを消すために、ダンパーの初期の減衰を落とし、その結果、高速巡航時にフワフワするといった例も見受けられるところだが、このクルマはそんなこともなく、路面の容易高速道路ではフラットに落ち着いた走りを披露してくれた。

 3シリーズのニューモデルを心待ちにしていた人にとっては、328iははたして買いなのか、あるいはこれから出るモデルを待ったほうがいいのか、非常に悩ましいところだと思うが、やはり6気筒でないことを許せるかどうかというのが大きな分かれ道だろう。ただし、性能的には十分どころか十二分であることは太鼓判を押したい。

 6気筒エンジン車についてはハイブリッドのみが日本導入予定で、欧州で「335i」として販売されている純粋なガソリン6気筒エンジン車は、どうやら導入されない見込みのようだ。

 あるいは、先代E90においても終盤は4気筒モデルが販売の約半数を占めていたというが、新しい320iがどのくらいの価格で発売されるかというのも大いに気になるところだ。

 ちなみに320iは、328iとエンジン本体は同じで、ターボチャージャーの仕様と諸々の制御が異なる模様。4気筒派は、ひとまずそちらを待ってみるというのが賢明かもしれない。


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2012年 3月 19日