インプレッション

ボルボ「XC60 T6」(新潟ロングラン試乗)

 2015年には「T3」「T4」「T5」「D4」(順不同)と新しい「Drive-E(ドライブ・イー)」パワートレーンを続々とローンチしてきたボルボだが、今度はいよいよ「T6」だ。

 ドライブ・イーは100%自社開発によるボルボの新パワートレーン戦略の総称であり、ボルボでは件のパワートレーンにおいて「排気量は2.0リッター以下、4気筒を超えるエンジンを開発しない」という方針を打ち出している。

 そして「T6」では、ターボチャージャーに加えてスーパーチャージャーを組み合わせることで、最高出力225kW(306PS)/5700rpm、最大トルク400Nm(40.8kgm)/2100-4500rpmというスペックを実現。従来の3.0リッター直列6気筒エンジンにターボチャージャーを搭載した「T6」と同等の性能を確保するとともに、JC08モード燃費で実に3割以上という大幅な燃費向上を実現している。

 ターボチャージャーについても、鋳造製ではなく鋼板製のタービン&マニホールドを採用していることも特徴で、それに4枚のブレードとらせん状ローター/インペラーブレードを持つルーツ式のスーパーチャージャーを結合。スーパーチャージャーには発進から3500rpmまで作動し、クラッチによりON/OFFを切り替える。高速領域になるとターボチャージャーのみが働くようになっている。なお「T6」の駆動方式は4輪駆動のAWDのみとなる。

「T6」は1月に日本導入が開始された新型「XC90」にラインアップされているほか、2月からは“60シリーズ”と呼ばれる「S60」「V60」「XC60」の3モデルにも追加された。そこで、この「T6」が持つグランドツーリング性能などを確かめるため、「T6」搭載の“60シリーズ”によるロングラン試乗会が行なわれた。

2月に直列4気筒1.5リッター直噴ターボの「T3」と合わせて追加された「XC60 T6 AWD R-DESIGN」。ボディサイズは4645×1890×1715mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは2775mm。車両価格は719万円だが、試乗車は本革シートなど10万3000円分のオプションを追加して729万3000円
ターボとスーパーチャージャーの両方を備える直列4気筒2.0リッターの「B420」型エンジン。最高出力225kW(306PS)/5700rpm、最大トルク400Nm(40.8kgm)/2100-4500rpmを発生
積雪が予想される新潟県まで往復するため、試乗車にはピレリのSUV向けタイヤ「スコーピオン ウインター」が装着されていた
先進運転支援機能のACCや追突回避・軽減フルオートブレーキ・システムなどを機能させるため、フロントグリルにミリ波レーダー、フロントウィンドウ内側にデジタルカメラと赤外線レーザーの各種センサー類を設置
XC60はヘッドライトのハイ/ローを自動切り替えするフル・アクティブ・ハイビームを全車標準装備

圧倒的にトルクフルで4気筒のネガティブな面を感じさせない

 試乗当日は、朝の8時過ぎに東京 港区にあるボルボ・カー・ジャパン本社を出発して、目指したのは新潟の魚沼だ。試乗車としていくつかの「T6」搭載車が用意されていた中から、雪のある景色にもっとも似合いそうな「XC60 T6 AWD R-DESIGN」をチョイスした。

 現行型モデルの日本導入開始は2009年8月と、XC60はデビューしてからそれなりに時間が経過しているとはいえ、たび重なる改良とR-DESIGN仕様によるスタイリッシュないでたちの見栄えもよく、こうして新しい「T6」を得たことで、ここにきて再びその商品力を高めたと言えそうだ。

60シリーズの「T6」モデルは自動防眩機能付ドアミラー、プレミアムサウンド・オーディオシステム/マルチメディアを標準装備
純正装着されているカーナビに目的地をセット。往復500kmほどのロングラン試乗だ

 首都高速道路の5号池袋線で北上し、外環道を経由して関越道へ。ひとまずフィーリングは上々だ。排圧に頼ることなく機械的に過給するスーパーチャージャーが低回転域を受け持つので、やはりレスポンスがいい。最近は直噴をはじめ技術の進化により、ターボチャージャーもいわゆるターボラグがかつてほど顕著ではなくなってきたが、「T6」はさらに応答遅れが小さく、そして圧倒的にトルクフルだ。スーパーチャージャー特有の作動音は聞こえるものの、けっして不快な音ではない。また、スーパーチャージャーが作動してもガクンと唐突に加速する感覚もない。スロットルでトルクの出方を緻密に制御しているのだろう。

 そしてアクセルを踏み込むと、胸のすくような爽快な加速を提供してくれる。しかも、「T6」は「T5」よりややターボチャージャーの容量が増しているおかげで、いわゆるハイフロータービンのような、より伸びやかな加速フィールを味わうことができるのだ。エンジンサウンドについても耳障りな音や振動は見事に抑え込まれており、4気筒のネガティブな面を感じさせないことは、「T5」を搭載したXC60でもすでに体験したとおりだ。

まずは首都高の最寄りの入口となる芝公園入口を目指す。すでにちょっとした渋滞が起き始め、信号待ちなどでもストップ&ゴーが頻発する状況だったが、低回転からトルクフルな「T6」が1880kgの車体をすいすいと加速させる
土樽PA(パーキングエリア)から先はチェーン規制との情報表示を発見。「T6」搭載のXC60の走破性を披露する場になるか!?
途中の上里SA(サービスエリア)などで休憩を挟みつつ先を急ぐ
外環道を経由して関越道を北上

 ボルボといえば、「IntelliSafe(インテリセーフ)」と呼ばれる先進運転支援機能を2015年モデルから全車に標準装備しているが、高速道路を使ってロングドライブに出かけると、とりわけ全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)のありがたみを実感する。

 XC60は電動パワステではなく電動油圧パワステを採用しているため、S60やV60が装備するLKA(レーン・キーピング・エイド)の設定はなく、LDW(レーン・デパーチャー・ウォーニング)となるのだが、LDWでもあると助かることには違いない。BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)も、これがあると車線変更でのドライバーの負担が小さくなって助かるところもよい。

 100km/h巡航でエンジン回転数は約1900rpm。ACCを100km/hにセットしてときおり平均燃費の表示を見ると、交通状況や路面の勾配によって12〜13km/Lを行き来するという感じで推移していた。車両重量が1880kgのSUVであることを考えると、まずまずの燃費といえるだろう。

ACCはステアリングスポークのスイッチで車速や車間距離などを設定。ステアリングコラム左側にあるウインカーに各種設定の選択ダイヤルや決定ボタンをレイアウトし、運転中もステアリングを握ったままさまざまな操作が行なえる
ACCを制限速度の80km/hに設定したシーン。インテリセーフのRSI(ロード・サイン・インフォメーション)は、うっかり見落としてしまった標識の内容を確認するのにも便利な機能だ
左右の死角をカバーしてくれるBLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)も運転中の疲労軽減に役立つ装備
北上を続けるうち、道路脇の案内板に「雪注意」の表示が出てきた
谷川岳を貫通する約11kmの関越トンネルを抜けると……
出口の先は銀世界。走り続けていくと路面も雪で覆われるようになった。六日町IC(インターチェンジ)で関越道から一般道に下りる

 群馬と新潟の県境をつなぐ関越トンネルを抜けると、まるで有名な小説にあったように本当に別世界で、一面が雪国となっていた。せっかくなのでまっすぐ目的地を目指すのではなく、ちょっと寄り道して雪のある路面を探してしばらく走ってみた。

 前でも述べたとおり、「T6」にはAWDのみが設定されている。AWDシステムにはハルデックス製の電子制御カップリングを搭載しているおかげで、雪道での走破性にまったく不安はない。たとえ滑りやすい路面でも、1輪さえグリップしていれば最適な駆動力をそこに伝えてくれるので、めったなことではスタックしない。この日に走った程度の雪道であればものともしないという印象であった。

六日町ICから東側の南魚沼市の市街地を抜け、ちょっと走って三国川(さぐりがわ)ダムの入口地点に到着
三国川ダムのダム湖であるしゃくなげ湖周辺の道路は途中で通行止めになっており、除雪されていない部分も多かった。しかし、「T6」+ハルデックス製AWDのXC60はものともせず走破。観光センターでは「ダムカレー」も食せるとのことだったが、残念ながら冬期休業中だった

 そして、折り返し地点の「魚沼の里」に到着。こちらにある旧家の一部を移築したという「そば屋 長森」で美味しい蕎麦などをいただいて帰路につく。新潟県内は来たときよりも雪が激しく降っていたが、やがて関越トンネルを抜けると、当然ながら往路と逆にまったく雪が降っていなかった。トンネル1本を挟んでまさしく別世界である。

「魚沼の里」内にある「そば屋 長森」で、店員さんのお薦めに従い鶏せいろそばや麹漬けの「やたら漬け」などを味わう
「魚沼の里」からの折り返しでは、強くなってきた雪のなか「三国街道」を湯沢ICまで走行。やはり一般道でのストップ&ゴーでは「T6」が持つ低速トルクの恩恵が心強い。ただ、降雪のなかを走るうちに、フロントグリルにあるミリ波レーダーのカバーが雪に覆われてACCが使えなくなってしまった。この状態でもクルーズコントロールが機能するのはありがたいが、雪などの付着自体に対する対策もほしいところ。関越道に入る前に雪を落として問題解決
雪の舞い散る新潟県から関越トンネルを通過すると、やはり群馬県側は別世界だ

 東京の都心部から新潟の魚沼まで500kmあまりをドライブして感じたのは、昨今の自動車界でスタンダードとなっている2.0リッターの4気筒エンジンにおいて、「T6」は現状でトップレベルの完成度ではないかということだ。

 性能的にも質感の面でも素晴らしい仕上がりである。ボルボが4気筒でもフラグシップユニットとして相応しいものを造れると判断した所以をうかがい知ることができ、大いに納得する思いである。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:深田昌之