【インプレッション・リポート】
トヨタ「ワクドキ体験会」【後編】~コンセプトモデルほか

Text by 岡本幸一郎


 トヨタが、報道メディア向けに開催した日本未発売車やコンセプトモデルの体験会「ワクドキ体験会」。前編では日本未発売モデルのインプレッションをお届けしたが、後編ではあのGRMNのコンセプトモデルを中心にインプレッションをお届けする。

iQ GAZOO Racing tuned by MN
 ショートコースに場所を移して、GRMN iQに試乗。限定販売された100台が、あっという間に完売したというエピソードも自慢のモデルだ。専用スポーツサスペンションや、6速MT、16インチタイヤ&ホイール、専用ブレース、専用の内外装パーツが与えられており、走りの実力もなかなかのもの。ベースのiQは、ショートホイールベースのわりにトレッドが広く、車高が高いので、ノーマルだと“攻めた”走りをする気にはなれないところだけど、このクルマは引き締まった足まわりが姿勢変化が小さく抑えられ、ブレーキも強化されているので、楽しく走ることができた。

iQ GAZOO Racing tuned by MNはショートコースを使って試乗した。さすがに市販されているモデルだけあって、その完成度は高い

SPORTS HYBRID Concept
 2007年で絶版となったMR-Sをベースにワイド化されたボディーは見た目にも迫力満点!パフォーマンスもそれに相応しく、1.8リッター直4ではなく、3.3リッターV6の3MZ型エンジンをミッドシップ搭載し後輪を駆動。フロントにモーターを搭載し前輪を駆動する4WDだ。トータル出力は400psオーバーで、0-96km/h加速は4.5秒を誇るという。

 乗ってみると、けっこう荒削りで、グンと加速して、ギュッと回生ブレーキを働かせる感じ。でも、ミッドシップでなおかつワイドトレッドとくれば、コーナリングが快感!ベターッとどこまでも回れる感じで楽しい。今回は構内路のみの試乗だったが、ぜひ今度はコースを攻めてみたい。

迫力のワイドボディー。ミッドシップに搭載されたエンジンは後輪を駆動し、モーターで前輪を駆動する4WDとなる
カーボンパターンと赤を使ってスポーティに仕上げられたインテリアがやる気にさせる

iQ Supercharger Concept
 前記のGRMN iQをベースに、スーパーチャージャーを追加した仕様。20kPa程度の低いブースト圧だけど、もちろん過給しているぶんだけ、いくらか中間加速では厚みのあるトルク感が得られ、クルマが小さいと、ちょっと速くなっただけでもすごく速くなったように感じられる。ただし、惜しいのはレスポンス。もう少し低回転域でのピックアップがよいとなおよかったんじゃないかと思う。

 スペックは、最高出力がベース比約20%UPの72kW(98PS)/6000rpm、最大トルクが約25%UPとなる123Nm(12.5kgm)/4400rpmとなっている。試乗車は輸出仕様らしく、右ハンドルながら左ウインカー。ちなみにiQの6速MT仕様が、まもなくカタログモデルとして市場投入されるらしい。iQって、意外とチューニングベースとして面白いクルマになるかもしれない。

ボディーの軽さもあって、出力のアップ以上に速さを体感できる。インパネに追加されたブーストメーターがスーパーチャージャーの証だ

GRMN Vitz turbo Concept
 こちらはターボ付きのヴィッツ。コンパクトな車体に、小排気量エンジン+過給機を積むという流れは、いまや欧州でメインストリームとなっているけど、次期ヴィッツにはそうした仕様もあいそうな予感。車内にロールケージを組み、シャシーにもスポーティなチューニングが施されていて、そのままスポーツ走行にも使えそうな仕様だ。

 最高出力110kW(150PS)/6000rpm、最大トルク196Nm(20.0kgm)/4800rpmと、このコンパクトな車体には十分すぎるほどのスペックが与えられている。速いクルマというのはそれだけで楽しいし、スポーティなフィーリングも大歓迎。次期ヴィッツRSは、ぜひこんな感じで出てきて欲しいところだが、全体的にもう少し洗練されているとなおよかったと思う。

室内にはロールケージが張り巡らされ、いかにもレーシーな印象。ターボらしくスポーティな走りができる

マークX
 いまや貴重な日本市場をメインに考えて開発された上級セダンだが、あらためて試乗したマークXは、やはりすべてがそつなくまとまっているところはさすがだし、ほどよくスポーティでイイ。個人的には、エンジンが速く、足まわりが引き締まっていて、ステアリングもクイックな、「350S」グレードにひとつの好バランス点を感じている。もっと高価なクラウンのアスリートよりも、走りのまとまりは上じゃないかと思う。

マークXは350S(写真左)と250Gリラックスセレクション(写真右)を試乗した

FT-86シミュレーター
 ピット内に設置されたシミュレーターを使って、まだ世に出ていないFT-86のバーチャル試乗もできた。まもなく発売のゲーム「グランツーリスモ5」を使ってFT-86を先取りしたもの。話題騒然のFT-86のコクピットと外観や、もしもクルマが実在したらこんな感じになるはずというハンドリングまで再現されていた。しかもブースト計が表示されており、モデルは東京オートサロンに展示されたFT-86ベースのターボ仕様「G Sports Concept」らしい。市販のゲームには入らない予定というのがちょっと残念……。

ゲームの中でだがFT-86 G Sports Conceptを試乗。と言ったものの僕はゲームはあまりやらないので、お粗末な状態でしたが……画面右下にブーストメーターが。ターボ仕様らしい

Winglet
 次世代パーソナルモビリティとしてトヨタが鋭意開発中の、クルマというよりロボット。立ち乗り型で、「走る」「止まる」「曲がる」を体重移動のみで行なう。最高速度は6km/hで、リチウムイオン電池を搭載し、試乗したロングハンドルの「タイプL」であれば、一充電で最長10kmの走行が可能。スムーズに乗りこなせるようになるにはちょっと練習が必要だけど、コツをつかめば面白い! 歩行が困難な人などにとって、とても有益な移動手段となる可能性がある。東京お台場のメガウェブで、i-REALとともに10月末まで体験試乗会を実施中。

パーソナルモビリティロボット「Winglet」も試すことができた。タイプは3種類あるが、ハンドルのある一番大きいモデルが初心者向き。最初は慣れが必要だが、慣れるとスキーをするような感覚で走ることができた

 という感じで、いったい何台乗ったのかちゃんと数えないとわからないほど、トヨタ三昧の1日であった。世界には僕らの知らなかった楽しいトヨタがいっぱい存在することを知ることができた。とかく「面白いクルマがない」などといわれがちなトヨタだけど、「素材」は豊富にあることはよくわかったし、今のトヨタが、近年になくチャレンジングな姿勢であることもヒシヒシと伝わってきた。トヨタがもっと我々クルマ好きを楽しませてくれることに期待したいと思う。

2010年 10月 25日