インプレッション

ランドローバー「フリーランダー2」

 いかにも頑丈で強そうに見えるけれど、燃費のことなどは少しも考えていない――ざっくばらんに言ってしまえば、「SUV」と称されるモデルに対する人々のイメージというのは、多くの場合、今でも大方そうしたものであるだろう。

 強そうに見えるためにはやはり「大きい事」が効果的なのは間違いないし、そんな大柄ボディーに4WDシステムを加え、さらにそれを活発に走らせたいとパワフルな大排気量エンジンを積むとなれば、今度は「燃費が悪い」のも自明というわけ。

 大径で幅広のタイヤを履けば当然走行抵抗だって大きくなるし、背の高いボディーも空気抵抗の悪化に直結するのだから、効率という面からは“真逆”を行っているよう思えるというのも、大局的には間違っていないはずだ。

 そんなSUVが、しかし今でも根強い人気を誇るカテゴリーである一方で、やはりそうしたキャラクターの持ち主であるからこそ、“環境派”の人々からは「突っ込みどころが満載」なモデルということにもなってしまう。

 かくなるうえは、逞しいルックスと高い走破性はキープしつつも、さしあたりは燃費が大きく改善されれば、それはこれからの時代にもマッチしたSUVと言えるはず――と、そう解釈をしてもよさそうだ。

 ここに紹介するのは、まだモデルライフの途中でありながらも、エンジンを全く新しいユニットへと置き換えることで、そんな“時代の要請”へと応えようとする1台。それが、「オフロード4WD車の老舗ブランド」であるランドローバーからリリースされた、「フリーランダー2」の最新モデルというわけだ。

エンジン変更で燃費向上

 最新のフリーランダー2を、2009年にフェイスリフトを受けた従来型と見た目から一瞬で区別をするのは、簡単なことではない。

 昨今流行のLEDテクノロジーを活用して新デザインが施されたフロントライト/テールランプや、センターパネル部から10キーを廃したダッシュボード、ランドローバー各車の特徴である「テレインレスポンス」操作部のダイヤルからプッシュスイッチへの変更など、従来型のオーナーであればその新しさにはすぐに気が付くかもしれない。

 けれども、内外装全体の印象については、むしろ「これまでの雰囲気をしっかり踏襲」と、そう紹介するのが適当でありそうだ。もちろん、こうしてイメージのチェンジではなくキープの道を選んだのは、これまでのルックスの完成度に自信があるからという判断でもあるだろう。が、「せっかくエンジンを刷新したならば、見た目上でももう少し明確にそれを演じて欲しかった」と、そんな声が現れても確かに不思議ではない。

 ボルボ車などにも搭載されて来たこれまでの3.2リッター直列6気筒エンジンに替えて、新たにフリーランダー2のフロントフード下に横置きされたのは、すでに「レンジローバー イヴォーク」などで実績を積んでいるターボ付きの4気筒2リッター直噴ユニット。組み合わされるトランスミッションはトルコン式の6速ATと変更ナシ。ちなみに、日本には導入されないディーゼル・モデルが積むのもすべて4気筒ユニットで、すなわち「最新のフリーランダー2からは6気筒エンジンが姿を消した」と、こういうことでもあるわけだ。

 プレミアム・ガソリンを食するオールアルミ製の新エンジンが発する最高出力は240PSで、これは従来型6気筒エンジンと比べて7%のプラスという関係。340Nmの最大トルクも同じく7%のプラスである一方、JC08モードによる燃費値は8km/Lから9km/Lへと向上している。2気筒の削減が図られた成果は重量の低下にも現れていて、エンジン単体では従来型比で40kgのマイナス。アイシン製のATは、すでに2011年に「ニュートラル・コントロール」のロジックを組み込んだ、最新のユニットであるという。

十分以上の力強さが味わえる

 そんな最新のフリーランダー2の国際試乗会は、トロントに次ぐカナダ第2の都市であるモントリオールを基点に開催された。

 過去には夏季オリンピックが開催され、7月にはF1のカナダGPも行われたこの場所だが、実は冬が訪れるとマイナス2桁の気温が続くことも珍しくないという寒さ厳しい地でもある。実際、今回の試乗会中も都心では雪が舞い、郊外に出ればしっかりした積雪路面が現れた。

 そんなシーンでは、エンジンが載せ換えられたことによる動力性能の変化のみではなく、エンジンルーム内から“40kgのお荷物”が下ろされて身軽になったフリーランダー2がどのようなフットワーク性能を示してくれるかも、当然興味のポイントとなったことは言うまでもないだろう。

 前述のように、イヴォークにも積まれる心臓が“移植”されたフリーランダー2だが、“コンパクトSUV”を謳い、従来よりも軽量化が図られたとは言っても、比べればボディーサイズがより大きいこともありイヴォークよりは60~90kgほど重い。

 すなわち、ザックリ言って「“成人男子”1人分ほどは重い」という影響は、やはり皆無というわけには行かなかった。新エンジンは、わずかに1750rpmで最大トルクを発するというそのスペックが示す通り、スタートを切った直後から即座にターボブーストの効きを実感させてはくれる。が、それでもスタート直後の一瞬にはやや“重さ”を感じさせられるゾーンがあり、そこでの軽快感は「イヴォークには及ばない」という印象が否めないのだ。

 一方で言い方を変えれば、「その一点を除けば、常に十分以上の力強さが味わえる」と、そんな表現も当たっている。例えば、100km/hクルージングは約1900rpmほどのエンジン回転数でこなすことになるが、そこからはキックダウンに頼らずともしっかり体感できる加速力が得られる、といった具合だ。

 振動・騒音性能面は「飛び切り優れている」とまでは言えないものの、従来の直列6気筒エンジン車に比べ特にハンディキャップを感じるような場面もなかった。基本的には動力性能にゆとりがあるので敢えて高い回転域を使う必要がないのに加え、この4気筒エンジンには2本のバランスシャフトが備わるという事実も、もちろん影響があるはずだ。

 一方で、その“死角”を採り上げるとなれば、やはり現状ではアイドリング・ストップメカが用意をされていないという点だろう。ただし、こちらはどうやら「近い将来」には準備が整う模様。すなわち、どうしてもそこに拘るならば、手に入れるのはしばらく待ち、と、そうした選択肢もアリということになりそうだ。

“身の丈SUV”としての資質が大幅アップ

 ところで、そんなフリーランダー2はパワーパックを横置きとしたFFレイアウト・ベースの4WDということで、コーナーでのアンダーステアが強く、ハンドリングの自在度が低いのではないか? といった懸念を持つ人も居るかも知れない。

 が、前述のように主にフロントまわりを中心に荷重負担が減らされたうえで、電子制御式の4WDシステムが巧みに前後アクスルへのトルク配分を行った結果に発生する挙動は、十分にコントローラブルなもの。それは、今回トライした雪上や氷上の走りで、しっかり確認することができたのだ。

 ちなみに、そうしたシーンではテレインレスポンスのモードは当然「SNOW」位置の選択が推奨されるものの、腕に覚えがあるならば、砂地での走行抵抗に負けない駆動力を許しつつ、スタビリティ・コントロールの介入を遅らせて、敢えてある程度の車輪の空転も許す「SAND」のポジションを選んで走るのもなかなか面白いものだった。

 と同時に、今回は大きく荒らされた特設のオフロード・コースを走行することで、このモデルが備える非凡な踏破性も改めて確認。人間が歩くのも困難なような雪混じりの泥濘地を涼しい顔で走り抜ける姿は、SUVの面目躍如という印象。“末っ子”とは言っても、やはり「ランドローバー・ファミリーの一員」なのである。

 SUVに興味はあるけれど、5mになんなんとする全長の持ち主やリッター当たり5~6kmという燃費などではとても手に負えそうにない、と感じても、「このモデルとならば仲良くやって行けそう」と思える人はきっと少なくないはず。そんな“身の丈SUV”としての資質を大幅にアップさせたのが、新しいフリーランダー2であるということだ。

(河村康彦)