写真で見るフィアット「ABARTH 500」


 2009年4月に登場した「ABARTH 500(アバルト チンクエチェント)」は、1960年代のアバルト車に名付けられた「小さいけれど猛毒を持つサソリ」のあだ名を継承するべく、コンパクトなボディーにスポーティなスタイル、そして高性能なメカニズムが与えられた。

 エンジンはターボチャージャー付き直列4気筒DOHC 1368ccを搭載し、最高出力99kW(135PS)/5500rpm、最大トルク180Nm(18.4kgm)/4500rpmを発揮。さらに、インストゥルメントパネル部に設けられるスポーツファンクションスイッチをONにすると、オーバーブースト機能が作動して最大トルクが206Nm(21.0kgm)/3000rpmまで引き上げられる。ON状態での最高速度は205km/hで、100km/hまで加速するのに必要な時間は7.9秒。

 スイッチOFF時は燃費重視型の設定に変更され、欧州複合モードにおける燃費測定では100km走行するのに必要なガソリン量を5.4Lとしている。トランスミッションは5速MTのみで、前輪を駆動する。

 エクステリアは、フロントエンドにベースモデルよりやや大きめなエアインテークと、その上部に設けられるアッパースロットのほか、バンパー左右端部のエアインテークが与えられる。リア部では、ディフューザー一体型のリアバンパーやクローム仕上げのデュアルエキゾーストパイプ、リアルーフスポイラーを装備するなど、スポーティな仕上がりをみせる。

 インテリアでは、専用のレブカウンター一体型のスピードメーターや、LED表示式のシフトアップインジケーター内蔵のブースト計が目に飛び込んでくる。スピードメーターは光の乱反射を防ぐためフードで覆われており、視認性を高めるものとしている。

 安全面においても、EBD(Electronic brake force distributor:電子制御式制動力配分機構)を組み込んだABSに加え、最新電子制御式デバイスであるESP(Electronic Stability Program:スキッドコントロール)、ASR(Anti Slip Regulation:駆動輪空転防止機能)、坂道発進を補助するヒルホールドシステム、パニックブレーキ操作を補助するHBA(Hydraulic Brake Assistance:ハイドローリックブレーキアシスト)、駆動輪タイヤのロックを防ぐMSR(エンジンブレーキ制御機能)など、数々の装備により車両の安全性を高める。

 また、フロントデュアルエアバッグをはじめ、前席ウインドーエアバッグ、サイドエアバッグ、ドライバーの脚部を保護するニーエアバッグと、合計7つのエアバッグを標準装備とし、「このカテゴリーでは記録的」とする安全面にも抜かりはない。

 価格は295万円で、ハンドル位置は左右から選択できる。ボディーカラーはソリッドホワイト(Bianco Gara)が標準設定となるが、オプションでグレー(Grigio Campovolo)、ブラック(Nero Scorpione)、パールホワイト(Bianco Iridato)も用意される。

 なお、フィアットでは、ABARTH 500向けにハイパフォーマンス仕様のECUや、伊BMC製のハイパフォーマンスエアクリーナー、スプリングレートを高めたサスペンション、17インチアルミホイールなどをパッケージングした「esseesse(エッセエッセ)キット」を用意する。これらを装着することで、エンジンの最高出力は118kW(160PS)/5500rpm、最大トルクは230Nm(23.5kgm)/3000rpm(スポーツファンクションスイッチON時)まで向上する。esseesseキットは取付費用込みで46万2000円。

ボディーサイズは3655×1625×1515mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2300mm。乗車定員は4名。車両重量は1110kg。撮影車両はソリッドホワイト
標準装備の16インチアルミホイール(タイヤサイズ:195/45 R16)。オプションで17インチアルミホイール(205/40 R17)も用意されるドアミラーはさりげなく赤い塗装が施される。ボディー側面のABARTHストライプを含め、スポーティ性が高まるアクセントとなっている
ヘッドライトはハロゲン式で、フロントフォグランプを装備するクローム仕上げのデュアルエキゾーストパイプ。サイレンサー部にスコーピオンマークが刻まれるターボチャージャー付き直列4気筒DOHC 1368ccエンジン。ヘッドカバーも赤い塗装とともにスコーピオンロゴが入る
リアルーフスポイラー。ベースモデルのフィアット500には装備されないリアゲート中央の「ABARTH」ロゴ。その下のクローム部には「500」のロゴも入るクリーム仕上げのドアハンドルはグリップタイプ
内装はブラックをベースにしながら、インパネ部にホワイトのアクセントを効かすデザイン。ハンドルやシフトカバー、スピードメーターカバー、フロアマットなど、随所に赤いステッチが入る運転席側のドア。ミラー調整スイッチがある程度でシンプルな作り込みだが、ドアトリムにも赤いアクセントが入るハンドルは3スポークデザインで、両手のグリップ部に親指がフィットする構造。ボトム部の形状はフラット
スピードメーターは240km/hまで刻まれ、レブリミットは6000rpmから。中央のマルチインフォメーションディスプレイにはドア、テールゲートモニターや車外ランプバルブモニター、外気温度・時刻・点検時期表示などを行うLED表示式のシフトアップインジケーターを内蔵するブースト計は、運転席側に傾けられるとともにフードが被され、視認性に優れるものとなっているFM+AM電子チューナー付きCD/MP3プレーヤーの下に配置される3つのボタンのうち、左側の「SPORT」を押すことによってオーバーブースト機能が作動するほか、電動パワーステアリングのアシスト量をスポーツ走行向けに変更する
エアコン操作パネル。TTC(Torque Transfer Control:トルクトランスファーコントロール)スイッチをONにすると、駆動輪への駆動トルクの伝達性能を向上し、特にタイトコーナーにおけるコーナリング特性を改善し、車両の安定性を高めるトランスミッションは5速MTのみ。シフトノブはアルミ製キッキングプレートには「500」のロゴ
アンサーバック機能付きのキーレスエントリーを標準装備。テールゲートのロック解除も可能助手席前に用意される収納スペースアルミ製スポーツペダル。滑り止め用のラバーを備える
ブラック/レッドのツートーンカラーとなるヘッドレスト一体型スポーツレザーシートは、座面の高さ調整が可能。リアシートはブラック一色だが、赤いステッチが施される。円形のヘッドレストも洒落ている
後席用のドリンクホルダーラゲッジルーム下に用意されるタイヤリペアキットと工具一式。スペアタイヤは備えない
ラゲッジルームの容量は158Lだが、後席の5:5分割可倒式バックレストを倒すと550Lまで拡大される

(編集部:小林 隆 / Photo:小林克好、フィアット グループ オートモービルズ ジャパン)
2010年 4月 5日