NAOさんのDIYでクルマいじり 【第5回】「低音しっかり」で迫力のサウンドを |
■「デッドニング」ってご存じですか?
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清水の舞台から飛び降りる勢いでドアを分解したところ、思いの外スカスカで穴だらけという事実に愕然。低音しっかりキットの実力は如何に!? |
鉄板で作られた穴だらけの箱に、防水用のビニールシートが貼られた「スピーカーボックス」。誰がどう考えてもオーディオ向けのデザインには見えないと思う。家庭用ステレオのスピーカーボックスと言えば木製が主だが、これは加工しやすさだけの問題ではなく、特定の周波数で共振しないために木製が最適という理由があるそうだ。
対してクルマのドアは鉄製がほとんどで、軽く叩いてみるとゴンゴン、ボワンボワンと共鳴しまくっている。そんな鉄製の箱は走行中の騒音を思いっきり取り込み、さらにスピーカーからの音がボワボワと共鳴し、挙げ句にビニールシートがビリビリと余計な周波数をばらまいてしまい、さらに大きな穴から肝心の音圧は抜けまくってしまう、悲しいかな、これがクルマのドアの現実なのだ。
では、どうしたらよいのか。ドアそのものを木製スピーカー状にするのは非現実的だが、鉄筋建築の室内にスピーカーセットを置いたような状態を作り出すことはできる。要するに、ドアそのものの振動を抑え込み、防音材や遮音材で理想的なスペースへと変化させてやればよいのだ。これらの作業は「デッドニング」と呼ばれており、筆者もクルマを買ったらまず行うお約束の作業と考えている。
デッドニングにはさまざまな材料が使用されるが、フェルトや不織布でできた吸音材、ブチルゴムとスポンジが組み合わされた遮音材、ブチルゴムとアルミシートなどが組み合わされた制震材といったものが一般的だ。振動を制御し、騒音を吸収し、物理的に密閉状態を作ることでボワボワの共鳴だったドア空間が理想的なスピーカーボックスへと変化し、大幅な音質向上を実現することができる。
冒頭に書いた自動車ドアならではのスピーカーとしては困った状態が、デッドニング作業を行うことでスピーカー取り付け部周辺のビリビリ共振を抑え、低音は迫力が増し、中高音は抜けが良くなり、さらに車外からの騒音が遮断されるので大音量にしなくても静かな車内で快適に音楽を楽しめるようになる。
デッドニングに使用する材料は様々あるが、例えば制振材として有名なものに日東電工が開発した「レジェトレックス」(http://www.nitto.co.jp/product/datasheet/sealing/009/)がある。データシートによると、「パネル面積の30%程度に貼るだけで十分な騒音低減効果が得られる」そうだ。実際にクルマの内装を分解するとよく分かるのだが、車種にもよるが標準状態で取り付けられている制震材は「ポツリ……ポツリ……」と貼られている印象がある。大きな買い物のクルマではあるが、メーカーのコストダウン努力はまさに1円単位の勝負。なので、面積の○%に貼るだけで効果があるといった開発競争も熾烈なのだろう。
趣味のクルマいじりの場合、お財布さえ許せば高価な静音材をどんどん使用することも可能だが、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」。筆者が以前に乗っていたE51エルグランドは、デッドニングから始まった静音化改造が行きすぎて、数百kg単位で車両重量が増加してしまった。燃費の悪化ももちろんだが、某所の立体駐車場で他の同型車は駐車できているのに、筆者愛車だけが「重量オーバーエラー」で駐車を断られるなど想定外のトラブルも発生したことがある(笑)。
このように、気合いに物を言わせてやり過ぎてもだめ、でもやれば必ず効果があるデッドニング作業は、いざ自分で行おうとしてもどの部材をどう使えばよいかが分かりにくかったり、そもそも近所でそんな多種多彩の材料が手に入らなかったり、といった問題がある。そんな、良くありがち、かつ解決が難しい問題をクリアできそうなエーモン工業の「音楽計画」シリーズは、お手軽かつ効果的なデッドニング作業に最適なキットと言えるだろう。
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膨大な時間と、今思えば後悔するほどの(笑)コストをつぎ込んで大改造していたころの写真。納車から、数カ月はドライブすることもままならず、おまけに重すぎて様々な副作用も発生するなどいろんな意味で勉強にはなった | 一見プロ業者にしか実現できなさそうに感じるデッドニング作業。はてさて、DIYチャレンジは成功できるのだろうか? |