【連載】NAOさんのDIYでクルマいじり
第8回:どうせやるなら徹底的に!

 

フロントドアに続いてリアドアもデッドニング施工したデュエット。ドアの制振防音は満足できたが、今度はリアハッチからのノイズが気になってしまい……

これだけ効果が体感できると、やはり1台まるごとやりたくなるぞ
 フロントドアのデッドニング、リアドアのデッドニングと進んだ時点で勘のよい読者さんはお気づきのことと思うが、今度はリアハッチからの侵入ノイズが猛烈に気になり出した。まあ予想どおりの展開ではあるが(笑)、効果が体感できるデッドニング施工だからこそ、次々と不満=すなわち改善したいポイントが見えてくる。

 お手軽デッドニング開始から活用しているエーモン工業の「音楽計画」だが、スピーカーの搭載されているドア部分での活用のみならず、鉄板の振動を抑えて余計なノイズを吸収するという目的であればクルマ全体に活用できてしまうのだ。筆者はクーペからセダンに乗り換え、その後セダンからミニバンに乗り換えるというジャパニーズおっさんの王道とも言えるクルマ歴なのだが、かなり静かな某セダンから走り重視?の某大きなミニバンに乗り換えたときの車内騒音たるや、今思い出してもゾッとするほどの衝撃だった。

 納車直後は当然の儀式としてフル分解して電装品などの取り付け作業に掛かるわけだが、いざ完成して初ドライブに出かけたところ私も妻も「……スライドドアが開いているんじゃないの!?」と思うほどの強烈なロードノイズと、試乗車とは異なり4WDだという理由で何故かカッチリ固められていた足まわりの乗り心地のヒドさに、新車の感動は一瞬にして吹き飛んでしまったのだ。

 これにはまあさまざまな原因と経緯がありここでは紹介しきれないのだが、クルマの快適性と静かさは切っても切り離せないものだと改めて痛感したものだ。ちなみに現在の愛車は特に何もしなくても最初から静かで快適なので非常に助かっている。冒頭から脱線したが、中途半端に、いやもとい、ドア4枚だけをデッドニング施工してバランスがまたまたおかしくなってしまったデュエットをより快適にするべく、今回はリアハッチ部分も施工してみることにしよう。

普段自分で運転する機会がほとんどないため今ごろ気がついたのだが、デュエットのリアハッチ部分は驚いたことに鉄板むき出しの商用車状態。ノックすると当然ゴォンゴォンという音がまさかと思いボンネットを開けてみると、こちらはきちんと断熱防音シートとがたつき防止のスポンジなどが施工されていた。限られたコストの中で取捨選択した結果だろうかふと目線を下に落とすと、トヨタのデュエットではあるが車台番号プレートにはDAIHATSU MOTOR CO.,LTD. JAPANの文字が。OEMの場合でもクルマはしっかり製造元が表記されるのだと妙に感心
リアハッチ内側部分は、特に隠しネジも化粧もされていないので簡単に分解できる。が、重力に逆らっている状態の部品を取り外す際には落下事故に十分気をつけようネジを外す順番次第ではドリフの金タライ状態で頭にパネルが落ちてくるのではと心配したが、対角線の2個所のネジが落下防止クリップ仕様になっていて事故を防いでいる。流石ネジをすべて取り外したら、内装外し工具でゆっくりとクリップを引き起こしつつ金属製パネルを取り外す。見た目以上の重量があるため、できれば2人で作業したいところだ

「ナチュラルサウンドキット」を流用しまくる
 リアハッチを分解し始めてまず驚いたのは、こんなに大きなパネルなのに制振材も吸音材も一切施工されていなかったことだ。その昔筆者が初めて自分名義で買ったクーペはバブル真っ直中の設計だったためか、エントリークラスのFF 1.6リッターにもかかわらず(当時としては)ガッチリしたボディー剛性と比較的豪華な装備が取り付けられていた。もちろんデッドニング作業も行ったが、ドアパネルはもちろん要所要所にしっかりと制振防音材が入っており、さすがはトヨタと感心したものだ。その後厳しいコストダウンが必要なご時世となり開発者もさぞ原価率低減に苦労しているのだろうと察するが、いくらOEMお買い物クルマとは言えここまで「素の」状態だとは、驚きを禁じ得ない。まあ、10年前のクルマなので、現在販売されている同クラスの車両には最新技術で安く実装できるようになった制振防音材がきっと施工されていることだろう(と、期待しつつ、買い換えの際には絶対確認しようと心に誓う)。

 落下事故などに気をつけつつリアハッチの大きな金属パネルを取り外すのだが、取り外して手に持った瞬間から「ボワ~ンボワ~ン」という音が鳴りまくる。思わず「お~ま~え~は~あ~ほ~か~」とパネルを叩きたくなる衝動を抑えつつ、各部に制振材と吸音材を貼り付けていく。リアハッチ内部は衝突安全対策のためか空洞(潰れしろ)が多く、せっかくなので吸音材をどんどん詰め込んだ。基本的には水が入る恐れのない場所なので、ニードルフェルトなどを詰め込んでもよいだろう。ハッチ自体も小さいため、詰めた部材の重さにガスダンパーが負けて下がってくることもなさそうだ。

取り外した金属パネルには、予想どおり?制振防音等の配慮は一切なし。内部結露防止のためなのか3個所用意されている通風スリットが、見事なまでの騒音を車内に届けてくれるリアハッチ内部はご覧のとおり完全ながらんどう状態。リモコンドアロック用のアクチュエーターが、唯一メカっぽさを醸し出している。いっそのこと小物入れスペースにしてもよいぐらいだ追突時の衝撃をうまく逃がしつつ剛性を確保するためと思われる複雑なプレスライン。接合部の一部は溶接ではなくパテ状のもので固められていた。例によって制振材などはゼロ
金属パネルの裏側に、ポイント制振材を5個所施工したところ、「ボワンボワン」と共振しまくっていたパネルが、「ボン。ボン」という状態にまで改善できたリアハッチ内側にも、ポイント制振材を施工する。顔を見上げた状態での作業になるため、裸眼の方は保護メガネなどを着用したほうがよいだろう。開口部でのケガにも気をつけたい制振材を施工した上から、インナーパネル用制振・吸音材を適量貼り付ける。アウターパネル用制振・吸音材のほうがよいのだが、今回は部材の都合でこのようにした
反対側も同様に施工する。クルマが静かになってくると、配線ケーブルのカタカタ音なども気になる場合があるので丁寧に処理しておこうせっかくなので、手が入る部分すべてに吸音材を取り付けていく。さほど大きいリアハッチではないので、重さで下がってくることもないだろう

フロントドア+リアドア+リアハッチ、まずはこの3個所への施工がお勧め!
 音楽計画を活用したお手軽デッドニング作業だが、これまで書き進めてきたとおりフロントドアに施工したところリアドアのノイズが気になり、リアドアにも施工したところリアハッチからの騒音が気になった。正直、リアハッチに施工してもまたバランスが崩れて他の個所をやらないとダメだろうと思いつつデッドニング後のご近所1周テスト走行にスタート。

 おおぉ……リアからの進入ノイズが格段に少なくなっているぞ!……(しばらく走行)……うん、結構快適だ。おや?いつもならここで「次はここのノイズが気になるぞ」となるはずなのだが、今回は納得できるバランスに仕上がっている。車種にもよるだろうが、今回実験台にした10年落ちデュエットの場合は、フロントドア、リアドア、リアハッチの3個所に施工することで、明らかに体感でき、かつバランスの崩れをあまり感じない仕上がりに完成させることができた。

 「低音しっかり」「ボーカルはっきり」「ナチュラルサウンド」などキットごとの特徴をふまえて1キットだけで完成させるのももちろんアリ(というかそれが普通の使い方)だが、ポイント制振材、インナーパネル用、アウターパネル用などさまざまな部材が入っているキットを自分なりに解釈分解して、ドア以外にも施工してみることをお勧めしたい。

 ドア内装は分解する度にクリップが割れてしまうことも多く「バラしは1度で済ませたい!」と思う方がほとんどだろうが、今回筆者はキットごとに分解組み立てを繰り返したことで「この吸音材は、このぐらいの効果なのか~」と自分の五感で楽しむことができた。「そうは言っても時間もないし、ちょっとな~」と思っているそこのクルマ好きのアナタ! 無理に休暇を取ってでもやってみる価値はありますよ~。

 デュエットでこの効果なら、もともと静かなヴェルファイアにも……次回に続く(笑)。

これが落下防止のためと思われるクリップ。何の変哲もないプラスチック製のくさび形クリップだが、これがあるおかげでパネル脱着がとても楽になっている音楽計画シリーズには、デッドニングの効果を分かりやすくチェックできる音楽CDが付属している。施工前に1度聞いておくと、効果が分かりやすいぞお下がりで取り付けたカーナビは、液晶画面が格納できるダブルフェイスモデル。シフトレバーがPの位置にあると液晶がぶつかって開かないのはナイショだ。ついでに写真がボケているのもナイショだ
お下がりのカーナビは、5年20万kmお世話になったミニバンで愛用していたもの。カーナビやカーテレビを車外品にしておくと、車を乗り換えても末永く活用できるので便利だ「ドアの防音性能が向上し~」と言うことは、ドア以外の防音性能向上にも流用できるということ。かしこくキットを活用すると、クルマいじりの幅が広がるぞ

※クルマいじりは自己責任で。無理な改造は事故や故障、怪我の原因となる場合があります。もちろん、違法改造はやめましょう。



2012年 5月 9日