【連載】NAOさんのDIYでクルマいじり 第12回:ワッシャーだけで乗り心地が改善できるとは! |
今回は「わなわな感」を元から絶つべく、特殊制振合金ワッシャーをサスペンションマウントに投入。微妙な振動を解決していくのだ |
■静かだからこそ気になる微妙な振動を解決したい!
やってもやってもやってもやってもきりがないNVH対策。(Noise=騒音、Vibration=振動、Harshness=乗り心地)何事もバランスが重要なのはNVH対策に限ったことではないが、比較的静かなクルマだからこそ気になる微妙なノイズや振動、この対策は本当に厄介だ。
音として耳には聞こえないが、体には感じる超低域ノイズを確実に低減してくれる特殊制振合金ワッシャー。いよいよ本丸のフロントサスペンションマウントに取り付ける |
極端な話、昔乗った防衛庁仕様のジープ(のようなクルマ)は防音材の「ぼ」の字もない状態で、高速道路で70km/h出せば隣と会話するのも難しいほどだった。だが、「これはこういうものだ」と頭が理解できているので、ウルサイのだが「音が気になって不快だ」という感覚にはならないのが不思議だった。ところが、100km/hで走行していても3列目と余裕で会話が成立する現在の快適ミニバンなのに、ちょっとした振動、ちょっとしたカタカタ音があると、気になって気になって仕方がないのは筆者だけではないだろう。「静かで快適なはず」であり、事実クルマが静かで快適になっているからこそ、より高い次元の快適性が欲しくなり、レベルとしては些細なノイズでも気になってしまうのだ。
前回、座席シートを徹底対策(といっても特殊制振合金ワッシャーを取り付けただけ)することで特定路面で感じていた「お尻のわなわな感」は解消できたのだが、座席シートだけがピタッと収まってしまったため逆にフロアから伝わってくる「わなわな感」が強調されてしまったのだ。やはりここは、「わなわな感」を元から絶つべくフロントサスペンションマウントにも特殊制振合金ワッシャーを施工するしかないだろう。体感するのは無理かも……と思っていた座席シートでも一定の効果があったのだから、これは期待が高まるぞ!
■セダンよ、あなたは楽だった♪
右も左もミニバンミニバン、あっちもこっちもミニバン花盛り。ショッピングモールに行けば向こう三軒両隣が全てミニバンという景色も珍しくない。昔のワゴン車とは異なり日本で独自の進化を遂げたミニバンは広くて快適、静かで燃費もよくなり、筆者ももうクーペには戻れないなぁ……とオッサンっぷりを遺憾なく発揮している今日この頃だ。今回の作業をしてつくづく思ったのは、ミニバン花盛りで整備士さんたちは仕事が増えて大変なのではないかという余計な心配だ。
せっかく「ワッシャーをボルトに挟み込むだけで」効果が体感できるのに、シートにしろサスペンションにしろ、とにかく「ボルト」にたどり着くまでの道のりがセダンに比べて明らかに遠いのだ(笑)。
だが、ここで労を惜しんでしまっては、より快適なクルマ生活は手に入らない。順序よく、サクサクと作業を進めていこう。
■分解することで構造が分かり、より愛着も
普段クルマいじりをされない方には、これらの作業はとてつもなく面倒に見えるかもしれない。だが、やってみると意外に簡単で、使う工具もソケットレンチと内装外し程度だ。現車のワイパー部分は筆者も初めて分解したのだが、雨が流れる場所だけあって、砂埃や花粉のようなものが結構こびりついていた。普段見えない場所まで徹底的に掃除できるのも、分解作業の楽しみの1つだろう。
続いてワイパーモーターやブレーキフルードのリザーバタンクなども取り外すのだが、これらは安全上極めて重要な部品なので特に注意して作業したい。ワイパーモーターは結構な重量があるためしっかり持たないと事故の元、タンクは傾けるとオーバーフロー穴からフルードが漏れ出すので要注意だ。
■効果を体感!特定舗装路での「わなわな感」が軽減したぞー!
いよいよサスペンションのスタッドボルトに特殊制振合金ワッシャーを取り付ける。今回の場合スタッドボルトの突き出し量はさほど余っていなかった。いなかったのだが、座席シートで味を占めた筆者が、標準仕様の1枚装着が我慢できるはずもなく……いろいろ考えたのだが、本来必要のない強力ネジ止め剤の使用と緩み点検、近いうちに長めのスタッドボルトに交換する前提でギリギリの突き出し量となるワッシャー2枚装着を試してみた(あくまで自己責任の実験であり、推奨するものではないのでご注意を)。
ちなみにトヨタ車で使われているネジはM14×P1.25、すなわちネジピッチが1.25mm仕様になっており、ホームセンターなどで手に入る1.5mmピッチのネジやボルトを代用することができない。無理矢理1.5mmピッチを取り付けるのは厳禁なので、スタッドボルトやナットが必要な場合は、馴染みのディーラーに相談するとよいだろう。
さて、塑性域角度法を何だと思っているのかと言われそうだが、無事にサスペンションマウントに特殊制振合金ワッシャーを取り付けることができた。早速試運転してみると、駐車場から表通りに出て、国道の流れに乗った時点で明らかな差を体感。そう、シートから消えた代わりにフロアから感じていた、あの「わなわな感」が明らかに軽減しているのだ。
低周波を測定器で調べた訳ではないので「なくなった」と断言するのは控えるが、筆者の体感的にはすこぶる満足、シートだけでなくクルマ全体が落ち着いた、という印象だ。ほかのレビューで見たマンホールを踏んだときの突き上げ低減や段差を超えたときのショックがどうこう、というのは正直体感できないが、アスファルトの材質割合や表面形状に由来する「気持ちわるい周波数」みたいなものが相当軽減されるのは間違いない。少なくとも筆者の愛車では、このような効果を体感することができた。
ボディーのスポット溶接を増やして剛性を上げるとか、高級なショックアブソーバーに交換するといった抜本的な対策には何十万円というコストが掛かるが、わずか数千円の投資で効果が体感でき、かつ科学的にも理論が証明できる特殊制振合金ワッシャーは、筆者のクルマいじり必須アイテムに加えたい。気に入ったぞ!
※そもそも「お尻のわなわな感」とは何だ?と言われそうだが、筆者が愛車でいつも走行する某国道の一部分で、不快かつ微妙な振動が伝わってくる舗装があり、それを指している。
※クルマいじりは自己責任で。無理な改造は事故や故障、怪我の原因となる場合があります。もちろん、違法改造はやめましょう。