ラグナセカ・ヒストリックカー・レース
ラグナセカでは金曜日から3日間をかけてヒストリックカーのレースが行われます。ペブルビーチで美しい佇まいを見せる静かなクルマを眺めるのも楽しいけれど、クルマは走っている姿がやはり美しいとつくづく思えるイベントです。
1915年式のT型フォードやら戦前のアルファロメオ、ブガッティにスチュードドベーカー、1950年代のシボレー・コルベットやポルシェ356など参加台数は実に400台以上。ほとんどの参加者が駆るモデルが、我々が計り知れないほど高価であってもかなりのガチンコレースをしています。だからドキドキ&ワクワクする。
パドックではそんなマシンを整備&展示し、こちらでもペブルビーチの凛とした美しさとは異なる、生き生きとした雄勁さが観る者を興奮させます。このレースイベントでは懐かしいと思えるモデルを実際に見たり再会できることのほか、私の知らないかつてのアメリカのレースシーンを想像できそうなクラスも興味深い。
今回はそんな様子を沢山の写真でお伝えできればと思います。
■パドック
多くのモデルはこのようなヒストリックカー・レースにしばしば参加されているようで、走行準備は手慣れている様子であり、またパドック見物をするお客さんたちに“どれだけ貴重なモデルなのか”を紹介することも忘れない。コースで走る姿を観るのも、パドックをぶらぶらと歩くのも楽しい、一日が何とも忙しいラグナセカです。
今回、最も台数が多かったのはやはりコブラ系。レースとは別に走行枠が与えられていて、数十台が同時に走行するシーンも貴重でしたが、パドックにそれらが並ぶ姿も壮観。
最も目を丸くしたのは日本のレースシーンで活躍していたはずのモデルを数台発見したことです。例えば1988年のレイトンハウス・ポルシェやピンクのボンネットに伊太利屋と入ったポルシェ(1976年)は日本から海を渡って、ここにいるのですよね?
アメリカのトーク番組でもお馴染みでありカー・ガイとしても有名なジェイ・レノ氏との遭遇も、ペブルビーチやここラグナセカでは珍しくありません。が、ハリウッド俳優をここで見かけるよりも、出会えて嬉しい人物なのは間違いありません(普通は逆かもしれないけれど)。
■走行シーン
数あるシーン&マシンのなかでも、印象的かつ象徴的で、雰囲気が伝わりそうな写真を選ばせていただきました。参加車は年代やモデルタイプ別に20近くのクラスに分けられています。例えば「Pre-1940 Sports Racing and Touring Cars」は9台がエントリーしていました。
その中でも濃いブルーのカーナンバー17は「National 40」というモデルで、1911年式。今回のエントリーの中で最も古いモデルと思われます。
このレースを眺めているだけでも、時代とともにマシンのスピードが上がっていく様子が分かります。ただし前述のクラスのマシンたちは、速さよりもしっかりと走る姿に驚きと感動を覚えました。パーツの維持やメンテには時間とお金もかかるだろうという想像は容易にでき、さまざまな観点からも動体保存の素晴らしさを実感できるイベントです。
走行シーンを含むこれらの写真についてはカメラマンの荒川正幸氏が撮影したものをすべて使わせていただいております。
■Shelby Cobra Heritage Display
今年はそもそもコブラがフィーチャーされる年でありましたが、キャロル・シェルビーが5月に他界したことで、メモリアルイベントへとスタイルを変えたようでした。サーキットのパドックに大きなテントが設置され、彼のこれまでの功績をたたえる数々の代表車が展示されており、多くの人が訪れていました。
■番外編
日本でレース観戦をする際にも、ショップめぐりは楽しいものです。レーシングギアのお店やシートベルトを使ったバッグを売るお店、モントレーのワインを試飲できるコーナーなどが印象的でした。
ヒストリックレースならではのショップが目立ったのも特徴的で、関連本やウエア、パーツ類、アンティークのミニチュアカーなども販売されていました。それから「California Dreamin'」というコーナーがなぜか出現。サーキットでビーチ気分が楽しめるという発想が、またアメリカンかはたまたカリフォルニアンか?
最後に……クルマの価値は人それぞれ。楽しみ方も色々です。年に1度、西海岸のモントレーの町がヒストリックカーたちに湧く夏の数日。私は別クルマ世界をのぞき見しては、幸せな気分になり、また来ようと思うのです。こんな数日は他にはありません。
■飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/
(飯田裕子 )
2012年 9月 28日