「デミオ スカイアクティブ」エコラン参戦記

 先日、マツダの次世代エンジン「スカイアクティブG」を搭載したデミオの試乗会に、副編集長の田中氏と私がCar Watchチームとして参加してきました。それも仙台から東京までの415kmを走るエコランです。1.3リッターのガソリンエンジンでカタログ上では10.15モードで30km/Lの燃費を達成しているのですが、果たして本当の実力やいかに……。

 このエンジンの特徴は、14.0という高い圧縮比。圧縮比が高いと「高出力で低燃費」というステキなエンジンになり得るのですが、今度はノッキングという異常燃焼が発生しやすく、現実にはエンジンの性能を落とすことになってしまうから難しい。これを様々な技術で克服し、さらにエンジン内部で発生するメカニカルロスも減らしています。圧縮比14.0という数値はいわばスカイアクティブGの黄金比と言ってもいいでしょう。

 燃費向上に向けてマツダはさらに、このデミオに他車にも採用するi-stop(アイドリングストップ)や、燃費向上に不利な空気抵抗を減らすパーツを装着し、30km/Lという燃費を実現しています。

 また、「燃費のよい運転はスムーズなドライビングから」ということで、「i-DM」(インテリジェント・ドライブ・マスター)なるドライビングサポートシステムも組み込まれていました。これは走行状況に応じ、加減速時や旋回時のGがいかに少なくスムーズかを5点満点で評価されるもの。スキル向上に合わせて3ステージにステップアップでき、さらに裏ステージも2つ用意されているのだとか。エコランもいいけど、走る楽しさも一緒に習得してほしいというマツダの意図がここにあります。

13-スカイアクティブに標準装備される「i-DM」。緑のマークが点灯しているとエコな運転、これが青くなるとエコかつスムーズな運転ということになって、スコアが高くなる。逆にギクシャクした運転をすると白いマークが表示される
運転を終えるとi-DMが5点満点で評価し、アドバイスをしてくれる

 

東北道を走るデミオ 13-スカイアクティブ。ルーフスポイラーのほか、底面やホイールハウスの空気の流れにも配慮されている

 なんていうプレゼンを受けた後に東京に向かった田中副編集長と私。同じ日には我々を含む9メディアが参加しており、悪い燃費でゴールするわけにはいきません。

 コースは仙台の秋保温泉にあるホテルから東京の向島まで415km。その間、福島西ICから約90kmほど一般道を走り、再び高速にのって都内を目指します。時間制限もあるから、ゆっくり燃費走行しているわけにいかず、一般道走行中には二本松城や高柴デコ屋敷、福島空港など経由地も決められており、ズルして燃費に有利な高速道路ばかりを選んで走るわけにもいかないのでした。

田中「燃費にとことんこだわるならエアコンは切らないと……窓を開けて走りますか?」
飯田「いやいや、高速道路ではかえって空気抵抗が増やすだけです」
田中「エアコンを切って窓を閉めて走る?」
2人「それで400kmはツライよね~」

 ということで、我々は基本的にはエアコンを使用し、一般道では気持ちよい夏のドライブを満喫すべく窓を開けての走行も採用。つまり、快適かつ楽しい東北ドライブをしながらエコランをしたのでした。

 エコランですから、ムダな加速もラフなアクセル操作もしないように一定走行を心掛けます。前方の信号が赤もしくは黄色であれば早めにアクセルをOFF。上り坂を発見すると、速度が落ちる前に早めに多めにアクセルを踏み込み、1㏄のガソリンもムダに使わないような走行を心がけました。つまりいわゆるエコランの基本を守って忠実に走ったわけです。メーターパネルの右わきにはインフォメーションディスプレイがあり、瞬間燃費や平均燃費を表示する画面を選択して、燃費の変化を探りながら走行を続けました。

下り坂ではムダな加速はしない。前方の左車線にパトカーが停車しているのを発見! ムダな加減速をしないようにタイミングのよきところで車線変更することなどを考えながら走行していたCar Watchチームは一般道では窓を開けて郊外の空気を楽しみ、高速道路では窓を閉めてエアコンをかけて快適に過ごした
「高柴デコ屋敷」に隣接する「おいち茶屋」でランチと記念撮影。高柴デコ屋敷は三春駒や三春人形、だるまなどの郷土玩具を作る集落。玩具の製作工程や、全国のだるまのコレクションを見学できる

 

「さぁ、ココからもうひと踏ん張り、いやエコランするわよぉ~」と気合十分の私

 運転は私がもっぱら担当し、田中副編はデータ記録と高低差などを確認。東北道は東京に向かって下り坂が多いのですが、法定速度で走行すると下りでもアクセルを踏むことになりました。

 平均燃費が思うように上がらない状況に私は「本当に下っているのかなぁ~~」などとブツブツ……。すると田中副編は「いやいや、先ほどから○mは下っているはずです」などと私を納得させ、「疲れたから代わりますから、いつでも言ってください」と励ます道中。と言っても平均燃費は25km/Lを超えているわけで、これでも十分なのではないかと今になってみれば思えるのですが、想像以上にエコランに夢中になりゲーム感覚で楽しんでいる私としては、少しでも燃費をよくしようと燃えるわけです。

 佐野藤岡IC付近、走行距離が333kmのところで燃費計のメモリが1目盛り減りました。それまでは一向に動きを見せなかったその表示に、驚きと「動いているのか?」という疑心暗鬼になったほどです。震災後、仙台にボランティアに行ったことのある私としては、これで何往復できるのだろうと考えたほどでした。

 東北道を抜け、首都高に入ると鹿浜あたりで渋滞にもはまりました。タイムリミットの30分前のことです。間に合うのか、Car Watchチーム?

 15分前には向島ICを降り、楽勝! と思ったのもつかの間、痛恨のミスコース。果たしてタイムリミット6分前に目的地のガソリンスタンド(給油&燃費計測地点)に到着したのでした。ふぅ~。そして気になる平均燃費を燃費計で確認すると25.6km/L。「頑張ったよね~、悪くない」と、エコランで何とも新鮮な達成感を味わうことができました。

 「スカイアクティブG」エンジンを搭載したデミオの燃費のよさは、十分に納得できる結果です。静粛性も高く、マツダらしい安定感と剛性感の感じられるハンドリングは変わりません。さらに速度コントロール性(一定走行の持続性)も高く、燃費走行がしやすい。特に今回はエコランを意識して走ったため、右足はかなりのコントロールを強いられたはずです。その状態で長距離を走るとなると腰や背中まで疲労感があっても不思議ではないのですが、問題ナシ。図らずもシートの良さを実感できたのでした。静粛性も高く、マツダらしい安定感と剛性感の感じられるハンドリングは変わりません。

 そんなこんなの415km。数回のミスコースがあったものの、ぐふふっ……。私たちは3位でゴール! めでたし、めでたし、のエコランでした。

タイムリミット15分前、ついにゴール近くの向島ICに向島ICでの燃費計は平均25.7km/Lを表示。これが道中最高の値。が、ゴールでは25.6km/Lに9チーム中3位に入賞!

飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/

(飯田裕子 )
2011年 8月 9日