タグ・ホイヤー アカデミー
ドライビングスクールはショートコースでのブレーキ体験やレーシングコース(本コース)を使ったアウディのSモデルやRSモデルなどの体験走行が行われる。最高速度は何と200km/h! |
タグ・ホイヤーと言えば言わずと知れた高級時計ブランドです。ではなぜ私が今回タグ・ホイヤーを取り上げるのかと言うと……。2010年、創業150周年を迎えたタグ・ホイヤーが、同じく2010年にル・マン24時間レースで優勝したアウディとオフィシャルパートナーシップを結び、ドライビングレッスンが体験できる「タグ・ホイヤー アカデミー」を日本で設立しました。アウディと言えば、「アウディ・ドライビング・エクスペリエンス」があり、私もそのチームでインストラクターをしているため、今回のドライビングレッスンに携わらせていただいているのです。
会場は富士スピードウェイ。レース観戦などで富士スピードウェイを訪れた方の中には、もしかしたら「TAG HEUER」の看板を見かけた方もいらっしゃるかもしれません。その中でもチャンスがあったら是非見ていただきたいのがショートコースに隣接した「タグ・ホイヤー ルーム」(ブリーフィングルーム)。全面の壁に特大の時計のポスターが貼られ、この部屋に備え付けられた時計にもタグ・ホイヤーのマークが……! 1歩足を踏み入れただけで、タグ・ホイヤー・ワールドが広がっています。富士スピードウェイを知る私にとってはちょっと不思議な空間であり、プレミアムな気分が味わえる特別な場所に感じられます。
ではタグ・ホイヤーと自動車メーカーであるアウディが、なぜ今回のようなイベントを開催しているのかと言えば、そこには私の“存じ上げない”タグ・ホイヤーの歴史が関係していたのです。
座学の時間には改めてタグ・ホイヤーの歴史や商品の技術説明などが行われていた。クルマやモータースポーツとの関わりもカッコよく、私には衝撃的かつ魅力的な説明もされていた |
私の周囲のクルマ好きには時計好きも多いのですが、なんとホイヤー家の人々も無類のクルマ好きだったのだとか。1860年に創業を開始したタグ・ホイヤーはクルマの誕生と同時期に精度の高い機械時計の開発に着手し、後に世界初のダッシュボード クロノグラフ「Time of Trip」(1911年)や「Autavia」(1933年)、「Rally-Master」(1956年)を開発。加えていわゆるストップウォッチの「Mikrograph」(1916年)や小型電子スポーツタイマーの「Mikrotimer」(1966年)といった1/100秒と1/1000秒の精度を計測できるクロノグラフを世界で初めて開発したものタグ・ホイヤーだったのだそうです。つまりモータースポーツの世界と密接な関係にあったわけで、そこにはクルマ好きのホイヤー家のこだわりがあったのかもしれません。
おかげでレースやサーキットにちなんだモデル名や、そこで活躍した英雄たちの腕にもタグ・ホイヤーが着用されていたことなど、エピソードは盛りだくさん。例えば「Carrera」(カレラ)は、古いレースがお好きな方たちの間ではあまりにも有名なレース、「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」にちなんでネーミングされ、1964年に登場したようですが、今でも現代版のカレラがあり、人気があるそうです。
またスティーブ・マックイーンが映画「栄光のル・マン」で着用していたのは1969年に発表された「Monaco」(モナコ)であり、そのMonacoは現在もクラシカルなデザインもそのままに、最新モデルが販売されています。
無事に走行を終え、R8と記念撮影。インストラクターとしては、皆さんもクルマたちも無事に戻ってきて「よかった」と思う瞬間でもある |
ほかにも「Silverstone」(シルバーストーン)や「Monza」(モンツァ)と聞けば、私などは時計よりもF1のコースを思い出してしまいますが、このようなネーミングのモデルが他にもあるらしいのです。
F1と言えば、1992~2003年の間、タグ・ホイヤーがレースのオフィシャル・タイムキーピングをしていたことに加え、「タグ・ホイヤーのアンバサダー」と呼ばれるF1ドライバーたちが多くおり、アイルトン・セナやアラン・プロストはもちろん、現在ではルイス・ハミルトンも着用しているようです。特にフェラーリやマクラーレンとのパートナーシップは強力だったようですね。オフィシャル・タイムキーピングについては近年もインディのほか、様々なモータースポーツ・シーンで活躍しているようです。
そんなタグ・ホイヤーは昨年の2010年、アウディ・スポーツとル・マン24時間レースで提携をしていました。150周年を迎えた昨年、応援したチームが優勝できたことは、タグ・ホイヤーにとっても喜ばしい事だったに違いありません。そして、そんな繋がりもあって今年は「タグ・ホイヤー・アカデミー」のスクールに携わられていただいているわけです。
サーキットにはタグ・ホイヤーのビルボード。クルマにはステッカー。我々のユニフォームと腕にもタグ・ホイヤーが装着されている |
タグ・ホイヤーの歴史とモータースポーツの関わりについては、ここで説明し切れるものではなく、ぜひオフィシャルWebサイトを読んでみることをおすすめします。
クルマ好きには時計好きが多い……。それは確かなことですが、残念ながら身に着けるのは好きでも、知識もなく詳しくもなかったワタシ。しかし製品やメーカーの誕生にまつわるお話しなどを知るにつれ、タグ・ホイヤーという時計ブランドがこれまで以上に好きになりました。揺るがず、ブレないブランドへの信頼性と憧れ。それは時計でもクルマでも同じだなと思いました。
タグ・ホイヤーアカデミーは残念ながら、販売店の方たちを中心としたイベントであるため、一般の方の参加は極めて少ないとうかがっております。が、“クルマ好きが時計好き”なら、“時計を販売する時計好きのクルマ好き”をますます増やそうと企みつつ(ぐふふ……)、残りの数回のスクールでインストラクションしようと思っています。それから…。引き出しの隅で電池切れのために眠っている、私のタグ・ホイヤーを目覚めさせようと考えております。
■飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/
(飯田裕子 )
2011年 9月 29日