【第10回】極上の一杯を求めて玉露の里へ、の巻


淹れたての玉露は今まで飲んだことない衝撃的なお味

「今回はお茶の産地、静岡県岡部町にある『玉露の里』というところに行きますよ」
「へー。で、何が食べられるんですの?」
「何がって……おいしいお茶が飲めるんですっ!そもそもゆきぴゅーさん、“玉露”ってどういうお茶か知ってますか?」
「知ってますわよ。玉露といったら……」
「……玉露と言ったら?」
「高級なお茶ですわ」
「そ、それはそうなんですけど。もしかして予備知識それだけですか……じゃ私が少し説明しておきましょう。玉露っていうのはですね、新芽が出始めの頃に茶畑をワラやシートで覆って日光を20日間ほど遮断して育てたお茶のことを言うんです。そうすることによって渋みのもとになっているカテキンが軽減されて、代わりにまろやかな甘みが加わるんだそうですよ。茶葉自体は煎茶と同じなんですが、手間暇かけて栽培されることなどから日本茶の中でも最高級品とされているんです」
「じゃ今日はその最高級のお茶が飲めるんですのね。お茶請け、何かなぁ~」

とっても眺めのいい富士川SA。これから取材という時に「富士宮焼きそばが食べたい!」と言うゆきぴゅーにエイミーが即、却下玉露の里は焼津インターから約20分。朝比奈川を上流に向かって車を走らせると、右手に食事処「茶の華亭」、川を挟んで「瓢月亭」が見えてきますここ静岡県の岡部町は福岡県の八女、京都府の宇治と並ぶ玉露の三大産地

 焼津インターを降りて北へ約20分。「玉露の里」は茶畑が点在するのどかな山あいにあります。まずは純和風庭園の中に建つ瓢月亭(ひょうげつてい)へ。ここでは入場料の500円を払うと、お菓子付きの玉露かお抹茶をいただけますの。道具が置かれたお茶室に案内されて正座した途端に緊張してきたゆきぴゅー。実は今からスタッフの方がお手前をしてくださるそうですの。

「エ、エイミー……わたくし茶道なんて習ったことないので、どどどうしたらいいのかまったくわかりませんの……」
「大丈夫ですよ。ここは“正式な作法を知らない方でも気軽にお茶席を体験してくださいね”というところですから。淹れていただいたら感謝の気持ちをもって普通に飲めばいいんです」
「そうなんですの? ほら、よく右に何回、左に何回か回して2拍手とかってやるですわよね、あーゆーの、まったくわかりませんわ」
「2拍手って何ですか?とにかく大丈夫ですから貴重なお手前拝見しましょう」

 着物姿のスタッフの方が茶道具の前に座りました。お茶の葉を容器にいれるしぐさ、お湯を注ぐしぐさ、茶器についたお湯をぬぐうしぐさ、どれをとっても美しくて、指の先まで神経を集中させているのがわかりましたわ。それでいて動きはしなやかで優美。「真心をこめて客人にお茶をもてなす」という日本のすばらしい伝統作法を目の前に、まるで心が洗われる気がしましたの。

純和風庭園の中にある瓢月亭。鯉が泳ぐ池があったりと散策にはもってこいいつになく緊張気味のゆきぴゅーこの日はお手前を拝見することが出来ました。3名以上の場合に限りますが、普段でも希望があれば見せていただけるそうです
美しい所作に惚れ惚れしてしまいますの玉露かお抹茶のどちらかを選ぶことが出来ます。季節によって変わるお菓子は、同じ岡部町の和菓子屋さんから取り寄せているんだそう玉露の里の隠れた名物、玉露ソフトクリーム。玉露の茶葉を振りかけているのは日本でもここだけなんだとか! 甘さを抑えたさっぱりとした味でゆきぴゅー絶賛ですの

 さて、そんな目の前で淹れて頂いた一煎目。口にふくんだ瞬間にふたりの口から思わず出てきた言葉はというと……

「これ、お茶?!」

 信じられないほどのまろやかな甘みが口の中に広がりますの。知らされないで飲んだら絶対に「お茶」だとはわからない不思議な味。しいていうならば出汁みたいな味とでも言いましょうか……。変な意味でなく本当に。とにかくびっくりの味なんですの。次に出てきた二煎目は、すこし苦味が感じられて普段飲むお茶っぽくなりました。一煎目と二煎目でこれだけ違うものなんですのね~とこれまたびっくり。しばらくして「いかがでしたか?」と、お手前をして下さった方。

「普段飲んでいるお茶と全然違うのにびっくりしました。淹れ方に何か特徴があるんですの?」
「玉露はお湯の温度が決め手で、40~50度の少しぬるめのお湯で淹れるんですよ。浸出時間は2分ほどです」
「そういえば全然熱くなかったですわ」
「二煎目は一煎目よりも少し高い温度で浸出します。ただし茶葉が開いているのでお湯を入れてから10秒くらいで注ぎます」
「それからお茶菓子もとても美味しかったですわ。これは時期によって変わるんですの?」
「ええ、お菓子の見た目でも季節の移り変わりを楽しんでいただけるよう、その季節にあったものをお出ししています」

 池を望むお茶室で、視覚、味覚ともに“日本の美”を満喫したひとときでございました。

川を挟んだ反対側にある「お食事処 茶の華亭」。奥にはお座敷もあります。併設している物産館もお土産たくさんで見ていて楽しい茶の華亭の人気メニュー「茶の華膳(1500円)」。てんぷらには玉露の茶葉を揚げたものがついているんですの目の前の朝比奈川沿いは桜の名所。玉露の里では桜の時期に合わせて4月3日、4日に「春祭り」を開催予定

「本格的にいただく日本茶っていいものですねぇ。どうでした?ゆきぴゅーさん」
「そうですわね~、あれでお茶菓子がもう2、3個食べられたらサイコーですわね」

日本坂トンネル付近の山間に「花沢の里」というタイプスリップしたかのような古い集落があるというのでちょっと寄り道してみました集落の入口にある駐車場に車を停めてぶらぶらと散策していたら、“庭カフェ”なるものを発見! 店名は「Country Oven」。どこから見ても普通の民家ですが……長屋門の入口では手作りのケーキやパンが売られていました。「お金はココに入れてね」の無人販売です
コーヒー好きで昔からカフェを開きたいと思っていたという店主さんは、嫁いだお家の庭で夢を実現しました。カフェ形式にしたのは5年前だそうです築130年以上という古民家の庭を利用した土日祝限定の「庭カフェ」。なまこ壁にもたれかかりながら箱庭の空間を楽しむ贅沢な時間地元・高草山の伏流水でいれているというコーヒー(300円)。玉露に続いてその日2杯めの極上の1杯でした

行ったところ
玉露の里http://www.gyokuronosato.jp/
静岡県藤枝市岡部町新舟1214-3
TEL:054-668-0019
定休日:第4月曜日(休日の場合はその翌日)※今月は23日(火)がお休み。4、5、8月は無休
アクセス:東名自動車道焼津ICより約20分。無料駐車場有り

茶室 瓢月亭
営業時間:10~17時(入館券受付は16時30分まで)
入場料:500円(玉露または抹茶、茶菓子つき)
    800円(玉露+抹茶、茶菓子つき)

茶の華亭
営業時間:平日  11~14時30分
     土日祝 11~15時30分
※予約をすれば夜間の利用も可能

※4月3日(土)、4日(日)は「玉露の里 春祭り」を開催。たけのこ汁の無料サービスや手もみ茶実演・体験、物産市などイベント盛りだくさん。川沿いの桜が見頃の時期、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。3日は16時、4日は15時までです。

Country Oven(カントリーオーブン:庭カフェとパン・ケーキの販売)
静岡県焼津市花沢18
TEL:054-626-3670
営業日:土日祝10~16時(ただし庭カフェは不定休)
花沢の里駐車場(無料)を利用

 


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このクルマでドライブしました!

スバル レガシィ ツーリングワゴン 2.5GT

車格が上がってサイズも大きくなった5代目レガシィ。おかげで高速走行がさらに快適に。だからといって取り回しはさほど悪化していないのがすごいところ。狭い道の多い集落でも難儀することなく、ゆきぴゅー&エイミーコンビは元気に走りまわりました。

プロフィール

ゆきぴゅーゆきぴゅーおふぃしゃるほーむぺえじ
イラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”。長野でフツーのOLをしていたが何の因果か鬼畜デジカメライターの弟子(奴隷)となり2000年に上京。日々の過酷でセクハラな毎日を絵日記で綴っているうちに絵の道に目覚め、ついに2005年独立。以降あちこちでタダでごはんを食べながらポンチ絵画家としてのお気楽な人生を歩んでいる。

エイミー
女性カメラマン。カメラマンとして名を馳せるべくボスニアに戦場カメラマンとして渡るも、行った早々流れ弾に当たってしまいあえなく帰国。この連載のおか げで最近お腹に肉がついてきたとかで、ジムに通い始めたらしい。毎回イラストで自分が描かれているので「近頃、洋服に気を遣うようになってきたんです」と 本人談。その前に赤いバンダナをなんとかしたほうがいいんじゃないですのと思う今日この頃。

2010年 3月 17日