【第25回】週末限定の隠れ家で常陸秋そばをいただくですの、の巻


築130年の古民家でいただく料理人こだわりのお蕎麦

 久々に常磐自動車道を北上中のグルメ隊。今回は9月に発売になったルノーの「カングービボップ」に乗りこんで茨城県は笠間市に向かっていますの。

「今日の車、かわいい車ですわね」
「このカングービボップって、今までのカングーより車体が短くなったショート版なんですよ」

 笠間といえば栃木県の益子と並んで、首都圏からは日帰り圏内のやきもののまち。伝統的工芸品に指定されている笠間焼が有名で、気軽に陶芸体験が楽しめる窯元があちこちにあります。

 その笠間に来た観光客が必ずといっていいほど訪れるのが、日本三大稲荷の1つ笠間稲荷神社。今回おじゃまする「茶寮 蔵人」(さりょう くらびと)は、その笠間稲荷のはす向かい、「笹目宗兵衛商店」という老舗酒造の敷地内にあるお食事処なんですの。現役の造り酒屋の中にあって、営業は土日と祝日のみという、まさに隠れ家的存在のお店なんですの。

今日の車はルノー カングービボップ。見た目も乗り心地もゴキゲンになっちゃう楽しい車ルーフをスライドさせると後ろ座席の頭上がセミオープンに「茶寮 蔵人」は笠間の老舗酒蔵「笹目宗兵衛商店」の敷地内にあります
この純日本家屋、もともと酒蔵の母屋として使われていたんだとか奥の席からはお庭も見えますお店を切り盛りするのは料理家のあだちひろみさん

 裏の駐車場に車を停めて裏門をくぐり、酒蔵の横を通って店内に入ります。築130年以上、かつて母屋として使われていたという建物は重厚で趣のある純和風建築ですの。

「インテリアとして飾られているアンティークの着物や、地元の陶芸作家さんの作品がこの建物にしっくりなじんでますよね」
「ホント。こんなすてきなところでごはんをいただけるなんて幸せですわ~」

 お料理を提供してくださるのは“料理人”のあだちひろみさん。縁あってここ茶寮 蔵人で定期出店をすることになったのが2009年。当初は月1回だけのオープンだったそうですが、あれよあれよという間に土日&祝日の出店になり、今年5月にはついに笠間に移住されたんだそうです。

 メニューは月替りで3種類。その日は野菜和風カレーセット、つけそばセット(冷)、鴨つけそばセット(温)でそれぞれ1300円。1日限定15食ずつなので、春や秋の行楽シーズンには早々に売り切れてしまうこともあるんだとか。

「そば粉は地元農家さんが無農薬栽培で作る“常陸秋そば”というブランド品種です。よく見ると黒いつぶつぶが分かるかと思いますが、これは農家さんにお願いして、玄そばから外皮を含んだ粗びきのそば粉と、通常びきのそば粉をわざわざひきわけてもらってそれをブレンドして打っているからなんです」
「へぇ~、このつぶつぶが外皮なんですのね。栄養がありそうですわね」
「そうなんです。野性味あふれる十割そばをゆっくりと味わってくださいね」

蔵人で出されるお蕎麦は茨城の特産「常陸秋そば」「野菜和風カレーセット」(1300円)と「鴨つけそばセット」(1300円)を注文鴨つけそば。おつゆの中にはショウガがきいた鴨団子が入っています
「蕎麦つゆのとってもいい香りがしますね~」カレーセットについてきたきのこの和風サラダ。シンプルな味付けながら、メインのカレーにぴったり合う一品「器1つにもあだちさんのこだわりが感じられますわ」
カレーの中に入る野菜は、筑波山麓の農家さんが作る無農薬栽培のものがほとんど蕎麦セットに添えられた一品はサツマイモのおから煮。とっても甘くておいしいサツマイモにふたりともびっくりオリジナルスイーツ「アマシュ・デ・栗」(400円)は、笠間特産の栗と甘酒のコラボレーション

 出てきたそばはぴかぴかで、ちょっと色黒。それを熱いお汁につけてズズッとすすると、まずはそばの歯ごたえと香りが感じられ、次にやわらかく煮込んだ鴨団子とネギのかおりが鼻孔を刺激します。その鴨団子はショウガやシイタケのうまみが口いっぱいに広がって、あっという間に胃袋に収まってしまいました。

 和風カレーに入っている野菜は石岡市八郷地区の契約農家さんで採れる無農薬野菜だったり、蕎麦つゆのかえしに使っているお醤油が茨城県土浦市にある醸造元のお醤油だったりと、ご自分がいい!と思ったものを惜しみなく使う徹底したこだわりっぷり。そんなあだちさんが丁寧に丁寧に作ったお料理、リピーターになって季節ごとに通ってしまいそうな気がしたグルメ隊だったのでした。

「そういえばゆきぴゅーさん。この車、後部座席の上がオープンになるんですよ」
「開けて、開けて! じゃわたくし後ろの席に座りますわ」

 エイミーが後ろのルーフを持ち上げて前方にスライドさせると頭上に秋の空が広がりました。

「わぁ、おもしろ~い! 後ろがこんな感じでオープンになる車って初めてですわ。では出発進行~♪」

 そのままじいちゃんばあちゃんがゾロゾロ歩く門前通りを流したカングービボップ。これがまたアツ~イ視線が後部座席に注がれるんですの。信号待ちで止まった時なんか、指さされるわ、手を振られるわ……。

「ね、ねぇエイミー。これってなんか競走馬輸送中って感じじゃない?」
「ハハハ!ゆきぴゅー輸送中、ですね」

店内には笠間在住の陶芸作家、馬目隆広さんの作品が展示されていました笠間稲荷神社では11月23日まで菊まつりを開催中境内では約5千鉢の菊の花が楽しめます
ドライブ中にふと目に留まって立ち寄った「九ちゃんの家」戦時中に川崎から笠間に疎開していた故 坂本九さん。そのおうちをこうして街の方々が大切に保存しているんですの笠間日動美術館では現在、美食家として名高い北大路魯山人の展覧会を開催中(2010年11月28日まで)

 

茶寮 蔵人(さりょう くらびと)
茨城県笠間市笠間1339
笠間稲荷神社正面の笹目宗兵衛商店内
TEL:0296-72-5117
営業時間:土日祝の11時~16時30分(L.O:16時)
平日は予約営業(要問い合わせ)
駐車場:裏にある笹目宗兵衛商店専用駐車場を利用可

 


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このクルマでドライブしました!

ルノー カングービボップ

遊び心たっぷりのワゴン「カングー」をさらに“ハジけ”させたのがこのビボップ。後部のオープントップだけでなく、前にもチルトアップするグラスルーフを装備し、ただでさえ広くて明るい室内が、さらに陽光あふれる空間に。リアシートはたたむこともできるし、取り外しちゃうこともできます。

プロフィール

ゆきぴゅーゆきぴゅーおふぃしゃるほーむぺえじ
イラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”。長野でフツーのOLをしていたが何の因果か鬼畜デジカメライターの弟子(奴隷)となり2000年に上京。日々の過酷でセクハラな毎日を絵日記で綴っているうちに絵の道に目覚め、ついに2005年独立。以降あちこちでタダでごはんを食べながらポンチ絵画家としてのお気楽な人生を歩んでいる。


エイミー
女性カメラマン。カメラマンとして名を馳せるべくボスニアに戦場カメラマンとして渡るも、行った早々流れ弾に当たってしまいあえなく帰国。車にまったく興味がないゆきぴゅーとは正反対に機械モノが大好き。食べるのも大好き。封印したはずの赤いバンダナは、ネット上で復活希望の声があるとかないとか(でももうしません!)



2010年 11月 4日