超格安1DINメディアプレーヤー 「1DIN431」 |
メーカー:不明 購入価格:1万6800円 |
カラフルなパッケージ……だが、メーカー名はおろか商品名も表示されていない。「4.3inch TFT DVD PLAYER」が商品名? |
このところクルマに装着しているオーディオの調子がよろしくない。具体的な症状は「CDの読み込みが悪い」ことで、CD-Rばかりじゃなく市販の音楽CDすら再生できないことが多くなってきた。使い勝手を考えれば2DIN一体型カーナビに置き換えるのが最善だけど、オンダッシュモニタータイプのナビがすでに装着されているし、このご時世にあまりお金を掛けたくないってのもある。
ってことで、1DINのオーディオ専用モデルを新たに購入することにした。購入に当たっての条件は「CDプレーヤーとFM/AMチューナー、それにUSBやSDカードを利用してMP3/WMAの再生ができる」こと。装着するのが静かさとは無縁なクルマなので、音質にはあまりコダわらず、使い勝手と価格を重視する方向で候補を探していたところ、ある通販サイトで見つけたのが今回紹介する「1DIN431」だ。
何より驚いてしまうのがそのスペック。1DINサイズの本体に4.3インチワイドのタッチパネル液晶を搭載。DVD/CDプレーヤー、FM/AMチューナー、50W×4アンプを内蔵するほか、SD/MMCカードスロット&USB端子を備えMP3/WMAだけでなくMP4/DivXの再生までOKと、まさになんでもアリ状態。しかも1万6800円(送料込み)と激安なプライスが付けられている。
DINサイズって縦が50mmしかないのに4.3インチモニター? とか、メーカーというか生産国すら不明? とか、保証が1カ月!? とか、いろいろ突っ込みどころは多かったけれど、その価格やスペックに人柱魂に火が付けられたこともあって、とりあえずポチってみることにした。
商品は注文から2日ほどで到着。どんなモノが出てくるかと箱を開けてみると、カラー写真を使ったカラフルなパッケージが現れた。ちょっと期待を裏切られ(?)つつも、よくよく見てみるとメーカー名はもちろん型式の記載がなかったり、描かれている本体も写真ではなくCGだったりと、それなりに怪しい仕上がり。分かりにくい例えだけど「10年ぐらい前の並行モノPCパーツのパッケージ」みたいな雰囲気だ。
パッケージの中身は本体、フロントパネル、ハーネス、リモコンと若干の付属品、それに英語版と販売元による簡単な取り付けマニュアルが計2部。本体はどこにでもあるオーディオユニットそのものといった印象ながら、樹脂製のケースに収められたフロントパネルはなかなかの仕上がり。黒い部分はプラスチック丸出しでチープ感満点ではあるものの、液晶周囲を飾るヘアライン仕上げのアルミ(?)パネルや、メッキ仕上げのボリュームやボタン類はなかなかによい感じだ。プラスチック部分をマット仕上げにするなどの工夫があればもうちょっとよい印象&価格アップもできそうだけど、それをしていないあたりはこのテのアイテムのお約束といえるのかも。
さらにパッケージの写真では色分けされているリモコンが黒一色にボタンが並ぶ素っ気ないものだったり、末端の処理が行なわれていないハーネスが付属していたりと、いかにも平行モノ的な「痒いところに手が届かない」状態なのも、やっぱりお約束といった感じ。
ほかにも、付属する英語版のマニュアルは20ページを超えるボリュームながらスペックが異なるモデルと共通のためか、あまり役に立つ情報を得ることができないなど、国産アイテムの至れり尽くせり仕様に慣れていると、ちょっと面食らってしまう部分が山盛り。もっとも、カーオーディオの場合は装着や接続に関する基本部分の規格がキッチリ決まっているため、あまり困ることがないのも事実。電源とスピーカーを接続しさえすれば、とりあえず音は出る……ハズだ。
それでは装着といきたいところだけど、まずはハーネスにギボシ端子を取り付ける必要がある。具体的には音声の+側がメス、-側をオス、電源やACCもオス、アースには平型、バックカメラや音声ミュート用端子は不要なので切り落としてしまってもいいが、メス端子を付けておけば後々必要になった時に便利だ。各線にはタグが付けられているほか、ほぼ規格通りの配色になっているため、カーオーディオの装着に慣れている人なら迷わず作業できるだろう。
ハーネスさえ作ってしまえば後は本体をクルマに取り付ければOK、なハズだったが問題が発生。DINスペースへの装着用プレートとのネジ位置はピッタリだが、固定用の突起があるため取り付けられないのだ。それまで付いていた国産メーカー品のボディーを見ると、ちゃんと「逃げ」が作ってあった。悩んだ末、突起をハンマーで粉砕して対処したけれど、メーカーや車種によって異なる部分だから、作業の必要がないクルマもあるかも。まぁ、このあたりもDIYの醍醐味(?)といえなくもない。知恵と力で乗り切りたい。
本体のみだとピッタリ1DINサイズでキレイに収まった | フロントパネルを装着した状態だと大きさが際立ってかなりの存在感がある。装着前の写真では余裕がありそうに見えるが、上側には1mmの隙間もなくギリギリだ |
フロントパネルは電動でオープン/クローズ、さらに角度調節が可能と便利で使いやすい | イルミネーションはブルー系で、主張し過ぎず派手過ぎずと意外とよい感じ |
さて、気になる実際の使い勝手。まず、DVDビデオの再生に関して。分かりやすいところでパネルサイズ&解像度が同じPSP-3000(480×272ピクセル)と比較すると、アンチグレア&タッチパネル対応のためコントラスト比が低く視野角も狭い。
と、書くとイマイチな印象を受けてしまうかもしれないけれど、発色は悪くなく、個人的には十分ナットクできる画質だ。リモコンによるメニュー操作やチャプター操作、早送り/早戻しも使いやすい。ただ、タッチパネルを採用していながら、メニュー画面でのタッチ操作ができないのは残念だ。手元にCPRMディスクがなかったため対応の有無は不明だが、通常のDVD-Rに録画した番組の再生は可能だった。
音楽CD再生はオンスクリーンボタンで頭出しなどはできるものの、トラックの一覧表示はできず各種情報もモニター上部にわずか1列のみ表示されるだけ。カーナビのようなCDDB対応はムリとしても常時、操作ボタンを表示したり、壁紙の設定を可能にしたりするなど、もうひと工夫欲しいところ。
FM/AMチューナーに関しては特筆できる点はなく、可もなく不可もなくといった感じ。マニュアルには対応周波数が87.5~108MHzと書かれていたので心配していたが、ちゃんと日本向けにローカライズされていた。ただ、音楽CDよりはちょっと賑やかとはいえ画面表示は寂しく、画面のみOFFにすることもできないため夜間には鬱陶しい感じだ。
その点、SDカードやUSBメモリを利用したデータ再生は便利。SDカードスロットではSDHCカードも読み込めたほか、USB接続ではポータブルオーディオプレーヤーも認識。どうやらマスストレージクラス対応のデバイスなら接続できそうだ。画面表示は音楽CD再生時とは異なり、フォルダ表示と同時にタイトル表示が行われるほか音楽、画像、映像ファイルを自動判別。各モードに対応したファイルだけを表示するなど、分かりやすい点も評価できる。
ただし、である。日本語表示は化けたり怪しい変換がされたりするし、「DOSかよ」と突っ込みを入れたくなる8文字制限もアリ。さらに音楽ファイルはID3タグの表示ができるわけではなく再生するのみ、画像モードは全画面やスライドショーなどは行えず表示するだけ。期待していた映像ファイル再生は解像度やレートなど条件を変えていくつかファイルを作ってみたものの再生できず、とかなり微妙な状態。もしかすると何か「おまじない」みたいなものを唱えれば(?)使えるのかもしれないけれどマニュアルは役に立たないし、製造元不明とあってはWebにも頼れない。やはり人柱的アイテム以外のナニモノでもない感じだ。
と、何かネガティブなことばかり書いてきたが、実は個人的にはけっこう満足していたりする。当初の条件はキチンと満たしているし、DVDビデオの再生も必要十分。音質に関しては特別よくもわるくもないけれど、圧縮データ音源の再生がメインと考えれば我慢できる範囲だ。
表示まわりを煮詰めれば「神機」と呼べる存在になれそうな気がするけれど、そこに手を加えるとなるとコストが倍増しそう。この価格だからこそ許せる部分もあるわけで、ある意味バランスが取れているといえるのかも。単に多機能なプレーヤーが欲しい人には間違ってもオススメしないけれど、アキハバラの裏通りなんかが好きな人には面白いアイテムだ。
(安田 剛)
2010年 8月 6日