タンブラー型スピーカーをいろいろなクルマで試してみた
ソニー「RDP-NWV500」
メーカー:ソニー
価格:オープンプライス(実売価格2万円前後)

 

 ソニー「RDP-NWV500」は、「SOUND MUG」という愛称を持つ「タンブラー型スピーカー」だ。スターバックスやタリーズで売っている、飲み物を入れるためのタンブラーと同じような形、同じようなサイズ(85×85×216mm)で、ウォークマンを繋いで車内のカップホルダーに入れて使うことができる。この7月には、iPodやiPhoneに対応した「SRS-V500IP」も発売された。こちらの実売価格もRDP-NWV500と同じ2万円前後である。

 タンブラーの中に高音質なスピーカーを収めるべく、上部にツイーターとウーファーを置き、その間の隙間から水平方向の360度全周に音を出すという構造を採っている。さらにその下部にはバフレスポートも備え、カーオーディオに求められる重低音にも最大の配慮がされている。

RDP-NWV500の付属品一式上部の隙間から音を出す。ツイーターとウーファーの間の、音を360度に拡散させるディフューザーが見える背面。カーオーディオとして使うときはここにウォークマンとシガーチャージャーを接続する。アナログ入力もある
上面。中央に電源スイッチ、それを取り囲むリングがボリューム。ボリュームスイッチはウォークマン本体のボリュームを調整する。「INPUT」は音声入力の切り替えスイッチ底面。ドックに接続するためのポートがある家で使うときにはドックに載せる。ドックに載せたときと、背面のポートにウォークマンを接続したときでは、音質を家庭用と車内用に変えてある
リモコンも付属するカップホルダーのサイズが大きすぎるときのスペーサーとして使えるクッション

 いまやたいていのカーオーディオにはAUXくらいは付いているし、iPodやウォークマンなどのポータブルデジタルオーディオ機器をサポートするものも多い。しかし、数年前のクルマにはそのようなものがない。こうしたクルマでポータブルオーディオを使うなら、FMトランスミッターという方法もあるが、混信したり、音がよくないことも多い。カーオーディオを換装するような手間とお金をかけずに、そこそこの音でポータブルオーディオの音楽を楽しむ、さらに家に持ち込んでポータブルスピーカーとして使うこともできる、というのがRDP-NWV500のコンセプトだ。

 なるほどこのスピーカー、実際に車内に持ち込んでみると、そこそこ「聴ける」音が出るのだが、そのルックスが災いしてか、その音のよさに疑いを持つ向きも多い。

 また、車内のどこに置くかで音が変ったり、ポータブルオーディオと一緒に使ううえでよく考えられた便利な機能を備えるなど、このスピーカーにしかない特長も多い。ここではいろいろなクルマにRDP-NWV500を持ち込んで、試してみた。

プリメーラの車内

 まず最初に試したのは日産のミドルサイズFFセダン「プリメーラ」、2005年式だ。3代目、P12型と呼ばれるモデル。カーナビは無く、純正オーディオにはポータブルオーディオを接続する端子はおろか、AUXもない。まさにRDP-NWV500のターゲットど真ん中というクルマだ。

 プリメーラのカップホルダーは左右フロントシートの間、シフトレバーとセンターコンソールボックスの間にあり、RDP-NWV500がジャストフィットするサイズだ。シフトレバー前にあるシガーライターソケットに近いので、電源も困らない。

 音に関して言えば、「ちゃんと聞こえる」といったところで、試聴会のときのような、猛烈に音がよくて感動するという感じはない。いかにもカップホルダーに置いたモノから音が出てきた、という感じがする。そこでカップホルダーから出し、ダッシュボードのエアコンやオーディオのディスプレイ前にある段差に置いてみると、改善された。

 RDP-NWV500は指向性のないスピーカーで、前述のように上部から水平方向の360度全周に音を出す。「クルマの中では指向性の強い音はかえってイライラする」という考えでこうなっているのだが、まわりになにもないところにぽつんと置くと、音が拡散してしまうように聴こえることがある。ダッシュボードに置いた場合、ダッシュボード自体やフロントウインドーが音を反射する。RDP-NWV500から出る音がより自分に届く感じがする。

 しかし、この部分にRDP-NWV500を置くことはできない。ディスプレイが機能を果たさなくなるし、走行中は落ちてくるだろう。実際には、エアコンの吹き出し口に取り付けるタイプのカップホルダーを使って固定するのが吉だろう。

センターコンソールのカップホルダーに設置ダッシュボードに無理矢理のっけてみたところ。音質的にはここがベスト。エアコンの吹き出し口にカップホルダーを増設して設置するとよいだろう

 

320iの車内

 次に、自分の車、BMW「320i」、2008年式に持ち込んでみた。こちらにはBMW独自の「iDrive」コントローラーで操作する純正のカーナビとオーディオが付いていて、AUX端子も備えている。だからRDP-NWV500を使う意味はない、と思っていたのだが、これが意外によい。

 純正オーディオは、AUXからの入力レベルが低く、接続したポータブルオーディオのボリュームを最大に上げて、カーオーディオ側のボリュームも上げる必要がある。なので、AUXからラジオに切り替えると音量が大きすぎてあわててボリュームを下げたり、外したポータブルオーディオにヘッドホンを接続すると、やはりボリュームが大きすぎたりする。またカーナビの音声案内や警告に連動して、AUXからの音量が極端に小さくなる。ルートのガイダンスはともかく、都内では「事故多発地点です」といった警告音声が頻繁に出て、たびたび音楽に水を差されるのは不愉快でもある。

 純正オーディオへの愚痴がずいぶん長くなったが、RDP-NWV500はこうした欠点を一気に解決してしまった。カーナビと連動しないから、音楽が途切れることはない。また、RDP-NWV500には「インテリジェントボリューム」という機能があって、ウォークマンをRDP-NWV500に接続したときのボリュームと、ウォークマン単体で設定したボリュームを、ちゃんと分けて記憶してくれる。

 音質はと言うと、とくに不満はない。320iには、センターコンソールボックス内とダッシュボードにカップホルダーがあるが、よかったのはプリメーラとは逆に、センターコンソールボックスの方だ。ボックスの床がしっかりと作られているのと、センターコンソールの蓋が反射板の役割を果たしているからのようだ。ただし、この蓋は後席への音を邪魔することになるので、前席専用と言うことになる。

 というわけで、AUXなどがあっても、純正カーオーディオの使い勝手に不満があればRDP-NWV500でお手軽に解決、というのもアリと感じた次第。

ダッシュボードのカップホルダー。ホルダー自体の作りがヤワなのと、深さが足りず固定できなかったので、RDP-NWV500に付属しているクッションを詰めて固定音がよかったのはこっち。ただし後席にとってはよくない
こんなクルマにも持ち込んでみた。ベントレー コンチネンタル スーパースポーツにはiPodにも対応した立派なオーディオシステムが搭載されているので、まったく意味がないが、さすがに音はこれが一番よかった。センターコンソールをはじめインテリアやボディーの作りのよさが効いた模様

 

オチはやっぱりこのクルマ

 最後に登場するのはこれ、本誌連載「入れちゃお!iPhone & Android クルマ・アプリ・カタログ」でおなじみのりたまこの愛車、1957年式BMW「イセッタ300」(愛称ドラ)である。こちらはAUXはおろか、カーオーディオというものがなく、さらに非常に車内がやかましい。シートのすぐ下にエンジンがあり、防音材らしきものはないのだ。

 のりたまこ曰く、このクルマを買ってすぐにオーディオの装着を試みたそうである。しかし「消費電力が多すぎて付かなかった」そうだ。RDP-NWV500もクルマの電力を消費するのだが、試したのが「雨の夜」という電力消費の多い条件だったにも関わらず、電圧計が危険な水準に達することはなかった。

 音量について言えば、音量を最大にしておけばイセッタ車内の“轟音”にも負けず、歌詞を聞き取ることができた。SRS-V500IPを使えば、iPhoneのカーナビアプリの音声案内を聞きやすくするのにも使えるだろう。

  というわけで、侮れない音のタンブラースピーカーは、さまざまなクルマでも魅力的な、懐の広い製品であった。

フロントドア内側のポケットに突っ込んだライトとワイパーが動作している状態でRDP-NWV500を使っても、電圧計は危険な領域には至らない。虚弱体質の旧車にも安心なオーディオシステム

(編集部:田中真一郎)
2010年 8月 27日

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