手軽にできるオーバーヒート対策で夏を乗り切る
「レーシングラジエーターキャップ TYPE-1」
メーカー:ブリッツ
価格:2100円

 

レーシングラジエーターキャップ。TYPE-1、TYPE-2が用意され、車種によって適合が異なるので購入する際は適合表を参照されたい。キャップのメインカラーは、TYPE-1がブルー、TYPE-2はレッド

 今年は4月に雪が降るなど、春になっても寒い日が続き、ちょっとした異常気象と言われていたものの、5月に入ると日中の気温は上昇し、すっかり夏を予感させる季節になった。

 個人的に夏という季節は好きだが、“モワッ”とくる車内の空気だけはどうにも我慢できない。真夏の車内は灼熱地獄と化し、必然的にエアコンの温度設定は最低に、風量は最大になるわけだが、人間はそれで涼しくなっても、クルマは涼しくならない。真夏の渋滞など、過酷な状況下にさらされたクルマは、使用状況によってはオーバーヒートしてしまう可能性もある。

 オーバーヒートとは、冷却水が適正水温域を超えた状態のことを指し、そのままの状態が続くと、場合によってシリンダーヘッドガスケットの破損や、エンジン内部が焼き付いてしまうこともある。

 そうならないように、日頃からLLC(ロングライフクーラント)やエンジンオイルなどの液量点検のほか、普段利用している駐車場の床面に、LLCやオイルが漏れた痕跡がないかを確かめる癖をつけておきたいところ。だが、こうした点検作業をマメに行っていた筆者の友人のクルマは、かつて車内の外気温計が40度を指した状態で長時間の渋滞につかまり、オーバーヒートしてしまったことがある。いくら気をつけていても、回避できない状況に追い込まれることも現実にあるのだ。

 そこで、これから夏本番を迎えるにあたり、少しでもオーバーヒートのリスクを回避したいということで目をつけたパーツが、今回紹介するブリッツ「レーシングラジエーターキャップ TYPE-1」だ。

ラジエーター上部のふたがラジエーターキャップ。金属部にステンレスを採用して耐久性を上げるとともに、ゴムパッキンには腐食性に強く、耐熱性の高いシリコン合成ゴムを採用

 メーカーによれば、ラジエーターキャップのゴムパッキンにキズや亀裂があったり、水アカ、錆が付着していると交換時期だと言う。また、ラジエーターキャップのスプリング部は圧縮された状態(装着状態)が続くことで、バネ圧が徐々に低下してしまうのだそう。

 そもそも、ラジエーターキャップは、LLCが沸騰しないようラジエーター内に圧力をかける働きを持つもの。圧力鍋の機能を思い浮かべてもられば分かりやすいかと思うが、1気圧(0.968kgf/cm2)のままで水を加熱させると100度で沸騰するが、圧力鍋で2気圧の状態にすると、水の沸点は約120度になる。ラジエーターキャップも同様に、ラジエーター内の圧力を1気圧以上にする役目を担っているのだ。

 純正装着のラジエーターキャップは、開弁圧が大体0.9~1.1kgf/cm2の範囲内に設定されているが、レーシングラジエーターキャップは1.3kgf/cm2まで圧力を高め、冷却水の沸点を高める。

 レーシングラジエーターキャップは、金属部にステンレス材を使うことで耐久性を高めているほか、金属表面にメッキ処理を施したことで、見た目にも優れる。ラジエーターキャップはLLCの沸点を高める機能系パーツだが、エンジンルームのワンポイントアクセントにもなるので、ドレスアップの意味合いを含めて交換する人も少なくない。

 交換自体は現状で付いているキャップを付け替えるだけなので、即刻終了する。気をつけたいのは、走行後など水温が上昇した状態でキャップを外してしまうと、高い圧力で密閉されていたLLCが吹き出してしまうので、必ず冷えた状態で行うこと。キャップに触れる際は濡れたウエスなどを使用するのがベターだ。キャップを外したついでに、ラジエーター内のLLCが変色していないか、リザーバータンクを含めて液量が十分かどうかをチェックしておくとよいだろう。

 沸点を高めることでオーバーヒートの予防策になるし、見た目もよくなる半面、例えばラジエーターホースやパッキン類が劣化しているであろう年式の古いクルマで、こうした高い圧力をかけてしまうと、各部が耐えきれずに破損することがあるかもしれない。そうなると、LLCが破損個所から漏れてしまい、結果オーバーヒートを招いてしまうという、本末転倒な話にもなりかねない。

 もし、レーシングラジエーターキャップのように高い開弁圧のラジエーターキャップに交換するのであれば、普段愛車のメンテナンスをしているディーラーや整備工場などで交換しても問題ないか、確認するとよいかもしれない。

 社外品のラジエーターキャップはさまざまなメーカーから発売されており、純正同等の開弁圧に設定されている製品も豊富にあるので、古いクルマでドレスアップをしたい人は、そうしたものをセレクトするのもありだ。オーバーヒート対策は無論のこと、キャップが劣化していたり、エンジンルームをドレスアップしたい人にも、オススメできるパーツと言える。

キャップの取り外しは車種によって若干異なるかもしれないが、今回試したR32スカイラインGT-Rの場合はキャップを時計まわりに1/4回転程度回転させれば外れたキャップを外した状態。外したついでに、LLCが変色していないかチェックしてみよう
エンジンが冷えた状態であれば素手のまま触っても問題ないが、走行後に作業を行う場合は必ず冷ました後に、濡れたウエスを使ってキャップを外すようにしたい。場合によってはLLCが吹き出して火傷してしまう可能性もあるキャップ交換のときのみならず、普段からリザーバータンクのLLCの量をチェックするよう心がけたい。LLCの量が足らないまま走行するとオーバーヒートすることも
【追記】純正品以外のラジエーターキャップを装着したことで万が一トラブルがあった場合、メーカー保証を受けられない可能性があります。装着の際はディーラーなどで確認をしてください。

(編集部:小林 隆)
2010年 5月 21日