車の休眠時にバッテリー劣化を極力防ぐ
BAL No.1734
メーカー:大橋産業
価格:オープンプライス(購入価格:3800円)

 

 車に搭載されているバッテリーは、エンジンをかける際にセルスターターを回すことに使われていることは知っていると思うが、単にそれだけではない。車にはエアコンをはじめ、カーナビなど多くの電装品が装備され電力を消費している。消費する電力が、発電機であるオルタネーターが発電する電力を上回ると、バッテリー内の電力がどんどん消費されてしまい、蓄電される電力が少なくなる。特に夏場はエアコン使用が多くなるので注意が必要だ。

 そして、バッテリーは、エンジンをかけて、ある程度の回転数で長時間走行しないと十分に充電されない。休日のみ短時間使用するような使い方だと、停車中に電装品のバックアップ用電流により蓄電量が徐々に低下していき、ある時点でバッテリーが上がってしまう危険がある。

 このような状態が続き、バッテリーを完全に上げてしまう前に、定期的に充電しておくのがベストだ。そこで今回は、手軽に補充電ができるバッテリー充電器を選んでみた。

「BAL No.1734」はコンパクトなバッテリー充電器。蓄電量を下げないようにキープするのに適している

 今回選択したのは、大橋産業の「BAL No.1734」というバッテリー充電器。スイッチング電源を使用しているので、とてもコンパクトだ。本体部分のみIP65の防水仕様なので、水がかかっても平気。このバッテリー充電器は、使っていない時に蓄電量を下げないようにキープする、という目的にベストなモデルだ。

 充電できるバッテリーは、電圧が12Vであることと、容量が14Ah以上となっていること。また、充電電流には0.8Aもしくは2Aの一定電流が使われる。これで分かるように製品には「オートバイ・軽自動車用」と銘打っているが、補充電という目的に絞れば、低めの定電流という原理から普通自動車のバッテリーに使ってもなんら問題にならないと思われる。基本的にバッテリーは、なるべく低い電流でダラダラ長時間かけて充電することが望ましい(バッテリーに優しい)。30分の急速充電などはバッテリーを傷める場合もある使い方なのだ。

 充電可能なバッテリータイプは、シールド(MF、密閉)、オープン(開放)、ドライセルとほとんどのタイプに対応している。

製品には「オートバイ・軽自動車用」と書かれているが、原理的に考えて、より容量の大きな普通自動車用に使っても過充電が起きることはないはず上面に「モード選択」ボタンと表示用のランプがある。操作は簡単でモードを選び、使用する電流を選ぶだけだ本体両端からはコードが2本出ていて、片方はコンセント用、もう片方はバッテリー接続用のクリップになる。クリップはやや小型

 一般的な車用のバッテリー充電器は、カラになった状態からでも満充電が可能で、セルスタートも可能なモデルが多いが、「BAL No.1734」にそういった機能を追求しないほうがよい。バッテリーが上がってしまった状態から即時に救出する用途には、使えないと考えたほうがよいだろう。バッテリーが完全にカラっぽの状態からでは、容量によってはなかなか満充電にならない可能性がある(容量の小さなバイク用ならOKだ)。もしくは、ものすごく長い時間がかかってしまうことだろう。

 では、どういった使い方をするのかというと、ある程度は電圧が残っている状態で(12.5V以上)、うっかり減り過ぎてしまうことを防ぐという目的で活用すると最強なのだ。充電を開始し完全に充電されると、その後微弱電流による充電に切り替わり(トリクル充電と呼ばれる)、バッテリーが自己放電して減ってしまうことを防ぐ動作を続ける。そのため車を使わない間は、接続したまま充電をしっぱなしにしておいても構わない、というありがたい仕様になっている。

一般的な普通車バッテリー向けの充電器(最大電流5A)と比べると、かなり小型なことが分かる

 また、バッテリー電圧が7.5~10.5Vと低い場合に活性化するという機能もあるので、いったん上がってしまったバッテリーを充電に長時間かかっても再生したいという場合に試みることはできる。ただし、説明書にも活性化するかどうかは「状態による」と書かれているので、あくまでもダメ元でやってみるという機能だろう。

 バッテリーの充電は、車からバッテリーを外してから行うのが一般的だ。バッテリーを下ろすのが面倒なら最低限でもマイナス端子を外すことが鉄則だ。これは、特に急速充電時には充電電流がかなり高くなるケースがあり、電装品を故障させることを防ぐ意味合いがある。

 しかし、今回の「BAL No.1734」では、最大でも2Aまでに限定されているので、そういった心配はあまり必要ないだろう。バッテリーを搭載して端子を外すことなく、そのまま端子に繋いで充電を始めても問題は起こらなかった。これならオーディオなどの設定がリセットされないので、手軽に充電できるだろう。実際の端子の接続時には、バッテリーの極性をよく見て接続してほしい。万一間違えて接続した場合の逆接続保護機能と、短絡させてしまった場合の短絡保護機能がある安全設計にはなっている。

 まず、バッテリーの端子にクリップを繋ぎ、その後プラグをコンセントに繋ぐようにすると、ショートさせる心配もなく安全だ。電源接続プラグからバッテリー接続クリップまでの全長は約4m(実測値)ある。車からコンセントまで4m以上ある場合には、延長タップなどを利用しよう。本体部分のみは防水構造だが、コンセント部など接続部分は防水ではないので、長時間繋ぐ場合には雨対策に注意しておきたい。コンセントに接続すると「待機」ランプが点灯し、充電モードを選択可能な状態になる。


バッテリー端子にクリップで接続してから、コンセントに接続するバッテリーの極性はよく見て確認する。「+」側に赤を、「-」側に黒を接続する

 充電モードは、「オートバイ(0.8A)」と「軽自動車(2A)」、「低温時/ドライセル(2Aで少し電圧が高くなる)」から「モード選択」ボタンを押して選ぶ。一般的な車用のオープンもしくはシールド(MF)タイプであれば「軽自動車」を選ぶ。最近ではオープンタイプはほとんど見かけないが、もしオープンタイプであった場合には、液面を確認し必要なら補充し、液口の栓に排気穴があるか確認する。なければ液口栓を開ける必要がある。排気がふさがったまま充電すると破裂の危険があるので、十分に注意が必要だ。シールドタイプではこのような作業をする必要はなく、そのまま充電を始めてよい。

 充電モードを選択すると、「待機」から「CHARGE」に切り替わり、充電が始まる。もしスグに「CHARGE」から「待機」に戻ってしまう場合には、バッテリーの劣化が考えられる。バッテリー端子部分の電圧をモニターしてみると、徐々に電圧が上がり、14V超程度(仕様では14.4V)をしばらく保ち、充電が完了し「FULL」ランプが点灯すると電圧が落ちるのが分かる。

 取り扱い説明書での満充電時間は、50%の状態から軽自動車モードで15時間と書かれている。これ以上の充電時間になることも多いと思われるが、念のため本体の発熱などに注意しながら使ってほしい。あくまでも筆者のケースになるが、2週間程度繋ぎっぱなしにしたこともあったが、特に問題は感じられなかった。どの程度長時間接続しても安全かは明記されていないので、あくまでも自己責任で、安全を見極めながら使ってほしい。

「モード選択」ボタンを押して充電モードを選ぶと、「CHARGE」ランプが点灯し充電が始まるバッテリーの初期電圧をテスターで測ってみると、12.5Vだった。わるくない状態だが、最低限の電圧と言え、ギリギリ使用できる状態充電中は徐々に電圧が上がっていく
最終的に14V超あたりで充電が行われている。充電器の出力電圧は14.4V(ドライバッテリーモードでは14.7V)だ充電が完了し「FULL」ランプが点灯すると電圧が落ちる。そのまま微少電流での保持モードになるので、繋ぎっぱなしにしておく

 ちょうどバッテリー交換後3年目を迎え、さらに酷暑でエアコン回しっぱなし状態にて、少々お疲れ気味だった愛車のバッテリーも、丸2日ほど繋ぎっぱなしにしておいたら、だいぶ調子よく復活してくれたようだ。始動時のセル音が「キュルルル~」と多少弱々しかったのが、「キュル。グワン」と一発で始動してくれるようになった。バッテリー交換は、もう少し先延ばしにできそうだ。

 似たような機能を持つ、バッテリーメンテナーと呼ばれるジャンルの製品は意外と高価だが、これなら気軽に導入できる。車を動かす機会が少ないためにバッテリー上がりが気になり、自宅駐車場にて100V電源が確保できるなら、便利に使えるため持っていて損はない製品だ。うまく使えばバッテリー交換の頻度を下げることができ、十分に元はとれるだろう。


(村上俊一)
2010年 9月 24日

この商品をAmazonで買う