純正カーナビを地デジに対応させる
車載用地上デジタルハイビジョンチューナー「HIT7700」
メーカー:データシステム
価格:オープンプライス(購入価格3万6800円)

 

 アナログ放送終了まで残りわずかとなったが地デジ化はお済みだろうか? 先日、いつも仕事をお願いしているカメラマンから「カーナビを地デジ化したい」と相談を持ちかけられた。

 彼は仕事でクルマを使う機会が多く、先の震災の時にも車内のテレビが情報源として欠かせないものだったと言う。加えて奥さんがかなりのテレビ好きとのことで、クルマの地デジ化は必須なのだそうだ。

 しかも純正ならではの使い勝手や、収まりのよい見た目もそのままにしたいと言う。となると、地デジチューナーの買い足しになるのだが、問題は入力の方法。最近の純正カーナビであれば、映像の外部入力がついていることもあるが、5年以上前に買った彼のアコードワゴンには外部入力はないので、そのままでは後付けのチューナーを付けることができないのだ。同じような悩みを持っている方は少なくないのではなかろうか。

7月24日にはアナログ放送が終了してしまう都内ではアナログ放送の電波状況もわるくはないが、ピットや立体駐車場など、建物の中だと受信状況はわるくなる

純正カーナビに追加できる地デジチューナー
 そこで今回使ったのが、データシステムの車載用地上デジタルハイビジョンチューナー「HIT7700」だ。データシステムでは、純正カーナビに外部入力を追加する「ビデオ入力ハーネス」(定価2500円~)を発売しており、これを組み合わせることで、純正カーナビでも地デジチューナーをつなげられるようになる。

 ちなみにビデオ入力ハーネスに対応しない輸入車などの場合は、同社の「車載用ビデオモジュレーター」(1万2800円)を使うとよい。これは入力されたAV信号をアナログTVの電波に変換するので、アナログTVチューナーが付いているクルマなら、車種を問わず取り付けることができる。

アコードワゴンを地デジ化するために用意した商品。右から地デジチューナー、ビデオ入力ハーネス、ステアリングリモコンアダプター

 これらビデオ入力ハーネスやビデオモジュレーターがあれば、データシステム以外の地デジチューナーも使えるのだが、HIT7700には純正カーナビとの組み合わせで便利なオプションがもう1つある。それが「ステアリングリモコンアダプター(HIT7700専用)」(4980円)だ。これは純正のステアリングリモコンを使って、HIT7700を操作できるようにするというもの。これまでの純正チューナーと同じ感覚でチャンネルを変えられるようになる。

地デジチューナー単体でも機能に優れるHIT7700
 充実した周辺オプションは魅力だが、それ以外にもHIT7700を選ぶには理由がある。まず、miniB-CASカードを採用していて、本体サイズがとても小さく取り付け場所を選ばない。最近では他社からもminiB-CASを採用したチューナーが登場しているが、それらと比較しても最小クラスだ。加えて、標準で外部入力を持っているのも、他社のチューナーにはあまりない特徴だ。iPodやDVDプレーヤーを直接繋いで映像を見ることもできる。またハイビジョン出力(D3、D4)にも対応したD端子を持つのも他社にはない特徴だ。この夏には同社から車載ハイビジョンモニターが3万円台で発売予定なので、将来的な拡張性にも期待ができる。このように他の大手メーカーの地デジチューナーと比較しても、機能面が充実しているのだ。

 受信方式は4チューナー×4アンテナで、チューナー部にはシャープ製のフロントエンドモジュールを採用している。フィルムアンテナは「電波職人」ブランドで知られる原田工業とコラボレートしたものとのことで、受信性能にも期待ができそうだ。

 受信状況がわるくなると自動的にワンセグに切り替わり、受信エリアを外れた場合には、自動で中継局や系列局をサーチするなど、移動中の使用でも問題なさそうだ。もちろんEPG(電子番組表)や番組情報も表示でき、地震や津波などで発信される緊急警報放送(EWS)にも対応するなど、機能面で足りない問題はなさそうだ。

HIT7700のセット内容本体サイズは156×21×92mm(幅×高さ×奥行き)とコンパクト
入出力端子は片面にまとめられるハイビジョン出力も可能なD端子と、外部入力端子を持つ
背面にはminiB-CASカード挿入部と電源やリモコンの端子親指ほどのサイズのminiB-CASカードを採用
フィルムアンテナは原田工業とのコラボレートによるものリモコン受光部とリモコン
純正カーナビに外部入力を持たせるビデオ入力ハーネスステアリングリモコンアダプター

東京都江東区にあるスーパーオートバックスTOKYO BAY東雲

スーパーオートバックスで装着作業
 装着はスーパーオートバックスTOKYO BAY東雲で行った。都心からも近く、遅くまで営業していることもあって、筆者がよく使う店である。作業をしてくれたのは亀石さんと森さんだ。

 今回装着したアコードワゴンの場合、ビデオ入力ハーネスを接続するユニットがラゲッジスペースにあったため、追加で延長のRCAケーブルが必要となった。また、ステアリングリモコンアダプターの接続には、カーナビモニター部を丸ごと外す必要があり、結構大変な作業だ。腕に自信がある人以外は、プロに任せたほうがよいだろう。

 スーパーオートバックスTOKYO BAY東雲の場合、地デジチューナーの取り付け工賃は1万500円。今回の場合ラゲッジルームからの配線の取り回しが必要になったため、追加で3150円。そしてステアリングリモコンアダプターの装着が5250円となった。

ステアリングリモコンの取り付けなどもあるので、プロ2人掛かりでの作業ステアリングリモコンの配線はカーナビのコネクター配線に接続する接触不良を防ぐため、配線はがっちりとカシメられる
フィルムアンテナはフロントガラスに貼るアコードワゴンの場合、ビデオ入力ハーネスを繋ぐ先がラゲッジルームのため、延長のケーブルが必要になった
配線の取り回しなど、さすがプロという仕上がりだ本体はシート下に設置。コンパクトなのでシート下が狭いクルマでも装着できそうだ作業してくれた亀石さんと森さん

果たして地デジチューナーの映りは?
 いよいよ装着も終わり、いざ視聴。都心ということで、アナログ放送でも比較的条件のよい場所だとは思うが、それでも映像の差は歴然だ。ピットの中であるにも関わらずキレイに映像が映り、テロップや画面の隅に出る番組ロゴなどもハッキリと見える。デジタルでもワンセグでは文字情報を読み取るのが難しいが、さすがは12セグというところだ。さらに音についても、映像と同様、ノイズが乗ったり音量が変わるようなことはない。

 ステアリングリモコンもしっかり機能していて、純正のステアリングを操作すると地デジのチャンネルが変わる。ボリュームなども純正同様にスイッチ操作可能だ。

 操作系で言えばリモコンもなかなか使い勝手がよい。コンソールに収まるサイズだし、ボタンのレイアウトも違和感なく使える。チューナーの設定はモニター画面に表示されるので、説明書を読まなくてもほとんど操作はできそうだ。

いよいよ装着完了。ピットや立体駐車場など、屋内でも画像が乱れることなくキレイに見られるステアリングリモコンでもちゃんとチャンネルが切り替わるボリュームもステアリングリモコンで操作可能だ
リモコン受光部は助手席側に付けた。運転席はステアリングリモコンで、リモコンはもっぱら助手席用になりそうだからだビデオ入力ハーネスで接続しているため、ソースの表示がAUXになっているフィルムアンテナはご覧のようにほとんど気にならない

 ではいざ試走。通常こういった純正カーナビは走行中テレビを見ることができないが、助手席に乗る奥さんがテレビ大好きということで、もともとデータシステムのTV-KITで走行中もテレビが見られるようにしていた。それは地デジ化しても同じだ。

 東雲から銀座まで一般道を走ったが、街中でワンセグに切り替わることはなく、首都高でトンネルなどに入ると、場所によって希にワンセグに切り替わるという程度。しかし霞ヶ関トンネルのような完全に地下に潜るような長いトンネルだと、さすがに電波が届かないようだ。

チャンネルを切り替えると、放送局や番組名などの情報が表示されるEPGや番組情報も表示可能

12セグとワンセグの自動切り替え
 12セグとワンセグへの切り替えはとてもスムーズに行われる。ほんの一瞬だけ音声が途切れ、切り替わると画面上部に番組情報が表示される。ちょうどチャンネルを切り替えた時と同じ動きだが、一瞬の出来事なので、画面を凝視していなければ気がつかないほどだ。

 ワンセグの画質はどうかと言うと、やはりテロップなどの小さな文字が読みにくくなる。しかし映像によっては12セグかワンセグかすぐには判別できないこともある。これは一つには純正モニターの性能に依存している気がする。ハイビジョン対応のモニターであれば、もっと12セグがキレイに映って、明確にワンセグとの差が出ただろう。

写真左が12セグ、右がワンセグだ。特に東京や上野という文字の差が歴然
こちらも12セグとワンセグの比較。カーナビレベルの画面サイズだと、やはり12セグ対応のチューナーが欲しい

中継局自動サーチを試す
 車載チューナーならではの問題は、遠出をすると普段の生活圏の電波が届かなくなることだ。受信する場所が変われば最適な中継局は変わるし、場合によっては放送局自体が変わる場合もある。その点、HIT7700は、自動中継局サーチに加え、自動系列局サーチを持つ。そこで、その機能を試すべく東名高速を西へクルマを走らせた。東京の電波が届かなくなるところまで、実際に走ってみようということだ。

 クルマを西へと走らせるが、神奈川県に入っても映像が乱れる様子は全くない。ちょうど海老名SA(サービスエリア)辺りまで来たところでようやくワンセグへと切り替わった。しかしワンセグが受信できる状況では中継局サーチは行われないようだ。そこでさらにクルマを走らせると、海老名SA付近は電波状況がわるかっただけらしく、また12セグに復帰した。

 さらに進んで大井松田IC(インターチェンジ)付近までくると、いよいよ電波が届かなくなってきたらしく、ワンセグのまま切り替わらなくなった。そして大井松田ICを過ぎた辺りでワンセグの映像にもブロックノイズが乗り始め、ついに自動中継局サーチが始まった。しばらく待つと映像が戻りキレイな映像が映し出された。しかしすでに場所は神奈川県の端っこ。さらに山間部に入っており、やはり電波状態のわるい状況が続く。そうこうしているうちに連続するトンネルに突入。大井松田~御殿場間はとてもトンネルが多いのだ。

 山を掘ったトンネルの中では完全に電波が届かない。しばらく受信できない状態が続くと再度自動中継局サーチが始まるが、トンネルを出てもすぐ次のトンネルに入ってしまうので、この区間は何度となく中継局サーチを繰り返す状態が続く。HIT7700はがんばってくれているが、さすがに状況が厳しすぎるようだ。

神奈川に入ってもキレイに12セグで映っている海老名SA辺りから電波状況によってワンセグに切り替わるようになった大井松田ICを過ぎた辺りでついに電波が届かなくなった
電波が受信できなくなると自動で中継局サーチが始まる中継局サーチで映像が復活トンネルに入るとまた電波が届かなくなってしまった

 そして御殿場側へと抜けると再度中継局サーチが始まり、しばらくすると、それまで「NHK総合・東京」だった表示が「NHK総合・静岡」に変わった。そのほかにも「日本テレビ」が「だいいちテレビ」に変わるなど、どうやら系列局サーチが行われたようだ。

御殿場側に抜けると自動で系列局に切り替わり、放送局名が「NHK総合・静岡」に変わった。系列局サーチが行われた証拠だ

 中継局サーチと系列局サーチは一貫して行われるようで、その違いは分からなかった。ただ、どちらにしてもユーザーがいっさい手を触れることなく、勝手に最適な電波を探して、それまで見ていた番組を引き続き見ることができる。もちろんもっと地方に行けば、系列局がないような状況も出てくるのだろうが、それはもうチューナーの性能とは別の話。HIT7700が車載チューナーとして十分な性能を持っていることが分かった。

 こうした自動中継局サーチなどは設定でOFFにしたり、リモコンのボタン1つで手動で作動させたりもできる。設定メニューもかなりしっかりしているが、実際には自動で中継局も探してくれるし、ほとんど使う機会はなさそうだ。リモコンを使うのもチャンネルを変えるときぐらいだろう。それもステアリングリモコンで操作できるから、もしリモコンをなくしてしまったとしても、大きな問題はなさそうだ。

設定は画面を見ながらリモコンで操作するチャンネル自動設定。現在地で受信できるチャンネルを自動で設定するスキップするチャンネルも設定可能
ワンセグ切替設定。デフォルトは自動切替なのでそのままでよいだろう受信レベルも表示できる字幕や音声切替の設定、自動放送局サーチのON/OFF設定もできる
モニターに合わせて画面サイズの設定も可能B-CAS情報やバージョン情報も表示できる字幕も表示可能

 オーナー自身は、地デジに対応したことで映像の映りが劇的によくなりながらも、使い勝手は今までのままで大満足の様子。筆者としては、せっかくなら今夏発売予定のハイビジョンモニターも組み合わせて、HIT7700の性能をフルに引き出してみたいものだ。

(瀬戸 学/Photo:高橋 学)
2011年 7月 15日