ポルシェ「991」、着々とファミリーを増殖中

現行「911 カレラS」(991型)

 間もなく正式リリース予定の「918スパイダー」が、ニュルブルクリンク北コースで7分14秒という周回タイムを計上した。あるいは「カイエン」に550PSを発生する「カイエン ターボS」が来年から追加されるなど、相変わらず華やかなニュースに事欠かないポルシェだが、その一方で同社の“本流”である「911」シリーズ(991型)も、着々とラインアップの拡充計画を進行させているようだ。

 まずは、ともに来たる2013年前半に正式なワールドプレミアに供されると言われる2台。991系でもシリーズの最上級モデルとなる次期「911 ターボ」と、硬派のファンからカルト的人気を誇る「911 GT3」の次期モデルについてである。

 新型911(991)ターボは、「クーペ」と「カブリオレ」が同時期にデビューする公算が高いとされる。水冷フラット6直噴ユニットは997ターボまでのツインターボに加え、991ターボではごく小径の3基目のターボチャージャーを装着すると言われる。一説によるとスタンダード版でも525~550PSものパワーを発揮。7速デュアルクラッチAT「PDK」と7速MTが組み合わされるとい
う。

現行「911 GT3」(997型)

 一方新型991 GT3は、一連の997 GT3系と同じく高回転型の3.8リッター自然吸気フラット6が搭載される模様だが、997 GT3では最後まで直噴化されなかったシリンダーヘッドが、果たして今回のフルチェンジで直噴化されるかどうかは、現時点では不明である。

 いずれにしても最高出力は997 GT3/GT3 RSの435PSからさらに高められ、少なく見積もっても昨年限定生産された997 GT3 RS 4.0に匹敵する450PSになる? と言われている。

 駆動方式は従来どおりRRで、これまで6速MTのみの設定だったトランスミッションは、今回からポルシェ自慢の7速PDKのみに方針転換される可能性が高いというが、その変速セッティングはこれまでのPDK搭載車とは一線を画した、シャープかつダイレクトなものとされるようだ。

 また、内外装やシャシーにおける軽量素材の適用範囲を拡大するほか、装備もスパルタンなものとすることで、現行911 GT3(997)に対して約40kg、グレードによっては約70~90kgもの軽量化を果たすと伝えるメディアもある。

 ところで、ここまでのスクープ情報だけでもポルシェ・パラノイアにとっては充分に関心をそそるだろうが、これら991シリーズに関する噂の中でも最も興味深いのは、初代Oシリーズ時代の1967年から設定され、歴代911ではカブリオレよりも長い伝統を誇るセミオープン版「タルガ」のリニューアルに関するニュースかもしれない。

 997シリーズまでのタルガは、大型のグラスルーフを電動で後方にスライドさせて、リアウインドー下に重ねてしまうという、実に秀逸なアイデアを実現したモデルだった。これは、故フェリー・ポルシェ博士の80歳の誕生日プレゼントとして、1989年に964系カレラ4をベースに製作されたデザインスタディ「パナメリカーナ」のアイデアを発展させたもので、初めて製品化されたのは1996年モデルの993シリーズだった。

 一方964シリーズまでのタルガは、中央にアーチ型の大型ロールバーを配し、サイドまで回り込んだラップアラウンド型のリアウインドーと組み合わせ、ルーフはシンプルなデタッチャブル(脱着)式とされていた。この方式は、その名も「タルガトップ」と呼ばれ、1970年代以降の世界のスポーツカーに絶大な影響を与えることになるのだが、実は991シリーズのタルガでは、元祖「タルガトップ」スタイルの復活が図られるというのだ。

「911 タルガ」(996型)1967年型911 タルガ

 これまで海外のスクープ系メディアに流布している写真では、現行型991カブリオレのトップを閉じた状態に見えるように偽装されているが、ルーフ中央には旧タルガのアイデンティティであるアーチ型ロールバーがハッキリと見て取れる。

 その一方で、往年のタルガでは単純なデタッチャブル式だったトップについては、どうやらかなり先進的な仕組みにより電動収納されるとの噂もある。最新テクノロジーを駆使して旧きよき味わいを目指すというのは、雰囲気重視が多いとされる911タルガのファンにとっても魅力的と判断してのことなのだろうか?

 ともあれ、ポルシェが当代流行のラインナップ拡大トレンドをリードするという状況は、この先も変わらないようである。

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http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/wr/


(武田公実 )
2012年 10月 24日