ワールドリポート

ジャガーが再びセグメントDに挑戦する?

「XS」は“ミニXF”になる?(写真はXF)

 一昨年に開発プロジェクトが存在すること、そして「XS」という仮名が初めて噂に上ったジャガーのセグメントDモデルだが、今年になって一般路上における偽装車両のテストが目撃されたことから、いよいよ開発プロセスが佳境に入ったと見られている。

 「X760」という社内コードネームまで明らかになっているこの新型車は、現時点におけるジャガーのエントリーモデル「XF」の下位に当たるとともに、かつてのフォード傘下時代に、フォード「モンデオ」をベースに開発、2001年から2008年まで生産されたジャガー「Xタイプ」の後継車にも相当するミドルサルーンである。

 ボディーサイズは、最大のライバルとして仮定されているメルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」などのドイツ製セグメントDプレミアム・サルーンたちに匹敵する、全長4.7m前後、全幅1.8m前後と予測されている。

 これは現行のXFシリーズよりも全長で30cm近く短く、全幅も7cmほど狭いものとなる一方、かつてのXタイプにほぼ近いものである。しかし、残念ながらセールス面では失敗に終わったXタイプと同じ轍を踏まぬよう、ドイツ勢にも勝るとも劣らない上級のテクノロジーと、最新ジャガーのエッセンスをふんだんに投入。プレミアム・サルーンとしての商品性を一気に高める方針と思われる。

 まず駆動方式は、Xタイプで「チープ」という不本意な評価を受けてしまったFWD(+FWDベースのAWD)を放棄。アウディを除くプレミアムカーの分野では必須とも言われるFRとする。そしてシャシーについても、現代のジャガー・ランドローバー・グループが誇るアルミニウム製プラットフォーム「PLA(Premium Lightweight Architecture)」を採用し、セグメントDカテゴリーでも最軽量のシャシーを目指すという。

 ボディーデザインは、昨今ヨーロッパやアメリカの自動車メディアを賑わしているスクープ写真では、XFをそのまま縮小したようなスタイリングのサルーンが示されているが、その偽装車両がそのまま生産型XSとなるか否かは、現時点では不明と言うべきだろう。

 ただ、BMWの3シリーズと5シリーズの例を挙げるまでも無く、近年のプレミアムカーでは同一ブランド内のデザイン言語を統一する傾向が強いため、まったく可能性が無いとも言えないところ。ともあれ、いずれにしてもこれもやはりXタイプで不評だったレトロ調スタイルの復活は無さそうである。

 一方パワーユニットは、XFや「XJ」、新型スポーツカー「Fタイプ」、さらには「レンジローバー」にも搭載されることになった3リッターV型6気筒直噴スーパーチャージャー・エンジンをトップに、「レンジローバー・イヴォーク」やジャガーXF/XJにも搭載された2リッター直列4気筒直噴ターボ・エンジンなど、ジャガー・ランドローバー・グループが誇る最新エンジンを搭載することになると目されているようだ。

 これまで、セグメントDプレミアムのカテゴリーで絶対的な優位性を謳歌してきたドイツ勢に対し、アメリカからはキャデラック「ATS」、日本からはレクサスの新型「IS」という強力なライバルが続々と登場している。

 そして英国の名門ジャガーも再参入を図るということで、このカテゴリーは久々に群雄割拠の様相を呈し始めているようなのである。

武田公実