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参加型レースの「N-ONE OWNER'S CUP」に“出た、見た、通った”?

2017年4月22日 開催

 本田技研工業の軽自動車「N-ONE」は、軽自動車としてはユニークなスタイリングにDOHCエンジンにターボを加えたトルクフルなパワーユニットを採用して、ユーティリティカーとしての軽自動車と走りを高度に組み合わせた車両として人気の自動車だ。そのN-ONEを利用したワンメイクレースが「N-ONE OWNER'S CUP」で、全国のサーキットで全14戦で行なわれている。プロが本気で参加するレースというよりは、N-ONEのオーナーが余暇として参加する、そんな参加型のレースになっている。

 そのN-ONE OWNER'S CUPに参戦しているのが、89号車 ケンウッドモデューロN-ONE。弊誌「Car Watch」のロゴも描かれている車両になる。今回、その89号車 ケンウッドモデューロN-ONEが、スーパーフォーミュラの開幕戦でもある「SUZUKA 2&4 RACE」で行なわれるN-ONE OWNER'S CUPに出走するというので、その模様を取材してきた。

低コストで楽しむことができる参加型レース「N-ONE OWNER'S CUP」

 今年Car Watchロゴも描かれた89号車 ケンウッドモデューロN-ONEが参戦しているのは、N-ONE OWNER'S CUP。その名のとおり、本田技研工業から発売されている軽自動車N-ONEを利用したワンメイクレースだ。一口にワンメイクレースと言っても、本気でプロが走るようなワンメイクレースもあれば、アマチュアのドライバーが趣味で走るような参加型のワンメイクレースまで、様々な形のレースがある。その中でも、N-ONE OWNER'S CUPは、純粋な参加型のワンメイクレースで、サンデードライバーならぬ、サンデーレーサーのためのレースとなっている。

 N-ONE OWNER'S CUPのWebサイト(http://www.n-one-owners-cup.jp/)によれば、N-ONE OWNER'S CUPに参戦できる車両は「DBA-JG1」という型番のN-ONE。ベース車となるのはFF(フロントエンジンフロント駆動)とターボモデルであればグレードは問わない。車両の基本スペックは最高出力47kW(64PS)/6000rpm、最大トルク104Nm/2600rpmを発生する直列3気筒DOHC 0.66リッターターボエンジンに、トランスミッションはCVTとなる。

 N-ONE OWNER'S CUPのレギュレーションによれば、基本的には純正仕様のままに、指定のロールゲージ、バケットシート、牽引フックなど指定部品を取り付ければ参戦することができる。エンジンなどに手を入れることはできないが、サスペンション、マフラーなどは認定部品に交換することが可能で、ブレーキパッド、ブレーキホース、ホイール/ナット、点火プラグなどは保安基準に適合している限りは自由に交換できる。タイヤは純正のままでも可能だが、指定されている低燃費タイヤ(いわゆるエコタイヤ)に変更は可能で、その場合には指定サイズである必要がある。

 参加するだけでも楽しそうなイベントであるが、表彰台を目指してレースに勝ちにいこうとした場合、前出のN-ONE OWNER'S CUPのWebサイトの“よくある質問Q&A”によれば、車両費以外に競争力がある車両を作るには工賃込みで約110万円の予算が必要とのこと。それ以外に各サーキットへの交通費(保安基準に準拠しているので自走が可能)とエントリーフィー、ガソリン代、保険、メンテナンス料などが別途かかることになる。

 レースは全部で14戦あり、シリーズ戦としてのポイント制度もあるが、日本全国を転戦するのが難しいというエントラントにも配慮されており、年間エントリーの必要は無くレース毎にエントリーが可能。かつ、ポイントが多かった上位3レースが有効ポイントとしてカウントされ、それと特別レースとして行なわれる最終戦を合算したポイントで順位が決定されるとなっており、緩く参戦してもシリーズ上位が争えるようにと配慮されている。

ホンダのディーラーや社員も参加しているレース

レースを前に駐車場に並ぶ参加車両

 このため、参戦しているドライバーもプロではなく、サンデードライバーならぬサンデーレーサー(より厳密に言えば、今回のN-ONE OWNER'S CUPは土曜日に行なわれているのでサタデードライバー)で、皆さん普段仕事をお持ちで、趣味でレースにでているそうした選手が参加している(なお、N-ONE OWNER'S CUPに参戦するにはJAFのA級ライセンスを取得している必要がある)。実際、今回のN-ONE OWNER'S CUPには、ホンダの社員やディーラーの関係者なども多数参加していた。

ホンダOBの峯川氏と記念撮影
本田技術研究所の有志メンバーも参加
Car Watchのロゴシールも貼られている
89号車 ケンウッドモデューロN-ONEに貼られた水村リアさんの「L.MIZUMURA」のマーク。もう1人の「K.SABASHI」とは?

 89号車 ケンウッドモデューロN-ONEの正ドライバーを務めているのが、水村リアさん。レースクィーン/タレントとして活動中の水村さんは、ホンダアクセスのレースクィーンを務める傍らで、レース関連イベントでのMCを務めるなど、マルチに活動されている。今年からN-ONE OWNER'S CUPに89号車のドライバーとして参戦を開始したという経緯だ。

鈴鹿では予選落ちも出るほど盛況のN-ONE OWNER'S CUP。89号車はギリギリオッケーで予選落ちを回避

スーパーフォーミュラの主催者であるJRP(日本レースプロモーション)のスタッフジャンパーを着用していた水村リアさん

 しかし、鈴鹿サーキットに到着してみると、水村さんとは、なぜかプレスルームで再会。あれ、レーシングスーツじゃなくて、スーパーフォーミュラの主催者であるJRP(日本レースプロモーション)のスタッフジャンパーを着て座っている……。JRPのお仕事もされている水村さんは、今回のグランドスタンド裏に設置されているイベントステージで行なわれるイベントでMCを務めるという。

 で、我らが89号車 ケンウッドモデューロN-ONEのピットに行ってみると、ドライバーとしていたのがホンダ車を中心とした自動車情報誌「Honda Style」の佐橋健太郎編集長。筆者も何度か取材でご一緒させていただいた佐橋編集長、89号車のドライバーを今回は佐橋選手が務めることになったというのだ。

89号車 ケンウッドモデューロN-ONEのステアリングを握る自動車情報誌「Honda Style」の佐橋健太郎編集長

 その佐橋選手、予選前に話しを聞きに行くと、何やら自信なさげ。なぜかときくと、まわりのクルマはサスペンションを交換してローダウンを決めているのに、89号車は純正パーツで走るというコンセプトであるため、純正と同じ車高で他のクルマと比較すると確かに車高が高いのがぱっと見で分かるほど。N-ONEそのものは写真で見ても分かるとおり、背が高いクルマなので、確かにこれだとサーキットのコースでは不利であることは否めないだろう。しかし、そのハンデをモノともせず上位に来てこそ、"伝説のドライバー”。レースとは敗者の“道具が……”という言い訳は聞いてもらえないスポーツ、文字どおり“勝てばいいんだよ”こそがレースの真理だ。ということで、佐橋選手の言い訳は聞き流して、頑張ってもらうしかない。

他の車両と比較してロールが大きい89号車 ケンウッドモデューロN-ONE

 最大の難関は、今回は50台のエントリーがあったのだが、決勝レースに進めるのは48台。つまり、2台が予選落ちとなってしまうのだ。実はこの前日に行なわれた練習走行で佐橋選手は出走42台中41位。つまり、普通に予選が行なわれれば予選落ちギリギリということころだったのだ(エントリー50台なのに42台しか出走していないのは、平日の金曜日の練習走行には参加しないドライバーは8人いたため、予選は50台で行なわれる予定)。

 そうした状況で迎えた予選、なんとラッキーなことに1台がエントリーを取り下げて、49台での予選、つまり1台予選タイムを上回れば予選通過だ!これは追い風かと思って観戦していると、佐橋選手は、予選中45位あたりをずっと走行。これはこのまま行けば余裕で予選通過か思っていた最終周、まわりが一挙にタイムアップ。徐々に46位、47位……と順位が下がっていく。ドキドキしながら見ていると、結局48位で無事下げ止まり、ギリギリで予選を通過した。“すごい、もしリバースグリッドならポールだ!”と、有りもないルールを妄想して佐橋選手の頑張りを祝ったのだった……。

89号車 ケンウッドモデューロN-ONEの勇姿

 そしてレースでは、グリッド最後尾の48位からスタート、そしてゴールしたときには見事に45位に上がっていたのだ。前のクルマに確実について行き、抜けこそしなかったがバトルになっていた。あれ、抜けないのにどうして順位がと思ったかもしれないが、それでも順位が上がったのは上位がクラッシュしたりコースアウトしたクルマが3台あったため……。

 今回のハイライトは、辛くも予選落ちを文字どおり“ギリギリ”で免れたこと。それに尽きるレースだったが、予選ではトップと12秒差だったベストタイムの差が、決勝では11.1秒差に縮まっており、この点では確実に進化。初めてのレースでちゃんと予選も通って前について行き、かつ予選よりも上位との差を縮めたのはいいことで、次回につながる走りができたのではないだろうか。

前のクルマを抜けない、無念……。

提供:ホンダアクセス

笠原一輝

Photo:安田 剛