野村ケンジが「ストラーダ R500シリーズ」をレビュー
レコーディングエンジニアとのコラボで誕生した「音の匠」
カーナビの次元を超えた驚きの高音質技術とは?
パナソニック製のカーナビゲーション「ストラーダ」といえば、わかりやすいルート案内や取扱説明書いらずの直感的な操作性など、カーナビ本来の実力の高さに定評があるが、同時に、AV機能の充実度に関しても好評を博している。高性能の4アンテナ×4チューナーや家庭用テレビの技術を投入した「PEAKSプロセッサー」、白色LEDバックライトなどを採用することで、車内とは思えないクリアで見やすい映像表現を実現。地デジ放送やDVDなどの映像コンテンツを存分に楽しめるようになっているのだ。
その一方で、音質にもかなり注力しているのが「ストラーダ」ならではの特徴だ。iPod/iPhone内の音楽ファイルを高音質に再生できるデジタル接続に対応しているほか、スタジオモニターのサウンドを車内で再現する「音の匠」と呼ばれるスペシャルチューニングが施されている。そんな全方位万能選手的なキャラクターを持つ「ストラーダ」だが、そのなかでも、特に音質について大きなアドバンテージを持っている。今回はリファレンスモデルに位置づけされているR500シリーズのレビューをお届けしよう。
機能性・操作性ともに◎のフラッグシップモデル
「ストラーダ」には、車種別デザインのLシリーズ、ベーシックモデルのEシリーズ、スタンダードモデルのR300シリーズ、そしてフラッグシップのR500シリーズという豊富なラインナップが用意されている。どのモデルも高機能で使い勝手がよいのが魅力だが、機能性とAVクオリティの両面において、フラッグシップと呼ぶにふさわしい実力の高さをアピールしているのがR500シリーズだ。
たとえば、ナビゲーション機能としては、16GBという十分な地図/検索情報を確保するとともに、その膨大なデータを活かした「ストラーダチューン」を採用。好みの道路を優先するルートチューンや、地図画面のカラーデザインや文字サイズを変更できるマップチューンなどにより、より見やすく操作しやすいナビに仕上げられている。
ちなみに、ルート案内に関しては、難交差点拡大図や交差点拡大図、ハイウェイ入口案内など、分岐が分かりにくい部分はかなり細やかにフォローされているのは歴代「ストラーダ」の伝統だが、R500シリーズではよりわかりやすい画面情報に進化した様子。さらに、駐車場マップも用意されており、駐車場内にいても通路や料金所、エレベータの位置が把握できるようになっている。もちろん、駐車場内の詳細データはあくまでも収録されている立体駐車場に限られるが、とても重宝する情報なのは確かだ。
また、操作性に関しては、最新トレンドであるスマホのような操作性のモーションコントロールにも対応。スワイプイン操作によってオーディオ画面への切り替えや渋滞情報の表示、フリック操作によって地図画面のままオーディオ再生の曲送りやボリューム調整が行えるなど、操作性がさらに向上している。
地図画面の見やすさと同時に、AVメディアをとことん楽しめる見やすく美しい映像を実現しているのも、R500シリーズならではの特徴といえるだろう。地デジチューナーは、「ストラーダ」ではすっかりお馴染みとなった4アンテナ×4チューナータイプを搭載し、安定した受信状況を確保している。また、映像エンジンには、薄型テレビの技術を活かした高画質回路「PEAKSプロセッサー」を採用。バックライトの透過率を高めた静電タッチ式の液晶クリアパネルや、白色LEDバックライトなどを組み合わせることで、車内とは思えないクリアで見やすい映像表現を実現している。HDMI端子も搭載されており、ハイビジョン映像やスマートフォンの画面を映し出すことができるのも、R500シリーズの特徴といえる。
ミキサーズ・ラボとのコラボで誕生した「音の匠」
そして、やはり注目したいのが、サウンドクオリティ。2008年から「ストラーダ」に採用されている「音の匠」は、日本トップクラスのサウンドエンジニア集団「ミキサーズ・ラボ」とパナソニックエンジニアチームのコラボレーションによって生み出されたもの。今回は開発担当者である仲野清裕さんに話を伺った。
“車内でもリアリティの高い良質なサウンドを”というテーマからスタートしたそうだが、その最新バージョンであるR500シリーズでは、CD音源でスタジオモニターに迫る高音質を実現させるという、さらなる高みが追求されている。
まず、ハードウェア面では、基板構造や音声信号専用の配線パターン、カスタムコンデンサや専用パワーアンプなど素材の見直しを徹底的に行っている。なかでも、「ストラーダ」初となるバーブラウンブランド32bit DACの採用は見逃せない。このD/Aコンバーターは、圧倒的なダイナミックレンジSN:112dBを実現。そして、16bitのCDに刻まれた微小情報まで、よりノイズの影響を受けずに正確に取り出す効果をもたらしている。また、圧倒的なダイナミックレンジにより、既存モデルに対して約10dBのノイズレベル低減を実現しているのだ。-10dBといえば、音圧でいうと3分の1以下。これだけ変われば、音の印象もかなり異なってくるはず。6年にわたり進化を続けた熟成技術にあって、ここまで大きなステップアップを果たしたことに驚くばかりだ。
ちなみに、「音の匠」には3つのモードが用意されている。「音の匠」ならではの上質サウンドを最大限に満喫できる「爽快ドライブTUNE」、車内での会話を邪魔せず上質なBGMとして音楽を楽しむことができる「いい音でスムーズトーク」、そしてiPodなどの圧縮音源をメリハリある迫力サウンドで再生する「快適メモリーミュージック」という3タイプ。これは、車内で音楽を存分に楽しんで欲しいという、「ストラーダ」ならではの提案だからだ。
クルマには、1人で乗ることもあれば、家族そろって乗ることもある。再生する音源も、名盤CDだけでなく、iPhoneやiPodなども多く利用されるだろう。そんなクルマならではの、さまざまなシチュエーションにマッチする、クルマならではの音響的なデメリットを高度なイコライジング技術で解消した。しかも本物の音「スタジオマスターサウンド」を知っているミキサーズ・ラボの監修によって、リアルかつ楽しさあふれる上質サウンドを提供してくれるのが、この「音の匠」なのだ。
なお、Rシリーズは車種専用ではない汎用モデルのため、車種ごとにベストなイコライジング設定が異なる、という問題がある。それを解消しつつ、好みのサウンドに仕上げられるように「13バンドEQ」を用意。50Hz~12.5kHzまでの間を、-10dB~+10dBまでの1dBステップで調整可能となっている。こちら、単なる13バンドイコライザーのようにも感じるが、画面をよく見ると周波数ポイントが一般的な数値とは微妙に異なっていたり、オリジナリティあふれたセッティングとなっている。このあたりも、「音の匠」ならではのノウハウが伺える部分だ。しかも、「音の匠」をベースにして自分のクルマに合うように、この「13バンドEQ」を使って微調整することが可能なのだ。ちなみに、セッティングした数値は5タイプまで登録できる。
本格的なオーディオシステムに引けを取らない高音質
さて、実際のサウンドはいかがなものだろう。最新モデルR500シリーズということで、かなり厳しい基準で試聴に望んだのだが、その期待を軽々と超える、素晴らしいサウンドを聴かせてくれたのだ。
SN比、特にノイズレベルの低さは、音質において絶対的な価値を発揮してくれるのだが、これほどとは! カーナビの音とは思えない、まるで自宅のオーディオシステムを聴いているかのような、ニュアンス表現が繊細で、かつ空間的な広がり感のある、上質なサウンドを堪能させてくれるのだ。試聴した今井美樹の歌声は、まるでライブハウス最前列にいるかのようなリアルさ。丁寧な歌い方をしている様子が如実に感じられるし、柔らかな付帯音を持つ、彼女ならではの心地よい歌声をとことん堪能できる。一方でピアノの音は、倍音成分の整いがよい上、タッチのニュアンスまで細かく伝わってくるため、ピアニストのテクニックだけでなく、感情表現までもがしっかり伝わってくるかのようだ。こと音色的なリアルさについては、特筆ものだ。そのため、クラシックやジャズなど、アコースティック楽器との相性は抜群。まさに「スタジオマスターサウンド」を目指して作り上げられた「音の匠」ならではの、真骨頂といえるだろう。
このようにR500シリーズは、「ストラーダ」の上級モデルという肩書きにふさわしい、素晴らしいサウンドクオリティを持ち合わせている。音質に関しては、歴代モデルに対して遜色ないばかりか、一歩も二歩も進化した、格別な存在といえる。その一方で、映像コンテンツも車内とは思えないクオリティで楽しめ、カーナビゲーション機能も操作しやすい。専用プレーヤーの音質とカーナビならではの便利さが、見事に両立されているのだ。ここまでの万能選手は、数ある市販カーナビのなかでも、そうそうないはず。特に、音楽を車内でも存分に楽しみたい、という人には、とても有力な候補となるだろう。
(野村ケンジ)
URL
- パナソニック
- http://panasonic.co.jp
- ストラーダ Rシリーズ
- http://panasonic.jp/car/navi/products/R500/lineup.html