スマートフォン、略してスマホ。ナウいヤングは常にスマホを持ち歩き「見る、聴く、調べる」の全てをスマホでこなす。確かに最新のスマホは、総合的な情報端末として実によくできている。携帯電話としてのベーシックな機能に加え、ゲームを含む多彩なアプリ、地図、音声に対応したサーチ機能などなど。私のようなおっさんは情報端末と言われれば真っ先に「パソコン」と答える訳だが、そのポジションはすでにスマホへと移行したらしい。

なぜに私がスマホの話をしているかというと、実はCar Watchから依頼があったのだ。例によって例のごとく着信、スマホの画面には「Car Watch」の文字。

話を聞いてみると私にとってはサイバーナビで馴染み深いパイオニアから、ディスプレイオーディオの新機種「FH-9300DVS」がリリースされるという。この新製品を実際に使ってみないか、そういう話だったのだ。一瞬、頭の中で「ディスプレイオーディオ?」と疑問符が立ったのだが、ネット検索で大枠を理解する。

パイオニアのディスプレイオーディオ「FH-9300DVS」。ナビのように見えるがあくまでオーディオである

ディスプレイオーディオというのはディスプレイを備えたマルチメディアユニットの総称、言うなれば最近のカーナビゲーションシステムからカーナビを省略したものということだ。前に発売されたパイオニアのアプリユニットはGPSなどナビに必要な機能を搭載していた。だが、「FH-9300DVS」はそのあたりの割り切りがしっかりしている。カーナビに関する機能は「FH-9300DVS」本体側に一切搭載されていない。

だが「FH-9300DVS」はiPhoneやAndroidスマホと高いレベルで連携することができる。具体的に言うとiPhone(iOS)なら「Apple CarPlay」、Androidスマホなら「Android Auto」である。両者ともマップ機能を利用できるため、目的地を設定してルート表示を行うことができる。ということはスマホとの連動によって「FH-9300DVS」をカーナビのように利用することが可能なのだ。

「Apple CarPlay」や「Android Auto」も興味深いし、サイバーナビ派の私としても「FH-9300DVS」自体が気になる存在だ。そんな訳で「FH-9300DVS」搭載のデモカーが用意できたと聞き、Car Watch編集部に出向いた私を待っていたのは異なる視点を持つ人たちとの座談会であった。

カーナビへのニーズは三者三様

FH-9300DVS(以下、FH)はディスプレイオーディオであってカーナビではない。そのディスプレイオーディオの役割は高音質なオーディオの再生であり、フルHDに対応した動画の再生なのだが、この製品の場合はそこにハイレベルなスマホとの連携が入ってくる。だが、そこはそれカーナビ機能を本体に持っていないため、一般的なカーナビと比べて価格は驚くほどリーズナブルなものとなっている。

結果として「カーナビは欲しいけど、値段がちょっとなあ……」というドライバーへ大いにアピールする製品となっている。さらにFHがアピールするのはスマホが軸のドライバーたち、「クルマは運転するけどナビだとかはスマホに任せる」という層だ。さらにもう一歩踏み込んで言うと「Apple CarPlayやAndroid Autoといったスマホの先進的な機能を積極的に活用してみたい」、スマホのエンスジーアストにも魅力的な製品と言える。

さて、この幅広い層にアピールするFHを私のようなサイバーナビ命、カーナビと言ったらサイバーナビな男だけで語っていいものか? このあたりはCar Watch編集部も危機感を持ったらしく、この使い勝手をさまざまな視点から俯瞰すべく助っ人を呼んだとのこと。そして始まったのが実機を触る前の座談会である。

まずスマホのプロとして駆り出されたのがケータイ Watch編集部の副編集長、関口 聖さん。携帯電話、スマホのことならお任せの人であり、もちろんApple CarPlayやAndroid Autoに関しても取材などをされている。そしてもうお一人はライトユーザー目線が必要だということで駆り出された山と溪谷社、広告部の中山 恵理子さんである。山と溪谷社の社員はおしなべて登山大好き人間だと聞いていたが、やはり中山さんの趣味も登山。移動にはクルマを使うことも多いのだが、カーナビ自体はあまり深く気にしたことがないとのこと。

山と溪谷社 広告部 中山恵理子さん、趣味はもちろん登山

ケータイ Watch編集部 副編集長 関口聖さん、ケータイのプロ

サイバーナビが好きというだけで呼ばれたおっさん

そこにサイバーナビ大好き男の私が加わって話は進む。まずは中山さんのクルマとカーナビ事情に関して。

中山「クルマを主に使うのは週末ですね。街乗りとかもありますけど、趣味が登山なので遠乗りもします。クルマもカーナビも、ごく普通の使い方だと思います。カーナビは純正でクルマと一緒に最低限のものをということで、10万円ぐらいだったと思います。とりあえずカーナビはないと、そんなところです」

高橋「ちなみにクルマとカーナビを別に買おうとか、あのカーナビがすごく面白そうだから欲しいなとか、そういった感覚はありました?」

中山「機械にそんなに詳しくないので、一緒に買ってしまった方が気が楽なので純正という流れですね」

一方、携帯のエキスパート、関口さんのクルマ事情はというと……。

関口「使い方やインターフェイスもよく分かっていないです。車で出かけるときに、じゃあ音楽を聴こうといっても基本的に操作が分からない(笑)。CDとかも別に持ってないし、ほかの音源を持っているわけでもないので、何かを聴きたいとなるとラジオぐらいしかない。我ながら貧しいカーライフを送っていたのかなと、ちょっと思っちゃったんですけど(笑)」

高橋「スマホナビでよく使われているのは?」

関口「Yahoo!カーナビですね。Bluetoothのリモコン(ナビうま ハンドルリモコン)は使わずに、低価格なスマホホルダーを買って、エアコンの口に付けるとかして使っています」

高橋「ある意味、機動性は高いという感じですか」

関口「そうですね、すごく前向きな捉え方をすると(笑)。ただ、それも1人で運転する時にはなかなか操作できないので、助手席に子供に座ってもらって触ってもらって、一緒にガイドしてもらう。ただ、途中でスマホがとても熱くなって“パパ、これいいの? これ大丈夫なの?”と言われたことは何回かあります。これの便利なところは渋滞情報とか、スマホですぐ情報を取り出せるところでしょうか」

高橋「ところで中山さんが山へ行かれる際、あくまでクルマは移動のためのものだと思うんですけど、登山する山までの移動時間、それこそ山は日本全国にありますけれど、週末ちょっと行こうという場合は平均どれくらいの時間がかかるんでしょうか」

中山「3~4時間の距離が多いですが、6時間とかもあります。首都圏からだと群馬とか八ヶ岳なんかが3~4時間。この辺りはよくクルマで行きますが、北アルプス北部あたりになってくると迷ったりもするので、カーナビのお世話になっています」

高橋「3~4時間ってやっぱり長いじゃないですか。ぜひFHを入れていただいて、音楽だとかを楽しんでいただければ」

中山「そうですね。時間はもう、ありあまるほどあるんですよ。例えば日帰りの時は前夜に出て行って、2人とかならテントも使わずにクルマで寝ちゃったり。で、翌朝登って降りて、その日に帰ってくるみたいなのもあります。車中泊の時にも活用ができそうな気がします」

高橋「関口さんはクルマを現在は所有されていないということですが、今後クルマを買おうとなった時にカーナビはどうされます? もちろんカーナビを搭載するという選択肢はあると思うのですが、もうスマホでいいかなという話になるのでしょうか?」

関口「そうですね、買うときには悩むと思います。やっぱりクルマと操作体系として一体化されているというのは安心できるというか、品質とかもそうですし。スマホはスマホで便利な面がある一方で、突然電源が落ちたりとかバッテリーがなくなったりとか、アプリも不具合を起こしたりという面も知ってはいるつもりなので」

高橋「ちなみにケータイ Watch的には、Apple CarPlayとかAndroid Autoってどうなんでしょうか? 読者の反応や関心の度合いも含めて」

関口「最近の感じで言うと、そのあたりよりも先のところ、コネクテッドカーとかAIとか、そのあたりのスマホとの連携みたいなところは読まれていると思っています。スマホは将来的にもハブになる存在だと思うので、Apple CarPlayとかAndroid Autoが使える環境にあると例えば1~2年後に、自動運転まではいかなくても何かこう、新しめの機能がすぐ使えるのかなという期待はあります」

高橋「この製品の優れているところは、スマホの方がどんどん進化してもそれに従ってくれるところにもあると思うんですね。そうすると音声認識もそうですし、ナビ機能に関してどんどん進化するとか。ならばドライバーは車載器はこれを使い続けて、スマホをどんどん新しくしていきましょうと。スマホの処理能力もどんどん上がってきていますし、そういった意味ではこのFH、長く使えるというメリットもあるのかなという気はしているんです」

スマホとカーナビ、そしてマルチメディア。話は尽きない訳だが、そろそろ実際にFHを使ってみましょうというところで座談会は終了。驚いたというほとでもないのだが、すでにスマホを活用している中山さんが、今現在も音楽をFMトランスミッターで飛ばしているという話には苦笑い。中山さん、せめてBluetoothにしてください。でもなあ、使い慣れたそれ(FMトランスミッター)で、パッと音楽が楽しめるならそれでもいいかのなあと思ったり思わなかったり……。

さて、私はサイバーナビ大好き男なのだが、実はこのサイバーナビを勧めづらいシチュエーションがある。もちろん人それぞれニーズが異なっており、そのニーズに合わなければ勧めようがないのというのはある。例えばナビゲーションなどは「スマホでいいや」と言ってる人に「サイバーナビがいいんだよ。ロードクリエイターがあって」とか、「ヘッドアップディスプレイが昔あったんだけど今なくなっちゃってすごい悲しい」とか、そういう話をしても伝わらない。

その点、この製品ならば「スマホのナビでいいよ」という時、実に勧めやすいのである。「あと5万円(ぐらい)支払うだけで音楽をいい音で聴けて、スマホと連携ができて大きなディスプレイで表示できて充電もできるしバックモニターも使えるよ」と、これで大方のスマホ愛用者は落とせるのではないだろうか?

座談会においては私が誘導するような質問をしてしまい、申し訳ないやら恥ずかしいやらではあるのだが、このFHで強調したいことは主に3つ。まず何よりApple CarPlayやAndroid Autoなどスマホとの高い連携性。そして多彩なメディア、フォーマットに対応することで実現するマルチメディア機能。最後はサイバーナビに匹敵する品質のサウンドクオリティだ。

もちろん細かい特長はほかにもいろいろとある。バックモニターの存在もそうだが、付属のリモコン(オプションでステアリングリモコンと連携させるハーネスも用意されている)による操作などなど。ちなみにDVDドライブやFM/AMラジオも内蔵しているし、AV入力もある。オプションのリアモニターを接続すれば後部座席で映画を楽しむこともできるし、本体前面下部にある操作ボタンのイルミネーションを設定できたりもする。

ソース切り替えのメニュー。文字が大きい!

ラジオ機能は標準搭載

画面下部、操作ボタンの色に注目。イルミネーション効果を設定可能

が、しかし。やはり気になるのはApple CarPlayとAndroid Autoによるスマホとの連携。そのあたりを実機で確認すべく、座談会参加メンバーの仲間たちはデモカーへと向かったのであった。

実際にFH-9300DVSを体験してみる

参加者それぞれのスマホやカーナビに対する考え方を把握したところで、実際にFHを体験してみることにする。用意されていたのはFH-9300DVSを搭載したパイオニアのデモカー。中央にある7V型ワイドの液晶ディスプレイだけを見ると、まるでいつものカーナビが搭載されているかのように見える。だがこれはディスプレイオーディオなのだ。

FHの場合、もちろんそれ単独でカーオーディオとして使うこともできるのだが、この製品らしい使い方をするにはまずスマホとの接続である。Bluetoothでも接続可能だが、Apple CarPlayやAndroid Autoといった機能を活用するならUSB経由で有線接続がマスト。ちなみにUSB給電は1.5Aとなっており、iPhoneやiPadも余裕で充電できる。付属するUSBケーブルは1.5mで端子はメスとなっている。このためスマホで使っているUSBケーブル(オス端子)を合わせて使うことになる。

携帯を接続するとFHのホーム画面にiPhoneなら「Apple CarPlay」ボタン、Androidスマホなら「Android Auto」ボタンが表示される。それらをタッチするとスマホ端末と連動し、それぞれの機能を活用できるようになる。なお、Android Autoはあらかじめスマホ側に専用アプリをインストールしておく必要がある(最新バージョンのAndroidは分からないのだが、私のXperiaは要インストールだった)。

iPhoneを接続するとFHのホーム画面に「Apple CarPlay」のアイコンが表示される

Androidスマホの場合は「Android Auto」のアイコンとなる

Android Autoのメッセージ表示

FH側で操作中はこのような画面になる

ホーム画面はアイコンの配置を含めてカスタマイズ可能。写っている謎の物体は「指」

Apple CarPlayとAndroid Auto、似て非なるものであり、特に見た目はまったく異なるのだが、できることは似ている。両者とも音声などで目的地を検索、マップ上に表示してルート検索を行い、ナビゲーションしてくれる。スマホ単体でもできることだが、FHの場合は聴きやすい音声と見やすい大画面という違いがある。そのほか別体式のハンズフリーマイクもあって、通話やメッセージのやり取り、音楽の再生、音声検索が利用できる。音声検索は車載されているデバイスにとって必須と言えるだろう。なにせ画面を注視して操作する訳にはいかないのだから。

Siriといつものように会話感覚で情報検索

「OK Google」はAndroid Autoの場合

さてまずルート検索とナビゲーションに関してだが、正直なかなかのものだと思う。シンプルな表示と音声指示ではあるが、初期のスマホナビで見られたような見当外れや謎案内はほとんど発生しなかった。「たぶんこう行くだろうな」というドライバーの考えにほぼ合ったルートで案内が行われたのは、さすが進化の速いスマホである。ただしGPS信号を受信できないトンネルなどに入るといったんルートをロストするという現象は発生した。実は当初、Apple CarPlayの方はどうなんだろうかという気持ちはあった(初期マップのトラブルを知っている人間としては)のだが、どうして素晴らしい出来だと思う。

Apple CarPlayのマップ表示。2D/3D表示を切り替えられるが……3Dはちょっと見づらいかも

Apple CarPlayの場合、iPhone側がこのような表示となる。こうなるとクルマ用のiPhoneホルダーが欲しくなるなあ

近隣施設の検索はワンタッチ(Apple CarPlay)

検索結果を目的地に設定し、いざ給油の旅へ

Androidスマホを使っている人間には見慣れたGoogleマップ

もちろんGoogleマップでも同様のことが行える

後はスタンド目指してゴー!

Googleマップのナビゲーションはこなれた感じで好印象

思わず「これは便利だ」と唸ったのが音楽の再生に関わる部分。当たり前と言えばそのとおりなのだが、iTunesからApple Music、Google Paly Music、スマホにインストールしてあればAmazon Music、Spotifyまで自由に使える。もう音源を自分で用意する時代は終わったかのような印象だ。また、自分で用意した音源に関してもストレージとして認識できるものであれば、実にさまざまなファイル形式を再生できる。

iTunesからAmazon Music、Spotifyまで自由自在。音源は無限にあると言っていいかも

Android Autoでもこの通り

ちなみに本体にはDVDドライブを搭載しており、DVD-R/RWの再生に対応しているほか、なんとCD-R/RWにも対応している(ドライブの仕様としては当然なのだが、それをあえて表記してくるところがマニアック(いい意味で))。動画に関して言えばMPEG4からMPEG2、Divx、H.264やH.263にも対応するという充実っぷり。しかもフルHD対応、1920×1080なのだから長距離ドライブで後部座席の子供たちが退屈した時など、強力な助っ人になってくれる。

ディスクメディアの出し入れは液晶をオープン状態にして行う

サウンドクオリティという面でFHはどうだろうか? サウンドに関して言えば実のところ、私は最初から「よい音を聴かせてくれる」と思っていた。というのもパイオニア自ら「現行サイバーナビに迫るオーディオ能力」としているからだ。また、そこはそれ何と言ってもパイオニア、カロッツェリアの血を受け継ぐオーディオだ。よいサウンドが出るのは当たり前、普通だったら逆に驚きである。

実際、FHのサウンドクオリティはサイバーナビに匹敵した。これは私が体験したことだが、ノーマルのスピーカーシステムでもサイバーナビを搭載するだけでよい音になるのだが、今回のデモカーのようにスピーカーシステムをチューニングするとさらによい音を楽しめる。まあ、個人的なお勧めとしてはまずスピーカーの交換、そしてサブウーファーの追加、それからアンプという流れなのだが。

また、オーディオ性能の高さを物語る機能の一つとして、どうしても紹介しておきたいのがタイムアライメントの設定だ。カロッツェリアのオーディオシステムやサイバーナビを使っている人ならご存じかと思うが、このタイムアライメント、車内の各スピーカーとリスニングポイントの距離を設定して音像を最適化するものだ。さらにプリセットまで用意されたグラフィックイコライザーまであり、カーオーディオにうるさい人でも納得のレベルにある。

タイムアライメントの設定。ドライバーをターゲットにする場合でも、左ハンドル、右ハンドル(助手席、後部座席をターゲットにしてもいい)、思いのまま。スピーカーからの距離で細かく設定することもできる

もちろん全席対応での最適化もあり

プリセットも用意されているグラフィックイコライザー。自由に設定することもできる

私はソニーのハイレゾサウンド対応のウォークマン、NW-A17をミュージックプレイヤーとして愛用している。そしてその中に同じアーティストの同じアルバムで、ノーマル音源版とハイレゾ音源版を入れてあるのだ。そのNW-A17をUSB経由で接続したところ、サウンドソースとして認識できたのでノーマルとハイレゾを聴き比べてみた。するとその違いは明らか、同乗者もしっかり違いを認識できた。残念ながらハイレゾ音源の再生はダウンサンプリングで行われ、FLAC音源であっても44.1kHz/16bitとなる。それでもハイレゾ音源を持ち込む価値があると感じた。

私物のハイレゾウォークマン、NW-A17も音源として認識した。また音楽や動画の入ったポータブルHDDを直接つなぐこともできると言う

さて、そろそろまとめに入ろう。パイオニアのFH、すなわちFH-9300DVSはディスプレイオーディオというジャンルに属している。シンプルに言うならマルチメディアデバイスに見やすい大型ディスプレイを追加したものであり、おっさん風に言うと「マルチメディアで多機能なカーステ(あ、古すぎた)」となるのかも。だが、そこにiPhoneやAndroid、すなわちスマホが加わるとどうなるか? それはマルチメディア対応のインフォメーションセンターとなるのだ。

音声認識で目的地や周辺施設を検索し、必要に応じてそこへのナビゲーションを行う。携帯電話のハンズフリー通話はもちろんのこと、受信したメッセージや検索結果の読み上げ、そして上質なオーディオ再生、フルHDに対応した動画再生。さらに言えば車載器がそのままであっても、スマホのアプリが進化すれば、スマホ自体が進化すればそれはFHの進化となるのだ。

クルマを運転しながら、スマホといつもどおりの感覚で付き合うことができる。マルチメディア機能でクルマの中をもっと楽しくしてくれる。「いや、やっぱり本格的なカーナビが欲しい」というなら、パイオニアにはサイバーナビがある。「ナビはいいからもっと本格的なオーディオ機能を」というなら、パイオニアにはハイエンドオーディオをはじめとした各種オーディオがある。そして「スマホを軸にクルマの中でも活用したい」という人のために、FHという選択肢が示された。選ぶのはもちろんあなたの自由。だけどね、最後の最後に下世話なことを書くけど……FH-9300DVS、かなりお安いですよ。リアモニターを追加して専門ショップに取り付けをお願いしても……悪くないお値段なんですよ……。

最後になったが座談会、そして実機テストにもご参加いただいた山と溪谷社の中山さん、そしてケータイ Watchの関口さんにこの場を借りてお礼申し上げます。お二方にもコメントをいただいたのでご紹介いたします。

ケータイ Watch編集部 関口 聖

クルマを所有せず、普段はレンタカーやカーシェアリングという筆者にとって、「カーナビ」は微妙な距離感のあるアイテムだ。

日頃、クルマに乗らないからこそ初めて訪れるような地域への案内役としては当然欠かせない。音声で案内してくれるので、画面を見続けなくてもいいし、運転の合間にも目にしやすいポジションに設置されている。当たり前のようだがバッテリーのことを心配せずに使えるのも運転に集中できる環境をもたらしてくれる。

その一方で、たとえばクルマを借りるたび、カーナビのメーカーが異なって、操作方法がわからなくなる。だから目的までの道案内だけに使うので精一杯。音楽の聴き方を探し出すのも億劫になって備えつけのラジオで済ませてしまう。自宅など、よく利用するスポットも登録されていない。

ある夏、家族旅行で、クルマを借りて出かけたら渋滞にハマった。ここで何十分、待ちぼうけになるのか……とうんざりした気持ちになる中で、ふと、スマートフォンのカーナビアプリのことを思い出した。そういえば最近のカーナビアプリは、無料かつVICS対応のものもあれば、ユーザー同士の走行情報を使ったいわゆるプローブのリアルタイム情報を使うものもある。

普段使いのスマートフォンだから、音楽や動画はいつものサービスがあるし、操作に迷うことはない。ちょっと試してみるか、とさっそくアプリを起動して目的地まで検索してみると、見事、渋滞情報を反映した回避ルートを案内してくれた。もう少し早くやっていれば……と反省して以降、クルマに乗るときには、車載カーナビに加えてスマートフォンも使うことにした。そして、これから自分のクルマを買うとしても、スマートフォンのカーナビアプリで十分じゃないかとも考え始めていた。

ところが今回、パイオニアの「FH-9300DVS」を知って、その考えが根っこからグラグラと揺らいだ。「FH-9300DVS」は、一見するとカーナビのようなデバイスなのに、スマートフォンと繋げることで、アップルのApple CarPlay、グーグルのAndroid Autoをそのまま使える。リアルタイムの渋滞情報を反映したルート検索はもちろん、たとえば音声認識でコンビニや飲食店を探せる。

筆者はGoogle Play Musicを愛用しており、そこで出会った数々の名曲へすぐアクセスできる。しかも、パイオニアはカーオーディオにも並々ならぬ工夫を凝らしており、「FH-9300DVS」は厳選された音響パーツが使われているらしい。そんなこだわりを聞くとついグッときてしまうのは、男子ならば皆同じはず。

価格も大事だ。一般的にハイエンドなカーナビはかなり歯ごたえのある価格帯だ。使いこなせる人ならその価値はあるのだろうが、ケータイ Watch編集部員の筆者はスマートフォンやアプリの使いこなし術を日々追求しているものの、カーナビは初心者クラス。なので無料で使えるスマホアプリがまず筆頭候補だったが、「FH-9300DVS」は“スマートフォン×カーナビ”の使い勝手で、お手頃価格という。

もう少し未来を見ると、Apple CarPlayやAndroid Autoが発展し続ければ、「FH-9300DVS」で最新のテクノロジーをすぐに使えるかもしれない。ということはエントリー向けモデルとされる「FH-9300DVS」こそ、最先端のトレンドに敏感な人にもオススメできるモデルとも言えるのかも……などなど、髙橋敏也さんからレクチャーを受けてみたら、「FH-9300DVS」のおかげでカーナビとの距離感が一気に縮まり、急激に物欲が増してしまった次第なのでした。

山と溪谷社 中山恵理子

まず価格と機能についてですが、現在私が使用しているカーナビは自動車メーカー純正。一番安いものを選んだのですが10万円超でした。ですが、今回ご紹介いただいたパイオニアさんのディスプレイオーディオがその半値ぐらいというのは衝撃でした。私がカーナビに求めている最低限のこと(ナビ機能と音楽を聴くことができる)は十分備えられているので、知っていたら迷わずこちらを選ぶと思います。

私自身が機器に強くないので「複雑なものは嫌だな」と思って、なんとなく純正ナビを選んでしまったのですが、今回のディスプレイオーディオは予めアプリをダウンロードしておくだけ、と簡単。私でもすぐに使いこなすことができたのも魅力です。

また、いま使っている純正ナビは、助手席の人に操作してもらおうと思っても、運転中に(徐行中でも)ナビ操作が制限されてしまうのがもどかしく感じていました。でもこの製品ならば、スマホと同じで音声で操作できるので、そのようなストレスがなくて、カーナビとしての使い勝手のよさを実感しました。

ほかにも、スマホで慣れていると、カーナビで不満に感じるのが目的地を検索するとき。正確な施設名称じゃないと検索できないので、まずスマホで調べてからナビに目的地を入力する……、という手順を踏んでいましたが、今回はそもそもスマホを接続しているので、あいまいな情報からも検索がしやすく感じました。

バックモニターがあるのも嬉しいですね。昔はなくても大丈夫だったはずなのに、いつのまにかないと不便と感じてしまうようになったバックモニター。ナビ機能があって音楽が聴ければ十分と思っていましたが、これは嬉しい!と思いました。スマホだけではバックカメラが使えないですからね。

中山さん、ご希望のバックモニターはこのような表示されます!

デモカーの場合、ここにバックカメラがありましたよ!

カーナビとしての使い勝手のほかにも、音楽を聴いてみたら、音質のよさにびっくり。車内で聴く音楽ということでいつも妥協をしているのですが、普段聴いている感じとは雲泥の差でした。

そのほかにも本体ハードキーの色を選択できたり、ホーム画面の背景を好みの絵にできたりなど自分仕様にできるところがちょっとうれしいです。