クルマを取り巻く状況は大きく変化するから、カーナビは買い換えたら負け!?

 今、買い換えたら負けだと思いつつ、自分のクルマでは20年近く前に買ったレトロもののカーナビを使い続けてきた。当時としては最新式のTVチューナーつきDVD(!!)カーナビだったが、アナログTVは停波で当然機能しないし、すでに地図の更新データさえ提供されていない。デジタルの世界ではまさに骨董品に近いシロモノだ。

いつも使っているタブレットなどを車内に持ち込む人もいるだろう 新型ストラーダ「CN-F1D」を試すことに とりあえず房総で食べたいお寿司屋さんだけチェックしておく 下準備は「富鮨」をブックマークするだけ

 クルマを取り巻く状況は、ナビゲーションはもちろん、カーエンターテインメント、自動運転など、この10年の変化はめざましく、さらに、この先10年も大きな変化が訪れそうだ。だから今買い換えたら負けだと思っていた。

 それでも、誰かのクルマに同乗するたびに、新型のカーナビを見せてもらい、ちょっとうらやましい気持ちを持っていたことは否定できない。いわゆるインダッシュ純正カーナビのスッキリ感にもあこがれていた。

 もっとも20年前のカーナビでも、普通にドライブするぶんには特に困ることはない。もちろん、地方などに出かけたときに新しい道ができていたり、新たな高速道路が開通したり、その出入り口が新設されたりといったことには対応できないが、例えば、東京都心なんて、この20年間、ほとんど道路状況は変わっていないので、よほどのことがない限り、それで十分だった。

 さらに、ここ数年のスマートデバイス、つまり、スマートフォンやタブレットの進化はめざましく、それをそのままカーナビ代わりに使ってもかなりのレベルで実用になる。年代物のカーナビとタブレットを併用しながら、なんとかしのいできた……。だからぼくのカーナビは今でも現役だ。

 そういうユーザーは少なくないと思うのだが、そういうユーザーこそ新型ストラーダ「CN-F1D」を試してみろというオファーがあった。ストラーダ「CN-F1D」を装備したデモカーに乗って、好きな日帰りドライブを体験してみろという提案だ。そこで、長年東京に住んでいても、個人的にはあまり行く機会がなかった房総に寿司を食いにいくという、きわめて曖昧で行き当たりばったりな目的で、ストラーダ「CN-F1D」搭載のデモカーを走らせてみることにした。

 とりあえず、前日の夜に、最終目的地だけは決めておこうと、パソコンに向かう。やっぱり、パソコンの大きな画面は一覧性が高く、こうした調べ物をするには向いている。出先ならともかく、自宅にいるのだから、スマホやタブレットよりも、パソコンを選んでしまうのだ。

 Googleで「房総 寿司」をキーワードにして検索し、どうも館山の寿司がうまいらしいということがわかった。ランキングやクチコミ情報をあさってみると、「富鮨」というお店が人気のようだ。

 よし、ここにしようと決め、パソコンで開いたGoogleマップに★をつけて保存しておく。これだけで、Googleマップを参照できるどんなデバイスでも、その位置に★がつき、いつでもその詳細情報を確認できる。とまあ、今までならこれで終わりだった。

 

 今回はストラーダ「CN-F1D」がいっしょだ。それとは別に、無料で提供されている専用アプリ「おでかけナビサポートここいこ」を使って、「富鮨」を検索しブックマーク登録しておく。下準備はこれだけだ。なんといいかげんなんだろう。そして、翌朝に備え、早々に床についた。

悪天候の中、新型ストラーダ「CN-F1D」で房総を目指す

新型ストラーダ「CN-F1D」の画面は9V型。車内に入るとますます大きく感じる

 目覚まし時計で目が覚めたのは午前7時。窓の外は天気予報どおり、土砂降りだ……。

 でも仕方がない。寿司に天気は関係ないと気を持ち直し、さっさと支度して集合場所に向かった。

 新型ストラーダ「CN-F1D」が搭載されたデモカーに乗り込む。そこには、これまで見たことのないようなカーナビがある。しかも画面が大きい。2DINサイズのコンソールに本体部分が格納され、そこからアームで飛び出すようにディスプレイが装着されている。それによって2DINサイズよりも、かなり大きな9V型ディスプレイを使うことができ、さらにチルトや高さの調整までできる。ディスプレイと近くなるのでタッチしやすく、文字や地図が大きく表示されて、見やすく使いやすい。

 
あいにくの天気だが、さっそく房総を目指すことに
高さは上下3.2cmの幅でクルマに合わせて自由な位置に調整可能
-20度から60度の範囲で画面の向きも変えられる

 カーナビの画面は、パソコンやスマホのように凝視するものではなく、運転中にチラッと見ただけで、概要が把握できる必要がある。そういう意味でもこの大画面はちょうどいい。そのあたりの考え方は大事なことだと思う。これなら2DINコンソールにピッタリと格納されたインダッシュのカーナビより使い勝手がいいんじゃないかと思う。

 ドライブには音楽も重要な要素だ。ストラーダ「CN-F1D」は音へのこだわりもハンパではない。当日は、iPhoneとAndroidスマートフォンを携行していたが、たくさん音楽データが入っているのはiPhoneなので、BluetoothでストラーダとペアリングしてiPhoneのミュージックライブラリを聞けるようにした。Bluetoothオーディオは通常SBC接続されるが、iPhoneの場合は、AACコーデックで伝送されるので音質が劣化する心配もない。また、ボタンひとつで手軽にプロがチューニングした音を楽しめる「音の匠」機能もある。

iOS端末のBluetooth接続やUSB接続にも対応。Bluetooth接続の場合はAAC対応となる

 次に、最終目的地である「館山の富鮨」の位置情報をセットする。といっても普通に操作するわけではない。iPhoneのアプリ「おでかけナビサポートここいこ」を開き、昨夜ブックマークしておいた「富鮨」を開き、「送信」をタップすると、ストラーダ「CN-F1D」にその位置情報が送信され、行き先としてセットされるのだ。実にカンタンだ。セットした目的地をあえて消去し、直接入力も試してみたが、操作性も検索スピードになんの不満もない。

 すべてをカーナビだけで強引に完結しようとするのではなく、こんな具合に、いろいろなデバイスを連携させて複合的に使えるというのは、まさに、今の時代にマッチしていると思うし、それがニーズだと思う。そのことで、ストラーダ「CN-F1D」がWAN通信の機能に頼らないネットワーク的スタンドアローンでも柔軟に機能することができる。

 もちろん、スマホ連携は、ドライブ中に、どこか立ち寄りたいと思ったときにも便利だ。ドライブ中は、スマホアプリを使った音声検索で立ち寄り先を設定すれば、わざわざクルマを止めてカーナビを操作することもない。

タブレットは逆立ちをしてもカーナビには勝てない

 この日のルートは、最寄りのランプから首都高速中央環状線に入り、湾岸線経由で東京湾アクアラインを通って木更津に抜け、館山自動車道から富浦館山道路を経るルートだ。

 東京湾アクアラインは川崎市と木更津市を結ぶ高速道路で、全長は15.1kmある。川崎側は9.6kmのアクアトンネル、木更津側の4.4kmがアクアブリッジで、その境界に人工島として、お馴染みのパーキングエリア「海ほたる」が設けられている。


ナビ表示は見やすい 専用機ならVICSの情報を利用できる

 9.6kmのアクアトンネルは日本第4位の長さの道路トンネルだそうだ。こういうところを走るときにも専用カーナビは頼もしい。専用カーナビは、ナビゲーションに必要なあらゆるセンサーが外付けだ。利得の高いアンテナなども外付け装備でき当然精度も高くなる。GPSはもちろん、ジャイロセンサーなどがクルマの機構とダイレクトに接続され、正確なデータがナビゲーションに活かされる。スマホやタブレットをカーナビにして9.6キロものトンネルをくぐろうとすると、まず、途中で衛星を見失い、自位置のトレースを放棄されてしまうが、当然ながらストラーダ「CN-F1D」はそうはならない。きちんと今走っているであろう位置を地図上でトレースしてくれる。

制限速度や道路状況などをこまめにアナウンスしてくれるのも便利だ

 運転中も、チラリチラリとディスプレイに目をやり、必要に応じてBluetooth接続されたiPhoneが再生している音楽の曲名を確認したり、曲飛ばししたりする。

 ちなみにストラーダ「CN-F1D」にはリモコンはない。操作は基本的にディスプレイのタッチだけで行う。だが、それでは困ることも多い。ドライバーは当然、フロントガラスの前方を常に注視していなければならない。カーナビのディスプレイに目をやる時間は最小限に抑えること。それが安全運転というものだ。ところがタッチ操作しかできないデバイスは、指先の感覚で操作ができず、必ず、ディスプレイを注視する必要がある。

 だが、ストラーダ「CN-F1D」のディスプレイ上部には物理ボタンが装備されている。左から音量マイナス、音量プラス、オーディオ、メインメニュー、マップという5つのボタンだ。このうち、2つの音量ボタンは丸型で判別はたやすい。さらに、残りの3つのボタンはすべて矩形だが、真ん中のメインメニューボタンには突起があって、ほかのボタンと指先の感触で容易に区別できる。そして、そこからの相対位置関係で、ほかのボタンを指先だけで判別できるのだ。これらのボタンを使うことで、スクリーンを凝視しなくても、基本的なモードの切り替えが可能。また、アプリ「Car AV remote」でスマホをリモコンとして使えば、同乗者が好きなようにAV機能を操作することもできる。

ディスプレイ右上部にまとめられた物理ボタンは、判別もたやすく予想以上に使いやすい

 これはさすがに専用機ならではだ。9型超のディスプレイを持つタブレットがあればカーナビはもういらないかもしれない。そんなことを思っていたが、たった5つとはいえ、専用の物理ボタンを設けるだけで、使い勝手は大きく向上するのだということを痛感した。似たようなサイズのディスプレイ一枚でも、そこにどんな配慮をするかを工夫するのがおもてなしというものだ。

 こればかりは一枚板のタブレットが逆立ちしたってかなわない。ハードウェアとソフトウェアが一体となってこそできることではないだろうか。

 ちなみにストラーダ「CN-F1D」は、Android Autoに対応していて、実際にデバイス連携させて使えるのだが、専用機として洗練されたストラーダネイティブのナビゲーションを前にしては分が悪い。スタンドアローンカーナビ専用機の完成域に達しているのではないだろうか。ドライブ中にちょっとさわるたびにそう言い聞かされているような気がしてならなかった。

Android Autoにも対応
Googleマップも表示できるし、(必要ないが)電話だってかけられる

館山は土砂降りでも名店の寿司はうまかった

 房総はあいかわらず土砂降りだ。ずっと土砂降りだ。海ほたるで束の間の休憩時間をとって、海の向こうに見える(はず)の都心部を望み、太平洋の向こう側に見える(はずがない)アメリカに想いをはせ、パワースポットとして知られる布良崎神社の鳥居の向こうに見える(はずの)富士山を拝み、陽光に菜の花の黄色がまぶしい(はずの)房総フラワーラインを駆け抜けるなどの寄り道をしながら、目的の「富鮨」に到着した。


しつこいようだが、房総はずっと雨だ。海辺も神社にも人はいない
晴れていたら気持ちよいだろうフラワーラインを走る   富鮨に到着

●撮影協力/富鮨
住所:千葉県館山市布良300-6 TEL:0470-28-1654
URL:http://tomizushi.info/

お目当ての「地物すし」

 ご主人の話によれば、館山市は寿司屋が多い全国でも有数の街なのだという。あの寿司タウン北海道・小樽よりも多いという話もあるくらいで、寿司屋の激戦区というのはまちがいない。その館山でのナンバーワン寿司屋「富鮨」で、東京では食べられないという地元のネタだけをみつくろった「地物すし(3240円)」をほおばったあと、千葉といえばピーナッツということで、デザートにはピーナッツソフトクリームで知られる「ピネキ」に立ち寄り、おみやげのピーナッツを物色。あいかわらず土砂降りの房総をあとに、夕方の渋滞が始まりつつある待つ東京に向けてクルマを走らせた。ストラーダ「CN-F1D」にまかせておけば、渋滞をうまく回避できるだろう。


日によってネタは変わるが、この日は、〆さば、ブリ、スルメイカ、金目鯛、カジキマグロのなめろうなど、ご主人のこだわりの握りを堪能
ピーナッツソフトクリームとピーナッツのおみやげ

最速レビュー「スタパ齋藤編」はこちら

(山田祥平)

 

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