山田祥平、装着後2年目のiceGUARD 5(アイスガード ファイブ)
スタッドレスタイヤと長くつきあうには……[前編]

今年も「安心スノードライブ」のために

スタッドレスタイヤのべからず

愛車はもっぱらスキー場への足だという山田祥平氏

 そろそろ冬支度のシーズンだ。といっても愛車はあいかわらずで、つい先日、車検をすませて13年目に突入した。冬の走行距離が圧倒的に多いため、夏場もスタッドレスタイヤを履いたままにしてしまっていたのだが、本当は、これ、あまりよくないことらしい。 ヨコハマタイヤのカタログによれば、シーズン後のタイヤの保管方法について、次の4点を挙げている。

・直射日光を避けてタイヤ内部に水が入らないようにする。

・傷や変形の恐れのある場所を避ける。

・発電機やバッテリーなどのそばに置かない。

・タイヤ内部の薬品がにじみ出て床を汚す恐れがあるので、シートなどを敷いて保管する。

 これらのポイントを守りつつ、直射日光、雨水、油、熱を避け、暗く涼しい場所に置いておくことでゴムの劣化スピードを抑制し、そして、ホイール付きで保管する場合は、ゴムやコードの緊張状態を和らげるために空気圧を半分程度にすることを推奨している。

 実際には夏タイヤもスタッドレスタイヤもそれぞれ用途に応じた一長一短があり、それらを踏まえて季節ごとに使い分けることがより適しているというわけだ。

 昨年、愛車にアイスガード ファイブを装着したレポートをお届けしたが、今回は、劣悪な状態である炎天下の夏を経て、2度目のウィンターシーズンに突入したアイスガード ファイブのレポートをお届けする。

都市生活者のウィンターシーズンはオールシーズンに匹敵

2年目のアイスガードファイブでスノーリゾートへ

 個人的には、スタッドレスタイヤを愛用するようになって、すでに四半世紀が経過している。当初はちゃんと夏冬で交換していたのだが、夏場の走行距離が短いこともあって、ついつい通年でスタッドレスタイヤを履きっぱなしにしてしまっていた。

 都市生活者のウィンタードライブは、常に雪道というわけではない。東京ではめったに雪は降らないし、降ったとしても、自分の装備は安心でも、周りのクルマが危険なことがあるので外出は避ける。また、スノーリゾートへのドライブも、自宅周辺の乾燥路から始まり、高速道路の走行、最寄りIC(インターチェンジ)で降りても除雪が完璧で、乾燥路が続くことは珍しくない。そして、ゲレンデに近づくにつれて、ちらほらと雪が目に付くようになるといった具合だ。

高速道路走行で、iceGUARD 5による燃費の向上を実感

 それでも、北向きのカーブなどは凍結している恐れがあるし、降雪のあった直近であれば圧雪路だ。その圧雪の状態も気温や日当たりなどによって千差万別だ。また、気温があがってくると、雪が解けて複雑な路面状態になるなど、都市からウィンターリゾートへの道行きは刻一刻と変わる。まさに、路面状態のショーケースともいえそうだ。

 以前に使っていたタイヤからアイスガード ファイブに履き替えて最初に気がついたのは、燃費が改善されたことだ。東京と長野のスキー場を往復する約600kmの道程を、ガソリン満タンで出発して、帰りの高速道路を降りたところで給油ランプが点灯というのが以前のパターンだったのだが、アイスガード ファイブに替えてからは、目視でもまだ燃料が残っている。最近は自宅周辺のガソリンスタンドが激減していて、最寄りICを降りてから自宅に到着するまでのコースにガソリンスタンドが存在しない。でも、燃料ランプ点灯のままでは次の外出時に不安なので、わざわざ遠回りして給油してから帰宅していたのだが、アイスガード ファイブでは、次の外出時のついでに給油するというパターンでも問題がなくなった。

乾燥路の走行も快適

 省燃費の向上は、ウィンタードライブはもちろん、普段の街乗り走行でもうれしい。横浜ゴムによれば、アイスガード ファイブでは、ころがり抵抗を以前の製品に比べ、約5%低減させているという。タイヤサイドの形状の見直しによって、発熱によるエネルギーロスを改善しているそうだ。そして、それが燃費の向上に貢献しているというわけだ。

従来モデルと比べアイスガードファイブはころがり抵抗を低減
走行時のタイヤの発熱の状態

 さらにスタッドレスタイヤに起こりがちな「ふらつき」を抑制するために、タイヤサイドのたわみを適正化することで、エネルギーロスを抑え、剛性感を向上させることに成功したとのこと。これは、ヨコハマのミニバン専用のプレミアム低燃費タイヤ「ブルーアースRV-01」の技術を応用することで実現されているらしい。

タイヤのプロファイルを見直すことで剛性感を向上

 スタッドレスタイヤを夏場でも履いていると、グニャグニャしないかとか、うるさくないかとか聞かれることが多い。同じ条件で夏タイヤとスタッドレスタイヤを同時に試すことができないので、なんともいえないのだが、自分で運転していて、そういう印象はまったくない。少なくとも、アイスガード ファイブにしてからは、以前のタイヤよりも、乾燥路での走行ノイズは激減したと感じている。

寿命がわかりにくいスタッドレスタイヤだが……

2シーズン目とは思えない、長持ちタイヤだ

 そんなこともあって、以前は、走行距離とは関係なく、2~3年を目安にタイヤを交換していた。交換にタイヤショップを訪れてもタイヤそのものは新品のように見えるため、いぶかしい目で見られることもあった。もったいなくもあるとは思った。でも、安全には代えられない。目には見えなくてもタイヤのゴムが劣化し、氷上、雪上性能に影響があるかもしれないからだ。だから走っても走らなくても2~3年と決めてタイヤを交換してきた。

 スタッドレスタイヤの寿命はわかりにくい。走行距離がそれほど長くないため、タイヤの摩耗についてはまるで参考にならないからだ。夏場はほとんど走らない筆者はもちろん、夏冬でタイヤを交換している場合も、自ずと走行距離は短くなるだろう。

 アイスガード ファイブでは、低温時のゴムの柔らかさを長時間持続させることに成功し、これまでの製品に比べて53%の向上に成功しているそうだ。分子が大きくオイルが抜けにくい「ブラックポリマーII」に加え、新開発の「吸水ホワイトゲル」を組み合わせることで、ゴムの柔らかさを維持する性能が、さらに長く持続するようになったという。

 スタッドレスタイヤの寿命はわかりにくい。走行距離がそれほど長くないため、タイヤの摩耗についてはまるで参考にならないからだ。夏場はほとんど走らない筆者はもちろん、夏冬でタイヤを交換している場合も、自ずと走行距離は短くなるだろう。

 同社によれば、アイスガード ファイブの氷上摩擦係数は、約4年後でも高レベルを維持するようだ。といっても、これは、タイヤに負担を与えない状態で正しく保管しての話だし、長持ちするとはいっても、経時劣化がゼロになるわけはない。特にぼくのように夏も履きっぱなしなんていう場合はその分を踏まえておかなければいけないだろう。それでも、履き替えを怠ったときのリスクが軽減するという点では、長持ちするタイヤはやはり安心感を与えてくれる。

予想と性能が合致しての安全性

 雪道の運転は実は怖くないと思っている。もちろん、アイスガード ファイブへの絶大な信頼感に助けられている部分も多いが、滑らないのではなく滑って当たり前だと思っていることが大切なのだと思う。滑ったときにどう対処するかのノウハウが、経験や慣れで培われていく。ただし、そのためには、信頼できるタイヤの装着は必須条件だ。ぼくは、ウィンターゲレンデが好きなので、本当だったら海外でレンタカーを借りてでかけたいと思ったりもする。でも、レンタカーはどんなタイヤを履いているのか想像がつかないので、安心して身をゆだねるのが難しい。だから、雪道ドライブは日本国内、そして、自分のクルマと決めている。それならすべてを把握してドライブすることができる。

 慣れ親しんだ自分の愛車とアイスガード ファイブの組み合わせは2シーズン目になっても変わらずに心強かった。はっきりいって、圧雪であれシャーベット状であれ、濡れた凍結路、かわいた凍結路と、路面がどんな状態であっても、乾燥路とほとんど遜色なく走ることはできるように思える。高速道路が一般路並みの圧雪路になった状態もアイスガード ファイブで幾度となく経験しているが、特に不安を感じたことはない。路面の状態よりも、降りしきる雪でワイパーが追いつかないことや、フロントガラスの泥を洗うウィンドウウォッシャー液が切れてしまうことの方が怖い。ウォッシャー液に水を使ってしまうと凍結の恐れがあるので、それはできない。また、ヘッドライトで降りしきる雪が照らされ前方がよく見えないという状況も少なくない。それでもアイスガード ファイブのグリップ感はしっかりと乗り手に安心感を与えてくれる。降雪時の速度規制がもどかしいくらいの安定感で走ることができる。

新雪上でのグリップ状態
圧雪とブラックアイスが混在する“面倒な”路面も不安なし
陽があたって表情を変化させる凍結路面
小さな凸凹にもやわらかいゴムがフィットし、グリップする
凍結路上の新雪を巻き上げながら快適に走る
後編では飯田さんにスノードライブを習う

 ただし、それは、これらの状態が永遠に続くという前提の話で、それは100%ありえない。路面は刻一刻と変化するし、他車の存在もある。その変化をいちはやく知り、路面に応じた走り方をすることが重要だ。クルマの挙動で路面の変化を知るのでは遅いわけで、そこはやはり、細心の注意で周囲の状況を把握することが重要だ。それによって、タイヤに走らされるのではなく、タイヤを走らせる。このタイヤならこうなるはずという予想と、それに応えるタイヤの性能。その両者が合致してはじめてより安全なスノードライブができるんじゃないだろうか。

後編では、モータージャーナリストの飯田裕子さんに同行いただいてのスノードライブの模様をお届けする。さすがは運転のプロ、雪道の運転は慣れていると思っていたぼくの運転も、気づかされることが多々あった。スタッドレスタイヤの進化も、雪道での運転も、まだまだずっと奥が深そうだ。

>後編はこちら

※2014年3月取材

(山田 祥平)