山田祥平、装着後2年目のiceGUARD 5(アイスガード ファイブ)
スタッドレスタイヤと長くつきあうには……[後編]

自動車評論家の飯田裕子さんに、“冬道に適した走り方”を習う

こぶし一個がクルマの挙動にどう反映するか

 さて、今回のスノードライブには、自動車評論家の飯田裕子さんに同行してもらった。飯田さん曰く、雪道のドライブは交通の便が悪い山間部にあった実家と、当時OLとして働いていた勤務先を往復する中で、カーブの続く山道や、積雪により変化するクルマの挙動をわが身にたたき込んだという。

 今回のウィンタードライブは東京をスタートし、まずは軽井沢に向かった。まず最初は星野リゾートの「星のや」のコーヒーショップ「ハルニエテラス」で一服だ。ここは和のリゾートとして有名なスポットで、もちろん温泉もあり、宿泊もできる。ここでは限定コーヒーのハルニレテラスブレンドで体を温める。そして、次の目的地、草津温泉に向かう。

軽井沢の星野リゾートにて
自動車評論家の飯田裕子さんにスノードライブの基本を習うことに

 ここまではずっと乾燥路で、ドライブは夏場と変わらない。高速道路を降りてからリゾートまでは、冬場で閑散とした商店街を抜けてみたが、冬の午前中ということもあり、そこかしこの日陰に凍結したところもあったが特に不安なく通り抜けられた。

 体が温まったところで、クルマをスタートさせて、その日の宿泊予定地である草津に向かう。軽井沢から草津への道路は乾燥路が多かったが、それでは取材にならない。ここはひとつと、雪がたくさんありそうな脇道に入り、いろいろなシチュエーションを試してみることにした。

 職業がら、さまざまなクルマをとっかえひっかえして試す飯田さんだが、スタッドレスタイヤの性能を確認する方法として教えてくれたのが、こぶし一個くらい分ハンドルを切ったときのタイヤの手応えを体感することだという。ちょうど、消しゴムをプラスティックの上で滑らせるような感じを確認しろというのだ。ツルンと滑る感じなのか、ググッと制動される感じなのか。これは、シーズンのはじめに、久しぶりに雪上に出て、自分のタイヤの性能を確認する上でも重要だという。

飯田さんによる模範運転

 クルマの基本は「走る」、「曲がる」、「止まる」ことだ。これは、F1レーサーだって、若葉マークのドライバーだって同じだ。そして、その基本を、雪道のようなナーバスな路面において、どのように発揮させるかでドライバーの力量が決まってくる。

 タイヤを交換してよかったと思うのは、こうしたナーバスな路面にでくわしたときかもしれない。そういうところでの安心感や信頼感が得られれば、タイヤを換えてよかったと思わせてくれる。

 まずは「走る」。クルマはハンドルをまっすぐの状態にして発進するのが当たり前だと飯田さん。まっすぐ走り始めたところで、ハンドルをこぶし一個曲げてみる。そのときに、思ったとおりにクルマが「曲がり」、タイヤがきちんとグリップしているかどうかを身体で感じることが重要なのだそうだ。

 とにかく「曲がる」ためのハンドルは、ゆっくりと切ること。それによって安定感も高まるし、怖さもなくなるという。

あわてずさわがずクルマをコントロール

 飯田さんは、性能の変化がわかりにくいのがスタッドレスタイヤだという。街に住むドライバーにとっては、オンロードも重要で、スタッドレスタイヤは、乾燥路においてはグニャグニャではないかという先入観もある。

 その点、アイスガード ファイブは、オンロードで乗り心地がよく、普通に走らせている分にはしなやかという印象だそうだ。彼女にとって、このアイスガード ファイブのよいところは、深く考えることなくハンドルを切ってもちゃんと曲がってくれるところなのだそうで、いってみれば、タイヤにとって都合のいい運転をドライバーがあえて意識する必要がない性能を持っているのだという。

 飯田さんの言い方を借りれば、アイスガード ファイブは、つぶあんとこしあんでできている。分子が大きい「ブラックポリマーII」に加え、新開発の「吸水ホワイトゲル」を配合、その2種類の素材の組み合わせを表現した彼女の言葉だ。うまいことを言うなと思ったが、ハンドルを握るだけでわかってしまうのはさすがだ。

 しゃくにさわるのは、ぼくの愛車の運転を代わってもらったときに、数分で、まるで自分の愛車のように操れるようになっていることだ。シートポジションも一発で決まる。レンタカーなどを借りて走り始めても、半日くらいはギクシャクしてしまうものだが、彼女にその気配はない。まるで13年ずっと乗り続けてきたかのように運転するのに感心してしまった。

 今回のドライブ中、山間部の下りカーブで、助手席にいてもヒヤッとするくらい唐突にクルマが滑り出したことがあった。一見白くてまわりと変わらない圧雪だと思ったところが、ツルツルのアイスバーンになっていたのだ。そんなときも、飯田さんはあわてもせずに、ハンドブレーキを使ってクルマの挙動を立て直した。危ないときは、走る、曲がるではなく、制動なのだなと思った。それと同時に、飯田さんの操作にきちんと反応したアイスガード ファイブのグリップにも助けられた思いだった。

 そして草津に到着、湯畑を散歩した。さすがに寒い。温泉に入って体を温めてから出てくればよかったと後悔しきり。もうもうとした湯煙を眺めながら、この由緒ある温泉の気分を堪能する。そして宿に戻って食事を堪能したあとも、同行スタッフも交えてクルマ談義は続く。これだから異業種コラボはおもしろい。

草津温泉の中心、湯畑
温泉宿の楽しみは、もちろん夕食だ

正しいドライビングポジションとは

 さて、翌日早朝、朝風呂で体を温め、さらに愛車の冷え切ったエンジンを暖めて、スキー場に向かう。

 ぼくが運転する愛車の助手席に乗った飯田さんは、言いたいこといっぱいあるけど、いいですか、と笑いながら、ドライビングポジションの矯正をはじめた。途上のコンビニエンスストアを見つけ、その駐車場に入るようにうながし、クルマをとめて、シートの調整が始まった。彼女に言わせれば、ぼくのポジションはあまりにもゆったりしすぎで、最悪の場合、クルマのコントロールが遅れてしまう可能性があるというのだ。

飯田さんによる、ドライビングポジションの矯正中

 基本は、シートの前後位置を離しすぎず、ブレーキを踏み切ったときに、膝が少し曲がるくらいにすること。これは、ぼくにとってはこれでもかというくらい、かなり前の方にシートをずらす必要がある。

 また、背もたれは倒しすぎず、ハンドルを持つ腕は、ほんの少しひじが曲がった状態で、いざハンドルを切ったときに背中がシートから離れないようにすることだ。クルマのシートは応接セットではないので、背もたれが直立に近い状態にも感じるくらいでちょうどいいとのこと。

 ぼくのポジションはそのどちらにもほど遠いものだった。背もたれを起こし、シートを前に出すことで、最初はハンドルにしがみつくようなイメージを感じた。でも、実際にはそこまで極端ではなく、ハンドルを切るのに邪魔にならない距離は保たれている。

 ちょっと困ったのは、ステアリングホイールが邪魔になって乗り降りに、いちいち太ももがひっかかるようになってしまったことだ。自分のクルマでも試してみてほしい。足の長さにもよるが、クルマの乗り降りに際してハンドルがまったく邪魔にならないようであれば、それはきっとシートの位置が後ろ過ぎるということになる。

 長年のポジションを矯正され、最初は違和感があったが、運転しているうちに、前方の変化に早く気がつくようになっていることがわかった。これは視線の位置が変わったことによるものだ。また、今までと同じようにハンドルを切っているつもりでも、その反応がダイレクトにクルマに伝わっているような印象がある。

 ただ、ぼくのクルマは、ブレーキペダルがちょっと高く、適正なシート位置ではアクセルペダルからブレーキペダルに右足を踏み換えるときに、ひっかかりそうな傾向がある。飯田さんもそれを指摘してくれたが、クルマの年式等によって違いがありそうで、ここは慣れるしかなさそうだ。

これからのクルマとスタッドレスタイヤ

 草津のスキー場。ゲレンデではまだリフトも動き出していない早朝だ。クルマが一台もいない雪の積もった広場で、飯田さんは、アイスガード ファイブの性能を改めて確認する機会をつくってくれた。

 ぼくの愛車は四輪駆動でESPによって制御されている。ABSやトラクションコントロール、アンダー(オーバー)ステアコントロールを統合したもので、4輪のすべてを制御することで、安定したドライブができるようにするシステムだ。

 そのおかげで普通の運転ではドライバーのミスをカバーし安全なドライブが楽しめているが、完全に自分の意志だけでクルマを制御するためには、意図しないオートコントロールが邪魔になることもある。決してよい子は真似をしないことといって、飯田さんはESPのスイッチをオフにし、誰もいない駐車場でアクセルを踏んだ。

 すると、クルマは雪上を、フィギュアスケーターさながらに、クルクルと舞いはじめた。こうしてタイヤの性能を確かめ、限界時の挙動を体感し、評価をしていくわけだ。スタッドレスタイヤ新製品の発売される前シーズンには、寒冷地などで試乗会が開かれ、モータージャーナリストに披露されるという。彼、彼女らは、その場で、さまざまな性能確認を行う。

飯田さんによるテスト走行を、いろいろな路面コンディションで

 ぼくらのようなPC畑のライターは、各社のPC製品をちょっとさわってみれば、ものの数分で使いやすさやその付加価値を理解することができる。きっと、クルマの専門家も同じなのだろう。

ITがクルマの進化に貢献している話で盛り上がった

 草津の湯はかなり強い酸性泉でけっこう攻撃的だ。湯あたりしてしまう人も少なくないという。昔の人はよく考えたもので、草津温泉の仕上げ湯として有名な四万温泉がある。ちょうど草津から群馬・中之条方面に向かう途上にある温泉で、刺激の少ない硫酸塩泉だ。ここにつかれば草津の湯で刺激された体が潤うというわけだ。

 立ち寄った「四万たむら」の立ち寄り湯で、温泉浴の仕上げ。ジブリのアニメ「千と千尋の神隠し」に登場する温泉宿のモデルとされる温泉地は、愛媛松山の道後温泉など複数存在するが、この四万温泉もそのひとつだといわれている。慶雲橋と呼ばれる橋と、古い温泉旅館「積善館」のたたずまいに、映画のシーンを思い出しながら、クルマを伊香保方面に走らせる。さすがにもう温泉はいいよねと、小腹がすいたということもあり、帰りには水沢うどんで腹を満たそうということになった。

立ち寄った四万温泉の風景
「四万たむら」の前で
日本三大うどんのひとつ、水沢うどんを賞味

 水沢うどんはコシと弾力のある麺で日本三大うどんとして知られる。その始祖のひとつとして有名なのが「清水屋」だ。今なお手打ちにこだわるうどんのメニューは「大もり」、「中もり」、「小もり」の3種類のみという大胆なもの。これをごまつゆで食べる。好みに応じて舞茸のバター炒めや山菜の佃煮などをいっしょに注文することもできる。

 軽井沢から草津、そして四万温泉経由で水沢と、いろんな路面でのドライブを支えてくれたアイスガード ファイブだが、これからクルマはどんどん変わっていく。ITが貢献する部分も少なくない。だから、飯田さんのようなモータージャーナリストが担う役割も変わっていくのだろう。さらに、冬のドライブに快適性や安心感をもたらすアイスガード ファイブのようなスタッドレスタイヤに求められる要素もまた変わっていくかもしれない。これから先の進化が実に興味深い。

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※2014年3月取材

(山田 祥平)