みなさんはクルマのタイヤに何を求めているだろうか。低燃費? 低価格? ロングライフ? グリップのよさ? それともデザイン?

 好みだけでなく車種によっても優先したいところは変わってくるだろうけれど、とかく家族を乗せるミニバンのような車種では、安全性につながる「グリップ性能」が重要である!と、今回のレビューで強く実感したことをあらかじめ声高に主張しておきたい。なぜそう思うことになったのか、それは以下の通り、自分のクルマで2種類のタイヤを履きくらべるという経験をすることができたから。今回はその顛末を動画を交えてお伝えしたいと思う。

リーズナブルなタイヤも魅力。どっちにしようか悩んでいたら……

 子供が生まれ、家族のために新車で購入したミニバン、ホンダ・ステップワゴンは、4年目に入った。昨年初めての車検を迎えた際には、ほとんど簡単な点検整備だけで済み、車両購入時から装着していた純正タイヤはそのまま使い続けることに。このまま履きつぶそうか、と思いながらも、走行距離は2万5000kmを超えているわけで、そろそろ交換時期といってもよい頃合いだ。

 タイヤを変えるとすれば、どんなものがいいだろう。ちょっと調べてみると、ミニバンに装着できるタイヤとしては、大まかには汎用性に優れたスタンダードタイヤか、ミニバン向けに設計・開発されたミニバン専用タイヤの2タイプに分かれるようだ。ステップワゴンはミニバンなのだから、ミニバン専用タイヤにすれば間違いはなさそう。でも、リーズナブルなスタンダードタイヤも気になる。

ちなみにタイヤサイズや適正空気圧は車両のドアを開けた部分に記載されていることもある。ネットで調べるまでもない

 まさしくそんなタイミングだったのである。「日沼さん、ミニバン乗ってましたよね? ミニバン専用タイヤ試してみませんか?」という唐突な編集部からの連絡が。「何事?」と思いつつ、ミニバン専用タイヤはちょうど気になっていたところ。とりあえずよくはわからないまま仕事を承諾し、ネットで調べてマイカーのタイヤサイズを機械的にメールで返信。すると「今週末のうちにタイヤを変えてきてください」と言われ、指示されるがままにショップでタイヤを履き替えたら、今度は「栃木でわりとハードに走りますんで」と脅され、念のためチャイルドシート2個をクルマから下ろす筆者。

 で、行ってみたら我がステップワゴン1台のためにクローズドコースが貸し切られ、そこにはヨコハマタイヤのどデカいトラックと、さらにはモータージャーナリストの日下部保雄氏が待ち構えているではないか! どうやら筆者、スタンダードタイヤとミニバンタイヤをみっちり走り比べることになってしまったのである。

たった15分で交換完了。走り出したら、何かが違う?

「タイヤガーデン府中」でタイヤ交換

 比較に使用したタイヤは、ヨコハマタイヤのスタンダードモデルであり、ベストセラー商品でもあるという低燃費タイヤ「ECOS ES31(以下ECOS)」と、ミニバン向けに開発された「BluEarth RV-02」。この2つに具体的にどんな違いがあるのかは追々説明するとして、まずは純正タイヤから「BluEarth RV-02」に履き替えた時のことを振り返りたい。

 週末の忙しい朝にタイヤ交換をしていただいたのは、東京都府中市にある「タイヤガーデン府中」。ここはヨコハマタイヤの直営店舗ということで、ヨコハマタイヤの製品知識に長けているだけでなく、タイヤに関してあらゆることを熟知したプロが在籍し、タイヤ交換とタイヤに関する的確なアドバイスをしてくれる。

 お店に入るなり、我が愛車がリフトアップされ、あれよあれよという間にタイヤが4本とも外されて、あられもない姿に……。その後も流れるような作業でタイヤ交換が進み、真新しいBluEarth RV-02に履き替わって丁寧にタイヤワックスが塗られ、ピッカピカの状態で筆者の目の前に差し出されたのだが、この間たったの15分。もちろんタイヤのバランス取りや適正空気圧への調整、締め付けトルクのチェックまで入念に行われたうえで、である。

リフトアップされ、あられもない姿になった愛車
てきぱきと進むタイヤ交換作業
タイヤワックスでピッカピカに   とにかくものすごい早さで交換が終わったが、仕事は丁寧だ

 さっそく走り出すと、街中の低速走行にもかかわらず、明らかにタイヤの違いによる変化が分かる。最初に気付いたのは静粛性だ。やや荒れた舗装路面でのノイズ量は、以前より2レベルほどダウンしている。純正タイヤが走行2万5000km以上で、スリップサインにはまだ達していなかったとはいえ、ほどほどに摩耗していたから、そもそもロードノイズが通常より大きくなっていた可能性はある。けれど、しっかり違いが分かるのはうれしいものだ。

 それと、常に感じ取れるほどのものではないものの、ハンドリングもわずかに差があった。ある程度ハンドルを切らなければならない交差点の左折時には、これまでになかったスムーズさというか、ナチュラルな切れ込み具合が手に伝わってくる。このあたりの理由は、後述のクローズドコースでの試走を通じて明らかになってくるだろう。

サスが変わったみたい!? レーンチェンジがうまくなった?

路面の凹凸などにも動揺しない、しっかり感が気持ちいい レーンチェンジでも繊細な操作が正確に行える

 そうして迎えたクローズドコースでの試走当日。場所は栃木県那須塩原市、「ドライビングパレット那須」という舗装路面のミニコースと、だだっ広いダートコースが隣り合っている施設だ(到着するなり、ダートコースで走りたい!と今回の企画と全く関係ないことを頭の中で叫んでしまったのはナイショだ)。

 ちなみに現地までは履き替えたばかりのBluEarth RV-02で東北自動車道を北上してきたのだが、この高速走行時にも大きな違いが感じられた。路面の波打つような凹凸や細かな段差で、車体がしっかり接地しているような、それまでにはなかった“しっかり感”が出てきたのが1つ。もう1つはレーンチェンジ時のふらつきの少なさだ。

 “しっかり感”は、いわば“固さ”や“コシ”にも近い、まるでサスペンションの減衰力が強まったかのような変化だった。人によってはそれを「快適ではない」と捉える向きもあるかもしれない。けれど、突き上げやショックが大きくなったというよりは、タイヤの“面”できっちり荷重変化を受け止めているような感触で、運転することの気持ちよさが増したという意味での“快適さ”がぐっと向上した。

 レーンチェンジは、ハンドルを少しだけ切って斜めに走行し、ハンドルを元に戻して完了という、単純な操作でしかない。が、それまではハンドルの切り始めがなぜか自分が考えているより大きな動作になりがちで、どちらかというとクイックな動きになって隣のレーンに進入することが多かった。ところがBluEarth RV-02では、一連の操作の滑らかさがアップ。頭で考えている分だけハンドルが切れるようなり、繊細な操作に繊細に応えてくれるかのよう。「ちょっと運転がうまくなったかも」と勘違いしてしまいそうなくらいだった。

ドライビングパレット那須に到着   なぜかどデカいBluEarthトラックが

 そんなこんなでドライビングパレット那須に到着したわけだけれど、現地にはなぜか「BluEarth」のロゴがデカデカとラッピングされたヨコハマタイヤの巨大なトラックが待ち構えており、その中には比較用のタイヤと、タイヤ交換に使うタイヤチェンジャーが鎮座していた。つまり、比較用のスタンダードタイヤにその場で交換してもらい、実際に走行して感触を確かめた後、再びBluEarth RV-02に履き替えて違いを体感しよう、ということらしい。


そしてモータージャーナリストの日下部保雄氏も

 しかも、モータージャーナリストの日下部氏もその場に居合わせ、わざわざ筆者に2種類のタイヤの解説とチェックすべきポイントの指導をしていただきつつ、タイヤごとの制動距離の正確な違いまでテストするという豪華オプション付き(もしかしたらこっちがメインかもしれないが)。ここまでしっかりミニバンのためにタイヤテストするシチュエーションもなかなかないのでは……。

低燃費志向の流れに正面から立ち向かう、ヨコハマタイヤのRV-02

乗用車用タイヤのベストセラー「ECOS ES31」(左)と「BluEarth RV-02」(右)

 ここまでずいぶん前置きが長くなってしまったが、今回比較する2種類のタイヤがどういうものなのか、簡単に説明しておこうと思う。

 「ECOS ES31」は、乗用車用の低燃費タイヤとしてヨコハマタイヤでは最も人気の高い製品の1つ。業界統一指標のタイヤラベリング制度における転がり抵抗性能は「A」、ウェットグリップ性能は「c」で、低燃費基準はきちんと満たしたタイヤではあるものの、路面が濡れている時のグリップ性能はスタンダードレベル、というものになる。ただし、比較的安価なうえに性能はそこそこ高いことから、乗用車だけでなくミニバンなどでもよく使われているという。


BluEarth RV-02は、ウェットグリップ性能「a」を達成したミニバン専用タイヤ

 一方、今回のメインとなる「BluEarth RV-02」は、車重や乗車人数の多いミニバンに合わせてタイヤ剛性やトレッドパターンなどが工夫されたミニバン専用タイヤ。転がり抵抗性能は「A」でECOSと同等ながら、ウェットグリップ性能は最高グレードの「a」を達成し、ECOSを大きく上回る。また、旧モデルとなるRV-01ではウェットグリップが「b」だったので、モデルチェンジ後の製品としても確実に進化しているタイヤだ。

 今回の2製品はともに転がり抵抗性能が「A」の低燃費タイヤだが、他メーカーのものも含め、最近の製品はとりわけ低燃費性能(転がり抵抗性能)を重視しているものが多い。社会的にエコロジー意識が高まっていることや、低燃費性能を追求している車両には同じく低燃費のタイヤがマッチする、といった考えがあることも要因だろう。ガソリン価格の変動が激しい昨今の事情も念頭に置くと、やはりできるだけ低燃費にフォーカスした製品の方が受け入れられやすいこともありそうだ。

 この流れに対して安全性能のひとつである「ウェットグリップ性能」の進化にこだわったのが、ヨコハマタイヤのBluEarth RV-02ということになる。優れた低燃費性能を“維持”しながら、可能な限りグリップ性能を引き出して安全性を高めよう、という狙いで開発されている。というのも、転がり抵抗性能とグリップ性能はほとんどトレードオフの関係にあり、両立するのは難しい。

 もちろん、転がり抵抗やグリップ力に関係するゴム内部の熱の発生や拡散のさせ方、性能向上に適した素材の選定や配合、トレッドパターンのデザイン、耐摩耗性との兼ね合いなど、実際には多数の複雑な要素を加味しながら開発が行われているのだろう。

 が、ヨコハマタイヤとしては、車両が大きくなりミニバンの車重が増えていること、乗車人数も多いこと、さらに、近年のゲリラ豪雨で突然の雨にユーザーが不安を感じることもあるだろうとユーザーの安心感も考えたら、低燃費性能も必要だが、ウェットグリップ性能をより高めることも必要ではないか、というわけ。

タイヤの“よれ”で削れまくるECOS、削れにくく踏ん張るRV-02

 そんなBluEarth RV-02からいったんECOSへと履き替えた我がステップワゴン。最初は日下部氏が運転し、助手席に筆者が同乗して体感してみる。その後、運転席と助手席を入れ替えて、筆者が違いが分かるまでひたすら走り込むことになった。メニューとしては、半径10〜15mほどの定常円旋回、60km/hからのウェット路面での急制動、同じくウェット路面での小回りターン、最後にS字スラロームの4種類だ。

BluEarth RV-02からECOSへと履き替える我がステップワゴン。やはり作業は迅速だ
日下部氏の運転でロールしまくるステップワゴン

 まずは定常円旋回から。だが、そもそもの話をすれば、ミニバンはあくまでもファミリーカーであり、こんな走りをするためのクルマではない。車高が高く、サスペンションも乗り心地を重視して柔らかめに設定されているせいで、定常円旋回のような急ハンドル状態で走行すると、車両が大きく傾くいわゆる“ロール”が目立ってしまう。さらに極端なロール状態に持ち込むと、イン側のタイヤが浮いて空転するほどだ。

 それはさておきECOSの場合、この定常円旋回に入ると「ぐぐぐ」と踏ん張っている感じはあるものの、一定の速度とハンドル舵角に達したところで、タイヤが外側へ逃げる感覚が強くなる。その一歩手前までがタイヤの限界性能になるわけだけれど、ギリギリグリップしている段階ですでに前輪の“よれ”を感じずにはいられない。

どう見ても前輪がよれている

 動画ではGPSでの計測による車速を表示しているが、29〜30km/hほどでタイヤの限界を迎え、瞬間的に32km/hぐらい出るといったところ。その時のタイヤの状態を見ると、タイヤの外側が完全にひしゃげて、本来のグリップを発揮するはずのトレッド面から逸脱して接地している。急なコーナー(急なハンドル操作)では車重に耐えきれず、タイヤの形が大きく変わってグリップを失いやすい、ということが言えるのではないだろうか。

【動画】ECOS ES31での定常円旋回走行テスト

 また、走行後のトレッド面を見ると、中央よりやや外側のスクエア形状のタイヤブロックの角が取れて丸くなっている。さらに、中央付近の直線状のパターンについても角がなくなっている。ここから分かるのは、トレッドパターン自体もコーナリング時によれてしまい、削れて“偏摩耗”が進んでしまっているということ。このような走り方自体、無理はあるのだが、スタンダードタイヤとしてがんばりすぎたレベルで、「お疲れ様」という感覚だ。

ECOSのトレッド。ブロック部分や直線状のパターンの“角”が取れている。ショルダーまで摩耗しているのも分かるだろうか

 では、BluEarth RV-02に戻して同じように走行するとどうなるか。乗車、もしくは運転している時の感覚としては、ECOSの時のような“よれ”はほとんど感じられない。あきらかに車速も上がっているように感じられ、動画で見ると、32km/h程度で周回でき、瞬間的には34km/hの表示も。

 実はタイヤ交換中に少し雪が舞って、路面がセミウェット状態になってしまったのにも関わらず、車速で2km/hほど上がっている結果だ。確かにクルマとしてはロールしているし、動画で見てもある程度よれてはいるけれど、タイヤ全体が大きなブロックとしてまっすぐ接地しながら機能しているような乗り心地。限界を超えた時にはよれて滑るのではなく、ブロックの接地面が斜め前方にずれるように滑っていく感じだ。

BluEarth RV-02で定常円旋回。全く滑らないわけではないが、滑り方が違う
【動画】BluEarth RV-02での定常円旋回走行テスト

 ECOSでは一定の速度域・舵角からは明らかに無理な感じが出て、早々に速度を落として舵角を緩やかにするしかないところ、BluEarth RV-02ではそれがより高い速度域まで引き上げられるとともに、滑り始めても舵角を増すことでまだ曲がりきれる余裕がある。何よりブロック感のあるタイヤの安定度合いが、ECOSよりも格段に大きな安心感をもたらしてくれて、コントロールがしやすい。

 走行後のトレッド面を観察しても、ECOSとの違いははっきりしている。トレッドの“角”の削れが少ないうえに、トレッドからサイドウォールにかけてのショルダー部分もほとんど削れておらず、よれて接地していることはない、というのが明確だ。トレッド面全体で綺麗にグリップしている印象がある。

走行後のBluEarth RV-02は、ECOSほど削れていない

その差は4m。ミニバン専用設計の制動力をいかんなく発揮

 急制動になると、その差は客観的にも明らか。60km/hからのウェット路面での急制動では、ECOSの場合約21m。対してBluEarth RV-0は約17mで、その差は約4m。これは日下部氏が運転しても、筆者が運転しても、さほど変わらなかった。とにかく思い切り踏み込むだけで最大限の制動力を発揮してくれるABSのおかげだろう。

ECOSでの急制動
BluEarth RV-02での急制動。Racelogic製のGPSセンサー「VBOX」を使用したところ、ECOSより4m短い制動距離で停止していた

 車内にいても、制動力の違いを体にかかるGではっきりと体感できる。当然ながらBluEarth RV-0の方が体にかかる負担が大きく感じたわけだけれど、なぜECOSとBluEarth RV-0でこうまで差が出るのだろうか。これにはトレッドパターンの工夫にも秘密があるとのこと。ECOSでは写真にあるように、トレッドの一部が小さなブロックに分割されている。このブロック状になっているところがBluEarth RV-02にはなく、細かな切れ込みはあるにしろ、回転方向で見ればタイヤ全周で1つの大きなブロックのように機能する形としている。

再びECOS(左)とBluEarth RV-02(右)のトレッドを比較してみる

 1つ1つ独立したブロックが小さいと、タイヤの回転方向(あるいは横方向)の強度としては弱く、逆にブロックの面積が大きいほど強度としては高くなる。強度が高ければ、踏ん張る力も強くなる。タイヤの周方向で一体化したブロックと見なす構造にすることで、形の変化を抑えてよれを減らし、踏ん張る力を増しているのだ。


【動画】約60㎞/hからのウェットブレーキ性能比較

 というような技術的な面はともかく、実際の交通事故では数cm、数十cmで重大事故につながるか、つながらないかの境目になる可能性があることを考えると、およそ4mものグリップ力の差があるという事実は、とてつもなく大きいのではないだろうか。実際にその差を体験してみると、家族を乗せて走る身としては、この差がとても説得力のあるものに感じられた。

クイックな切り返しにも追従するRV-02

ウェット路面のターンに向かう日下部氏と筆者

 次のウェット路面でのターンは、ヘアピンに近い形状のタイトな低速コーナーで、速度をかなり落とさないと曲がりきれない。ECOSでは、進入からコーナーを抜けるまで、極端に速度を落としたまま、かなりゆるめの舵角を維持しないと、容易に外側へはらんでしまう。

 対してBluEarth RV-02では、速度はもちろん抑えなければならないものの、コーナリング速度はECOSより明らかに高いことが体感できる。なによりウェット路面でも、ブレーキを緩くかけながらコーナーに進入するのに何の不安もなく、よほど急なハンドルさばきをしない限り唐突に滑り出すこともない。


巧みに操りインベタでクリアしていく日下部氏   しかしウェットなので、ドライ路面と比べて圧倒的にグリップは失いやすい

 その後のS字コーナーでは、ハンドルを切り返す時のBluEarth RV-02の反応のよさが印象的。ECOSだと、どんなに俊敏に切り返しても、というか俊敏に切り返そうとするほど、ワンテンポ遅れてタイヤがついてくるような感触になる。そして、その反動として“お釣り”まで返ってきてハンドリングやリズムが狂わされてしまう。

 BluEarth RV-02ではその遅れがほぼ抑えられ、反動はゼロではないがすぐに収束するので、縁石ギリギリの狙ったラインをその通り、あるいはむしろ攻めるように走ることができた。これは、もしドライバーのわずかな判断遅れがあったとしても、リカバリーできる余地が残されているということ。しかも、ECOSでは前輪でしか感じられなかったグリップ感が、BluEarth RV-02では後輪の挙動も同時に感じられ、車体としての一体感も出てきたかのようだった。

ECOSでは攻めきれなかったS字だが……   BluEarth RV-02では狙ったラインにズバッと切り込める
大人の男性ばかり7人がみっちり乗り込んだ車内……

 最後に、家族を乗せて走るミニバンということもあるので、その場にいたスタッフ全員を乗せ、定員に近い7人乗り状態で走行してみた。そこで驚いたのは、2人乗車時と比べ制動距離にほとんど違いが出なかったこと。

 S字や定常円旋回ではさすがに“重量分”の操縦のしにくさがあり、タイヤの性能よりも、どちらかというとクルマのサスペンションの性能不足が気になったのだけれど、こと急制動においては重量がグリップによい影響を与えたのか、タイヤが十分な性能を発揮してくれたようだ。大家族でも、友人らを大勢乗せる時にも、BluEarth RV-02は安心なタイヤと言えそう。

違いが分かるのは限界走行時。でもその限界時こそ重要になる

プロファイルの違いがグリップ力や安定感の違いにつながっている、と日下部氏

 以上のような性能の差は、トレッドパターンの違いはもちろんのこと、「プロファイルの差も大きい」と日下部氏。プロファイルとは、言い換えればタイヤの断面形状だ。ECOSは、ショルダー部がどちらかというとなだらかな曲線を描く“なで肩”になっているのに対し、BluEarth RV-02は、極端に言うと“いかり肩”の四角形に近い形状となっている。

 走行中に筆者が感じた“ブロック感”も、おそらくこのプロファイルによるところが大きいのかもしれない。冒頭で述べた、街中でのハンドリングのナチュラルさにも関係している気がする。プロファイルが四角い形状であれば、コーナリング時に横方向に力が加わってもよれにくく、踏ん張りもききやすい。しかし丸い曲線状になっていると外側につぶれやすく、ことによってはトレッドではない部分が接地して滑ってしまう。

 ただ、これはあくまでも限界走行での話だ。普段、公道をミニバンで走行している時に、それも家族を乗せた状況で、限界に近い操縦をする人はいないだろう。そういう意味ではスタンダードタイヤであっても十分な性能をもっているし、コストパフォーマンスを重視するならECOSを選ぶのも間違いではない。

 でも事故が起きるシチュエーションというのは、えてして(少なくとも瞬間的には)限界走行の果てなのである。ECOSでは限界を超えてしまう場面でも、もしかするとBluEarth RV-02ならギリギリ限界以下で耐えることができ、コントロールを失うことなく、あるいは数cm手前で止まって、重大事故になるのを防げるかもしれない。

限界性能の高いBluEarth RV-02だと、常に余裕をもちながら運転できる   サイドウォールのデザインパターンもカッコよく、「いいタイヤ履いてる!」感がある
【動画】ECOS ES31とBluEarth RV-02を乗り比べて
帰路では「もっと安全に運転しよう」と気持ちも新たに

 その万が一のことを考え、少し値段は高くても高性能なミニバン専用タイヤを選ぶのか、それともやはりコスト重視でスタンダードタイヤやそこそこの低燃費タイヤを選ぶのか、少なくとも子供を乗せて走ることの多い筆者としては、選択肢は1つしかないと思っている。特にウェットグリップ性能の重要性はとても強く感じた。BluEarth RV-02が持つ最高グレードのウェットグリップ性能「a」もますます魅力的に感じる。

 もっと言えば、購入時のコストはかかっても、よれが少ないために偏摩耗しにくいBluEarth RV-02は、より長く使える。つまり、長い目で見た時には低コストになる、という考え方もできる。トータルでコストパフォーマンスに優れ、性能も高いとなれば、ミニバン専用タイヤのBluEarth RV-02を選ばない理由はない、というのが結論だ。

(日沼諭史)

関連情報

関連記事