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ボルボ、新型「XC40」をエクステリアデザイン統括のミッソーニ氏が解説

「同じSUVでもサイズの大きなモデルとは異なるデザインでタフさを表現」

2018年3月29日 開催

新型「XC40」と、エクステリアデザインを統括したボルボ・カー・グループ エクステリアデザイン部門 バイスプレジデントのマクシミリアン・ミッソーニ氏

 ボルボ・カー・ジャパンは3月29日、3月28日に発売した新型コンパクトSUV「XC40」の記者発表会に合わせて来日した、XC40のエクステリアデザインを統括するボルボ・カー・グループ エクステリアデザイン部門 バイスプレジデントのマクシミリアン・ミッソーニ氏によるボルボデザインセミナーを、東京都港区のボルボ・カー 虎ノ門にて開催。XC40をはじめとするボルボのデザインに関する解説があった。

 XC40発表会については「ボルボ初のコンパクトSUV新型『XC40』発表会」を、価格やグレードなどに関する詳細は「ボルボ、新開発プラットフォームに出力が異なる2種類の直4ターボエンジン搭載の新型『XC40』」を参照していただきたい。

 なお、XC40はボルボ初のコンパクトSUVとなり、2018年欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

ボルボデザインセミナーを東京都港区のボルボ・カー 虎ノ門で開催
ボルボ・カー 虎ノ門のショールーム。中央がXC40

 ミッソーニ氏は、現在新型車のコンセプト開発やエクステリアデザインの統括を担当。1978年にオーストリアで生まれ、2002年~2012年はフォルクスワーゲン・グループにてエクステリアデザインを担当。フォルクスワーゲンでは、エアロダイナミックスデザインボディの「XL1」(超低燃費ディーゼルのPHEV)のデザインも担当し、今もインスパイアされ続けている1台と語っていた。2012年からはボルボ・カー・グループのエクステリアデザイン部門チーフとなり、2014年からはバイスプレジデントとしてボルボとポールスター(ボルボ・カー・グループ傘下の電動モデル専門パフォーマンスブランド)のエクステリアデザイン統括業務を担当している。

「影響を受けたクルマは」との質問には、シトロエン「SM」とXL1と答え、シトロエン「DS」も当然偉大だが、SMはより近未来的でエモーショナルで、個人的にとても好みだとも教えてくれた。

ボルボ・カー・グループ エクステリアデザイン部門 バイスプレジデントのマクシミリアン・ミッソーニ氏
ボルボデザインセミナーで解説をするミッソーニ氏

 セミナーではスライドを見ながら解説が行なわれた。最初に、北欧スウェーデンのイエーテボリ(Gothenburg)にあるボルボ・デザイン・スタジオの紹介とボルボの歴史を簡単に解説。1927年にアッサル・ガブリエルソンとグスタフ・ラーソンがボルボを創設した時から、“人”を中心とする設計が理念となっていること、自動運転の技術が採用されるなかで、この“人”を中心とする設計理念から安全が最重要視されることがより見直されてきていることなどを解説した。

ボルボ・デザイン・スタジオは、北欧スウェーデンのイエーテボリにある。他にも2拠点、上海とカルフォルニアにもスタジオがある
スタジオの従業員には女性も多く在籍し、意見を積極的に取り入れている。写真はスタジオのスタッフが「XC60」を囲んでいるところ
1927年にボルボを創設したアッサル・ガブリエルソンとグスタフ・ラーソン。人を中心とする設計が理念。安全が最重要視されている

 デザインの解説に入ると、現在のエクステリアデザインは、1960年から1970年代にわたって製造されたボルボを代表する「P1800」にインスピレーションを得た3台のコンセプトカーが、XC40を含め現在のラインアップのベースとなっていること、ボルボのアイコンになっているヘッドライトのT字型デザイン「トールハンマー」が、北欧神話の雷神が持つハンマー(Thor Hammer)をモチーフにし、LEDデイタイム・ランニング・ライトやポジショニングライト、ウインカーの役割も果たすことなどを説明。これまでにある一般技術ではなく、ハイテクに変更して印象的なライトに仕上げているとのこと。デザインはテクノロジーの影響を強く受けることを強調していた。

1960年から1970年代にわたって製造されたボルボを代表するクルマ「P1800」
P1800からインスピレーションを得た3台のコンセプトカー(下)。それがXC40を含め現在のラインアップのベースとなっている

 XC40のデザインでは、同じSUVシリーズでありながら、サイズの大きなモデルとは異なったデザイン表現をすることを決めてからデザインを始め、フロントフェイスは犬のイングリッシュブルドッグからイメージを得たり、プロポーションにはSF映画に登場するようなタフさを感じるデザインを取り入れていったとのこと。特にフロントフェイスは、クルマとの関係性を考えると、感情移入のためにとても重要になってきていると解説。また、特定のアイテムを収納するスペースを固定化して多く用意する(スマートストレージ)ことを取り入れたのは、アーバンなコンパクトSUVというセグメントとしてのニーズから採用していると説明した。

 プロダクトに最適なデザインプロポーザルを選ぶという作業をするなかで難しいのが、チーム内で適切なボルボのデザインを体現する人材を選ぶということ。スケッチからではなく、抽象的なビジョンを言語を使って表し、チームで具体的なアイデアを作っていく。そして、それを選んでいくという作業方法をとっていく。XC40では最初から、簡素でボックス形状、堅牢さといったイメージの明確なキャラクターを持っていたので、それを元にしたプロポーザルを選んでいったとのこと。流麗でダイナミックな「XC60」と比べると、その違いがより明確となる。

 どのモデルにも共通して言えるのが、極力無駄な装飾を削ぎ落として最終的に残ったミニマルなデザインがベースになっていることを、各所で伝えていたのが印象的だった。

XC60のデザインについて。極力無駄を省いたデザインがテーマ
フロントアクスルからダッシュボードまでの距離が絶妙。美しいプロポーションを作り出す
XC60のリアデザイン。ランプなど複雑なパーツで構成。安全性を第1にデザインされている
ボルボのシンボルとなっているLEDヘッドライトの「トールハンマー」デザイン
インテリアは、彫刻のようにカタチから考える。シンプルでクリアがテーマ。最小限のミニマルデザイン
XC60のダッシュボード。パネルに流木があしらわれた。縦長の吹き出し口がボルボをイメージづける
XC40は、これまでの大型車のたくさんのフィードバックから作られた。デザインプロポーザル
左からXC90、XC60、XC40。大型車のデザインをそのまま小型化するのが一般的だが、今回はそれを行なっていない
シルエットが異なる。XC90が直線的でエレガント、XC60はよりマッスルでスポーティに、XC40はSF映画にあるようなタフなデザイン
XC90。ラゲッジルーム窓部分の角度が緩やか。ラインの終点がどこまでも後ろに伸びていくイメージ
XC60。角度が少し鋭角になっている
XC40。上にかなり角度のついた角張ったデザイン
XC90、XC60、XC40の斜めからの眺め。同じシリーズだが、異なるデザイン表現になった
プレミアム・セダンS90のフロントフェイスは、ライオンからインスピレーションを得た。アグレッシブ過ぎない自信のある威風堂々としたイメージ
XC40のフロントフェイスは異なるデザインにするため、犬のイングリッシュブルドッグからイメージを得た
カスタム化にも力を入れている。「R-Design」は黒のコントラストルーフ
「Momentum」ではホワイトのコントラストルーフとホイール。アーバンでファンキーなイメージ
「Inscription」はプレミアムグレード
部分的にクロームがあしらわれる
XC40のインテリアテーマ。スカルプチャースタディスケッチ。吹き出し口とセンターディスプレイの3つの島で表現している
スマートストレージの概念。普段使うモノを手の届く範囲で収納できるように工夫されている
XC40のインテリア
XC40のフロントドア。多くの収納場所を得るため下部スピーカーを前に移動。モダンデザインで多用されるフェルト素材を使って大型の収納を作った
オレンジ色のフロアは2014年のコンセプトカーから採用。コンセプトカーは実際のプロダクトに反映される
通常コストダウンされがちなベースモデルとなるXC40 T4のデコレーションパネルエリアは、イエーテボリの3D地図レリーフとなっている

 ショールーム内には「T5 AWD R-Design 1st Edition」が置かれ、ミッソーニ氏は実際の車両を用いて、デザイン解説した部分を説明してくれた。

 なお、このモデルは1月26日に300台限定で予約受注が行なわれていて、すでに完売している。T5 AWD R-Design 1st Edition以外の各モデルについては、2018年第2四半期以降の納車予定となっている。

「XC40 T5 AWD R-Design 1st Edition」
車両を用いてデザインを解説するミッソーニ氏
XC40 T5 AWD R-Design 1st Edition
20インチのアルミホイールにピレリ「P ZERO」245/45 R20を装着。前後共にディスクブレーキ
前方に傾斜した「ネガティブグリル」
直線のボンネットラインに鋭角のヘッドライトユニットが交わるデザインは、製造面から考えると難しい部分と解説
トールハンマーデザインのヘッドライトユニット
LEDフォグランプ
サイドのアンダーガーニッシュ
ドアハンドルはボディ同色
リアドア上部からラゲッジルームへの上昇するデザインでXC40を特徴付けている
ドアミラーに、LEDウインカーが埋め込まれる
ボンネットの助手席側に両面テープで貼り付けられた樹脂製のスウェーデン国旗のアクセサリーは、限定車であるT5 AWD R-Design 1st Editionでも初期納車分のオーナーズマニュアル内にひっそり忍ばせられたサプライズプレゼント
R-Design専用グロッシーブラックのルーフレール
リアスポイラー
リアのピラーに「R-Design」のロゴ
ボルボを特徴づけるリアコンビネーションランプ
リアバンパーまわり。スキッドプレートも付いている
リアの「T5」「R-Design」「AWD」のバッヂ
インパネまわり。オレンジ色のフロアカーペット&ドアトリムはR-Designモデルにオプション設定
運転席まわり
全車標準装備のデジタル液晶ドライバー・ディスプレイ
R-Designのシート表皮は専用ヌバック/ファインナッパレザー。白いステッチが入る
シート操作は電動
センターアームレスト下に広い収納スペース。前方はリッド付きのダストボックスとなり、ダストボックス部分は取り外しも可能
シフトノブはさりげないデザイン
センターコンソールに2本分のドリンクホルダー
qi(チー)対応のスマホのワイヤレス充電は、Inscription以外のグレードにオプション設定
harman/kardonプレミアムサウンド・オーディオシステムは、Inscription以外のグレードにオプション設定。ベーシックなT4には設定されない。フロントドアにトゥイーターを装着
ダッシュボード上にセンタースピーカーを装着。ウーファーはワイパー付近にある。計13スピーカーのサウンドシステム
センターコンソール助手席側の小物入れ
グローブボックス。フックを出すこともできる
フックを出してグローブボックスを閉めたところ
ダッシュボード助手席側のデコレーション。小物を置くことも可能
フロントドア内側。フェルト地が貼られた大きめのポケットと、オートウィンドウのスイッチ
リアドアにはスピーカーが付く。フロントドアと同様にフェルトの小物入れも
オプションのチルトアップ機構付電動パノラマ・ガラス・サンルーフが装備されていた
リアシート。3人がけの設定
リアにエアコン吹き出し口。2ゾーン・フルオートマチック・エアコンはベースとなるT4以外に標準装備
リアシート横にも収納スペースを付けるこだわり
フラットで使いやすそうなラゲッジスペース
6:4分割のリアシートを前方に倒し、スペースを拡大できる
ラゲッジからシートを倒すためのボタンを備える
フロアパネル下のサブトランクにトノカバーを収納可能
ショールーム奥に並ぶ、XC60(左)とXC90(右)