CES2014

NVIDIA「Tegra K1 VCM」のデジタルメーターパネルを映像で紹介

Tegra K1タブレットで、リアルタイムな開発が可能

Tegra K1 VCMでリアルタイム描画されるデジタルメーターパネル
2014年1月5日発表(現地時間)

Tegra K1の2つのバージョン

 NVIDIAは1月5日(現地時間)、自動車にスーパーコンピュータ並の処理能力をもたらすという「Tegra K1」を発表。「2014 International CES」にあわせて米国ネバダ州でプレスカンファレンスを開催し、デモなどを披露した。本記事では、デモの様子を動画で紹介していく。

 Tegra K1は、32bit Cortex-A15 CPUコアを4つ、Keplerアーキテクチャを採用したGPUコアを192個搭載するSoC(System On a Chip)。自動車向けには周辺回路も加えたVCMというモジュール形態で提供され、後にCPUに64bit Denverコアを2つ搭載するバージョンも加わる。

 プレスカンファレンスで実施されたデモを映像で紹介していく。

NVIDIA Tegra K1 デジタルメーターパネル
NVIDIA Tegra K1 デジタルメーターパネル(拡大)

 この2つの映像は、Tegra K1 VCMを搭載するデジタルメーターパネルの動作の模様だ。右にスピードメーター、左にタコメーターがあり、いずれもアナログ指針のものとなっている。メーターパネルのスペックは、1920×720ドット。現在家庭用テレビの主流となっているフルHDサイズの液晶は1920×1080ドットの解像度を持つので、高さ方向が2/3になっているというわけだ。

 見ていただきたいのは、アナログ指針がスムーズに動作することと、後に紹介するUI Composerにより、リアルタイムに表示が変わっていくところ。メーターパネルを構成する各パーツの質感、メーターパネルに投影される環境光などをさまざまに変化させてデザインを検討できるほか、3Dデータで描かれているのでさまざまな角度から見ることが可能だ。

 これだけのことができるのは高いグラフィックス処理能力を持つためで、タコメーター部などでは透過処理したベースパーツを持つ様子が見て取れる。

NVIDIA Tegra K1 UI Composer操作デモ

 この映像は、デジタルメーターパネルをデザインするアプリケーションであるUI Composerの操作デモ。Tegra K1が搭載されたタブレット端末で、デジタルメーターパネルの構成部品(ひとかたまりのグラフィックスパーツ)である各オブジェクトを操作できる。各オブジェクトに対しては、テクスチャを指定するだけで表面の質感を変更でき、複雑なシボを持つレザーや、反射率の異なるクロームなどを指定していた。

 これまで自動車メーカーは、目的のメーターパネルを作るために、デザインこそコンピュータによる恩恵を受けていたものの、製品への落とし込みの際に実際に素材を揃えて試作する必要があったりした。もちろん、製造する際にはメーターパネルの部品点数分さまざまな素材や工程が必要で、故障の要因も多数存在した。

 デジタルメーターパネルであれば、自由なデザイン、自由な機能を付け加えることができ、さまざまな情報を表示することもしないこともできる。誰もが分かっていたことなのだが、これまではそれを実現するコンピューティングパワーユニットが世の中に存在しなかった。詳細な描画能力は発表されていないが、Tegra K1 VCMであればフルHDクラスの描画を、60フレーム/秒以上で実現できるものと思われる。

 もちろん、これまでの物理的なメーターパネルであれば、故障する要因は多いものの、故障する個所は針が動かなくなるなど限定的であったのに対し、デジタルメーターパネルはすべてが表示されなくなる可能性が存在する。しかしながら、部品点数の減少による故障要因の削減も大きく、信頼性を高めていくのが容易だろう。なによりも、圧倒的に自由度の高いドライバーとのコミュニケーション手段が得られるのが魅力となる。ドライバー自身にカスタマイズ機能を提供するかは自動車メーカーの考え方や、その国の法律にもよるのだろうが、その可能性を手に入れることができるのは間違いない。

NVIDIA Tegra K1 先進運転支援システム(ADAS)の例

 最後の映像は、先進運転支援システム(ADAS)の例。スバルのEyeSight(アイサイト)に代表されるような「ぶつからない?クルマ」を実現するためには、クルマのまわりの環境をカメラや各種のセンサーでリアルタイムに把握する必要がある。とくにカメラによる画像認識は、高い処理能力を要求される部分で、カラーや高解像度になれば、それに比例する形で処理すべき情報は増えていく。Tegra K1 VCMは、192個のGPUを持つことで、高い画像処理能力を提供。このデモ映像では、前走車を認識し続けているほか、レーンの認識も実施。速度制限標識も認識し、映像には映っていないものの、自転車の認識も行っていた。

 この認識結果を、ブレーキ動作やステアリング操作、警告表示にどうつなげていくかは各自動車メーカーや自動車部品メーカーの作り込みによるのだが、まずは画像などを高速で処理する能力が必要になる。Tegra K1 VCMはその基本的な処理能力を192個のGPUで、自動車の世界にもたらしてくれるものと言える。

編集部:谷川 潔

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