CES 2016

自動レーンチェンジ可能なヴァレオの半自動運転「Cruise4U」をラスベガスのハイウェイで体験

走行動画掲載。SCALAレーザースキャナと単眼カメラで実現

2016年1月6日~9日(現地時間)開催

ヴァレオの半自動運転システム「Cruise4U」で手放しの自動レーンチェンジをラスベガスで体験

 CESで自動運転のデモを積極的に行なってきた自動車メーカーの代表がアウディとするならば、大手自動車部品メーカーの代表はフランスに本拠地を置くヴァレオになる。ヴァレオは2014年のCESでスマートフォンと連動する自動駐車システム「Park4U(パーク・フォー・ユー)」をデモ。翌年となる2015年のCESでは市街地の自動走行システムをデモしていた。

 そのヴァレオが2016年のCESでデモしたのは、半自動運転システム「Cruise4U(クルーズ・フォー・ユー)」を用いたハイウェイでの自動レーンチェンジ。高速道路を走行中にウインカーを操作すると、自動でレーンチェンジしてくれるというものだ。

 自動運転に詳しい方なら「市街地の自動運転のほうが難しいのでは?」との疑問が浮かぶと思うが、確かに市街地の自動運転のほうが高度なシステムになる。2015年のデモでは、ヴァレオの代表的な部品である広視野角(約140度以上)をスキャニング可能な「SCALAレーザースキャナ」を中心に、さまざまなセンサー、カメラを付加することで市街地の自動運転を実現していた。2015年のCESでその自動運転車に同乗することができたが、その完成度はそこそこ高く、市街地の車線(ラスベガスでは銀色の鋲状のドット3つほどが1組になっている。以下、ボックスドット)をしっかりと認識。たまにボックスドットを見失うものの、仮想的なルートを計算で構成し、ボックスドットで構成される車線内をしっかり走ることができていた。

 2016年のデモは、フロントバンパー下に設置したSCALAレーザースキャナに単眼カメラを加えた2デバイスのみで、ハイウェイの高速走行と自動レーンチェンジ(前述のように、車線変更のきっかけは人が指示する)を行なうものだった。つまり、ヴァレオは自動運転に必要な部品を削減し、コストを大幅に抑えたシステムを提案してきたのだ。2015年のシステムにおけるカメラの車線認識はヴァレオ独自のものだったが、2015年3月に単眼カメラの認識処理に定評のあるMobileyeと技術協力に合意。CES 2016でのデモシステムのカメラはMobileye製となり、Mobileyeとヴァレオで認識システムとコントロールシステムを作り上げている。

 Mobileyeは単眼カメラによる先進安全運転支援機能に定評のあるメーカーで、OEM先は日本メーカーだけでも三菱自動車工業、本田技研工業、日産自動車が公表されており、世界中の自動車メーカーがすでに衝突防止機能などで利用している。

 ヴァレオの選択は得意な技術に開発リソースを注ぎ込み、実用化を加速させるというものだろう。

ヴァレオの自動運転体験用のブース
世界中のメディアなどが自動運転を体験していた
フロントバンパー下にSCALAレーザースキャナ
フロントウィンドウ上部にMobileyeの単眼カメラ
室内に両デバイスのモニタ。右下の白い曲線はSCALAレーザースキャナの検知限界と思われる。意外と広いのが分かる

 実際のシステムの動作は映像を見てもらえれば分かるとおりだが、車線(ハイウェイはペイント)を認識すると、中央のマルチインフォメーションディスプレイに車線が白色で表示される。車線変更可能なものは点線、不可能なものは実線で表示されていた。この段階でクルーズ・フォー・ユーのシステムをONにすると、車線がオレンジ色に変わり、車線内でのオートクルーズが始まる。前方の車両はもちろん、周辺(約140度)までも認識しており、手放し運転での走行が可能だ。

動画撮影用のアクションカムはこの位置に設置
ヴァレオの半自動運転システム「Cruise4U(クルーズ・フォー・ユー)」
車線を認識
クルーズ・フォー・ユー作動
手放し運転開始

 この段階で、車線変更可能なオレンジ色の点線であり、さらに車線変更可能なルートが存在(車線変更可能な余地がある)すると矢印が出る。ここでドライバーが車線変更をウインカーで指示。自動レーンチェンジをすることができる。

 このシステムでは後方や側方を監視していないため、車線変更の決定権はドライバーにある。そのためヴァレオでは“半自動運転”と言っているが、監視デバイスの追加で自動運転につながっていくものであることは明らかだ。半自動駐車システム(ステアリング操作は自動で、アクセルは人間がコントロール)の普及がすでに始まっていることを考えると、ヴァレオの半自動運転システムであるクルーズ・フォー・ユーも、例えば日本ではステアリングホイールに手を添えておけばOKという形で普及していくことになるのかもしれない。

 正直、SCALAレーザースキャナと単眼カメラでここまでのコントロールができるのは素晴らしいことだと思う。途中、一瞬車線を見失うことがあったが、そもそもラスベガスの車線はコンクリート路面とのコントラストなど条件のよいものではない。日本の高速道路であれば、車線は白線でしっかり整備されており、ラスベガスのハイウェイに比べれば条件は遙かによく、しかもきちんとメンテナンスされている。悪天候や夜間、それに突然の降雪路面などの際にどうするのかなどの問題があり、完全に機械に任せた状態(手放し運転)でのレーンチェンジはまだ先になるほか、システムの価格の問題もあるだろうが、日本でも多くの量産車で半自動レーンチェンジが装備される日は近いと思えた試乗だった。

自動運転システム作動中だが、車線変更禁止エリアのため、全車速追従でのオートクルーズ走行中

編集部:谷川 潔

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