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曙ブレーキ、磁性体のせん断応力でブレーキ力を生む「MR流体ブレーキ」開発

2020年の実用化を目指して研究開発。摩擦粉を出さず、俊敏で安定した制動を実現

2016年8月10日 発表

試作品の「MR流体ブレーキ」を搭載した超小型モビリティの実験車両

 曙ブレーキ工業は8月10日、東北大学 流体科学研究所(中野政身教授)と共同で研究開発を進めている新技術「MR流体ブレーキ」を発表した。

「自動車の電動化への対応と地球環境に配慮した製品として、摩擦に頼らない新発想のブレーキ」とするMR流体ブレーキは、磁気に反応して液体から半固体に特性が変化するMR流体(Magneto Rheological Fluid)をコア技術として採用。車体側の固定円盤とハブベアリング側の回転円盤が交互に配置されたあいだにMR流体を充填する構造となり、ブレーキ内部に用意した電磁石のコイルに電流を流すことで2つの円盤と垂直方向に磁界が発生。固定円盤と回転円盤のあいだに鎖状粒子クラスターが形成され、回転円盤が動く力で鎖状粒子クラスターがせん断変形によって崩壊し、隣のクラスターとつながることをくり返すなかで回転円盤に抵抗力が発生。この抵抗力をブレーキ力に利用する仕組みとなる。

MR流体ブレーキのブレーキユニット
2つの円盤のあいだに発生する鎖状粒子クラスターのせん断変形でブレーキ力を発生させる

 このため、MR流体ブレーキでは摩耗による摩耗粉が発生せず、環境負荷が軽減されるほか、磁場に対してMR流体が1000分の1秒単位で反応することから俊敏で安定した制動制御が可能になる。さらに起磁力の電圧を電子制御装置でコントロールすることで、ユーザーが自分好みのブレーキフィーリングを選べるようになるとしている。

 曙ブレーキでは約2年前から超小型モビリティを対象に研究開発を始め、2015年3月に試作品を完成させた。今後は「スマートシティ」「スマートモビリティ」に適合する「スマートブレーキ」として、2020年の実用化を目指して実走や台上での試験、改良を重ねていくとのこと。