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トヨタとホンダがもてぎ戦から投入した「スーパーフォーミュラ新エンジン」について解説

8月27日に大分、9月3日に熊本でスーパーフォーミュライベント開催

2016年8月20日 開催

スーパーフォーミュラの新エンジンが「ツインリンクもてぎ2&4レース」から投入

 ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)で8月20日~21日に開催された「ツインリンクもてぎ2&4レース」の会場で、このなかで行なわれる「全日本スーパーフォーミュラ選手権 第4戦」から同カテゴリーに新エンジンを供給することになったトヨタテクノクラフトと本田技術研究所の担当者が、新仕様となるエンジンについて変更点や狙いについて語った。

自然吸気エンジンに近づけたトヨタ、全てを新しくしたホンダ

 現在スーパーフォーミュラでは、トヨタテクノクラフトが供給する「TOYOTA RI4A」と、本田技術研究所が供給する「Honda HR-414E」という2種類のエンジンが使用されている。いずれも2.0リッター直列4気筒 直噴ターボで、「NRE(ニッポン・レース・エンジン)」と呼称されているものだ。

 NREでは、燃料流量について8000rpm以上で1時間あたり100kgまで(コースによってさらに絞られる場合がある)という上限規制が設けられている。回転数が上がるにつれて一定時間内に噴射できる燃料が減少し、混合気が薄くなっていくところを、過給器(ターボ)で効率よく燃焼させることでパワーを生み出している。

トヨタテクノクラフト株式会社 TRD開発部 永井洋治氏

 これまでのところ、エンジン性能の面ではトヨタ製のRI4Aがホンダ製のHonda HR-414Eを上まわっているとされており、RI4Aを採用するチームがタイム的にはやや有利な状況にあったようだ。しかしながら、2016年シーズンからはワンメイクタイヤの供給メーカーがブリヂストンから横浜ゴムに変更されたこともあって未知数の要素も増えたことから、現在のチャンピオンシップの混戦につながっていると言える。

 今回のもてぎの第4戦からは、このNREについてアップデートされたエンジンが投入された。トヨタのRI4Aでは吸気と掃気の効率向上などを図るため、吸気系やカムシャフトを変更。さらに高燃焼圧に対応する部品を組み込んだことで、エンジンのレスポンス、ピックアップ、トルク特性を改善したという。トヨタテクノクラフトの永井氏によると、2015年から開発をスタートし、「NAエンジンにより近づけること」と「パワーを上げること」を目標にしたとのことで、「エンジン開発は第2ステージに入った」と語った。

株式会社本田技術研究所 HRD Sakura 佐伯昌浩氏

 一方、ホンダのHR-414Eのアップデートでは、同エンジンを採用するドライバーの好みを吸い上げるところから開発を始めた。本田技術研究所の佐伯氏は、横浜ゴムのワンメイクに変わることから2016年前半仕様のエンジンでは「敢えてドライバビリティに影響しそうな“項目”は除外していた」と明かし、今回の2016年後半仕様のアップデートでは「前半に入れたかった項目、後半に向けて開発してきた項目を全て投入した」と述べた。マップ類、制御データのほぼ全てを新しくして「これまでの実績があまり使えないような大きな変更をかけている」とのこと。

 ホンダのHR-414Eはこの変更により、エンジンパワーがかなり向上しているとみられる。永井氏は佐伯氏に対して「そうとう頑張って“馬”を連れてきたって聞いた」と水を向けると、佐伯氏は数値には言及しなかったものの、「(2016年)後半スペックに関しては、燃焼部分を突き詰めようと(考えた)。燃料流量が決まっているので、それをしっかり燃やして使い切るという部分に集中して開発してきたので、(馬力は)上がっていることは上がっている」と答えている。

2017年はオートポリス戦が復活予定。海外開催も検討を進める

株式会社日本レースプロモーション 倉下明氏

 スーパーフォーミュラのレース運営を担う日本レースプロモーションの倉下氏は、2017年の同シリーズ暫定スケジュールを以下のとおり発表するとともに、今シーズンの8月から9月にかけて行なわれるスーパーフォーミュライベントの概要、海外におけるレース開催の可能性などについても説明した。

2017年 スーパーフォーミュラ年間スケジュール(暫定)
日程場所
第1戦4月15日~16日鈴鹿サーキット
第2戦5月27日~28日岡山国際サーキット
第3戦7月15日~16日富士スピードウェイ
第4戦8月19日~20日ツインリンクもてぎ
第5戦9月9日~10日オートポリス
第6戦9月23日~24日スポーツランドSUGO
第7戦11月4日~5日鈴鹿サーキット

 現時点ではあくまでも暫定であり、今後変更の可能性もあるが、2016年は熊本地震の影響でレースが中止となった大分県のオートポリスは今秋に営業を再開する見込みであることから、2017年のレーススケジュールに組み入れられることになった。

 なお、2016年のスーパーフォーミュラ開催中止の代替となる復興応援イベントとして、8月27日に大分県の大分県立美術館で、9月3日に熊本県のイオンモール熊本でスーパーフォーミュライベントが開催される。大分では元F1ドライバーの井出有治選手、元レースクイーンの春那美希さんによるトークショーが、熊本では山本尚貴選手、石浦宏明選手、春那美希さんによるトークショーと子供向けイベントの開催がそれぞれ予定されており、スーパーフォーミュラマシン「SF13」の乗車体験(子供向け)と「SF14」の展示も行なわれる。

 海外進出については、2011年にシンガポールでスーパーフォーミュラ(当時はフォーミュラ・ニッポン)の開催が検討されたこともある。日本レースプロモーションは現在も海外でのレース開催を模索しており、倉下氏によれば「F1を開催しているなど、モータースポーツに関心のある国であること」「その国のドライバーが(スーパーフォーミュラに)参戦している」といった条件に合う場所を探しているとして、具体例としてインドでの開催を数年前に検討したこともあると語った。

 海外開催の検討を含むプロジェクトは5年のスパンで進めており、シンガポールやインドなどのアジア近隣地域にこだわらず、条件に合致しやすい国での開催を検討していくとした。