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ブリヂストン、ハーレーダビッドソンに適合する「BATTLECRUISE H50(バトルクルーズ エイチゴーマル)」発表会

リアの耐摩耗性を約2.7倍に。ベルテッドバイアス採用

2016年11月30日 発表

クルーザー系バイク向けタイヤ「BATTLECRUISE H50(バトルクルーズ エイチゴーマル)」

 ブリヂストンは、2017年2月から順次発売するクルーザー系バイク向けタイヤの新製品「BATTLECRUISE H50(バトルクルーズ エイチゴーマル)」を発表。11月30日に都内で記者発表会を実施した。

 ハーレーダビッドソンに代表される「Vツインクルーザー系」バイクをターゲットに開発されたこの新タイヤは、これまで同社のクルーザー系バイク向けタイヤ「EXEDRA MAX(エクセドラ・マックス)」がカバーしてきた領域に加え、さらに大排気量エンジンの搭載モデルまで視野に入れて開発。ユーザーから寄せられたロングライフ性能やハンドリング性能、乗りやすさなどを追求し、従来製品となるエクセドラ・マックスから長距離ツーリングでの疲労軽減を果たしているという。2017年2月にフロント4サイズ、リア4サイズの計8サイズを発売し、2018年2月にフロント7サイズ、リア7サイズの計14サイズの販売開始を予定している。価格はオープンプライス。

リアタイヤ
フロントタイヤ
リアタイヤのトレッドパターン
フロントタイヤのトレッドパターン
フロントタイヤのトレッド中央に特徴的なセンターグルーブを設定
前後ともタイヤショルダーの一部に「ダイヤモンドカット」のデザイングルーブを設定

新開発コンパウンドと接地圧分布の最適化でリアの摩耗ライフを約2.7倍に大幅改善

株式会社ブリヂストン MCタイヤ事業部長 武田秀幸氏

 発表会では、ブリヂストン MCタイヤ事業部長の武田秀幸氏から新商品のアウトラインや市場分析などを紹介。武田氏はまず、「ハーレーダビッドソンのジャンルに、残念ながらブリヂストンはこれまでタイヤを持っていない状況です。しかし、日本国内の販売台数を見ても全体の20%ぐらいのウェイトを占めていて、アメリカの販売台数は約18万台で全体の3割ほどの台数をハーレーダビッドソンが占めています。ブリヂストンが本当にオートバイのタイヤのビジネスをしっかりやろうとするなら、ここは絶対に逃げては通れないところかと考えております」と語り、バイク市場で大きな存在感を示しているハーレーダビッドソン向けの製品を新たに手がけることについての市場分析と意気込みを口にした。

 また、「(ハーレーダビッドソンは)300kgを超えるオートバイです。これをもっと低速で、高速でもですけど、もっと取りまわしをよくしたい。あとはVツイン特有の振動は身体にこたえるので、もうちょっと乗りやすい、乗り心地のいいものができないか。さらには摩耗ライフをもうちょっと長いものにできないか。こういったいろいろな悩みをこれまでに聞いてきています。この点にブリヂストンの技術でどう応えていくか。そのようなことをブリヂストンの一員であるモーターサイクルの仲間でしっかりと受け止めてタイヤを造っていこうと決意したのが開発の背景です」と解説。新しいバトルクルーズが目指した解決すべき課題を紹介した。

ハーレーダビッドソンは日本国内で約18%、アメリカでは約31%のシェアを持っていることを説明し、「絶対に逃げては通れないところ」と武田氏は力説
「コーナーリングでの高い操縦性能」「長距離ライディングでの疲労の軽減」「従来品を圧倒するロングライフ」の3点が大きな開発テーマ
ブリヂストンではカテゴリーごとに多彩なバイク用タイヤをラインアップしているが、ここに新しくバトルクルーズを追加。新ブランドを設定したことにより、ユーザーにこれまでとは異なるタイヤであることをアピールする狙い
サイズラインアップと対象車種。2017年2月に先行して8サイズ、2018年2月に14サイズが追加される
発表に先駆けて北米でジャーナリスト向けの試乗会を実施。開発テーマとなった3点についても好意的な感想が寄せられているという
武田氏のプレゼンテーション中に、ステージ中央に置かれた新製品のアンベールが行なわれ、さらに新しいバトルクルーズを装着したハーレーダビッドソン「FORTY EIGHT」を運転して、ステージ脇からバトルクルーズの開発を担当した株式会社ブリヂストン MCタイヤ開発部 設計第2ユニットの時任泰史氏が登場するサプライズ演出も行なわれた
株式会社ブリヂストン MCタイヤ開発部 設計第2ユニット 時任泰史氏

 商品技術の詳しい解説は、開発を担当したブリヂストン MCタイヤ開発部 設計第2ユニットの時任泰史氏が担当。時任氏は開発コンセプトで取り上げられた3点を「摩耗ライフ」「ハンドリング」「乗り心地」というキーパフォーマンスに切り分けて開発を実施したことを紹介。トレッドパターンについては定評のある従来製品のエクセドラ・マックスのものをベースに、ショルダー部分に革製品のステッチをモチーフとした浅い溝による「ダイヤモンドカット」をデザイングルーブとして設定。クルーザー系バイクのマッチするデザインを与えた。

 また、タイヤ形状ではブリヂストン独自のタイヤ踏面挙動の計測・予測・可視化技術「ULTIMAT EYE(アルティメット アイ)」を活用してクラウンRを最適化。リアタイヤではクラウンRをエクセドラ・マックスから少し大きくすることでフットプリント(接地圧分布)を均一化し、設置面積も高めたことで大排気量エンジンの駆動力による負荷を低減。リアタイヤ等に新開発されたコンパウンドの採用と合わせて耐摩耗性能の大幅向上を実現し、エクセドラ・マックスと比較して約2.7倍に向上させたことで、駆動力の影響を大きく受けることでリアタイヤが先に消耗して交換タイミングを迎えるという従来の摩耗バランスを前後タイヤで近づけることに成功した。

 この逆に、フロントタイヤではクラウンRを小さくして、接地長のアップと接地圧の均一化を図り、コーナーリング時に発生するキャンバースラスト(キャンバー角がついたときに発生する横力)を高めてハンドリング性能を向上させた。このほか、前後タイヤともにベルテッドバイアス構造を採用。重い車体を支えることに適した高剛性構造としている。

キーパフォーマンスは「摩耗ライフ」「ハンドリング」「乗り心地」
新コンパウンドはリアタイヤのみに採用。重い車体をベルテッドバイアス構造の高剛性構造で支える
リアタイヤはエクセドラ・マックスで赤く表示されているトレッドパターン中央部分の接地圧が、バトルクルーズでは黄色になって分散。さらに接地部分が広がっていることも分かる
摩耗ライフは従来比約2.7倍となり、リアタイヤが長寿命化するほか、前後の摩耗バランスが適正化される

 3点目の乗り心地では、リアタイヤの縦バネのバネ定数を下げて路面からの入力をタイヤが吸収しやすくしており、エクセドラ・マックスからバネ定数を5%ほど下げることで乗り心地を改善。その一方で横方向の剛性を受け持つ横バネについては従来どおりとしており、縦バネと横バネを構造面で使い分けることで走行安定性をキープしているという。

 このほか、バトルクルーズはチューブレスタイヤとして開発されているが、タイヤチューブの装着によってチューブタイプリムのホイールにも装着可能。開発段階から高速走行時の耐久性などの法規要件についても確認を行なっており、タイヤチューブを使っても安心して使えることをアピールした。

クラウンRを小さくしたフロントタイヤは接地特性の向上で大きなキャンバースラストを発生するようになり、旋回性が高まった
数値としては約5%という縦バネ定数の変化だが、乗ってすぐに分かるポイントであると時任氏は説明
性能変化の解説資料
バトルクルーズはチューブタイプリムのホイールにも装着可能
質疑応答でキャンバースラストの違いについて質問され、会場に展示されていたバトルクルーズを使いながら解説を行なう武田氏と時任氏。時任氏は斜めにしたタイヤを転がして「これがキャンバースラストですね」と実践してみせた