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三菱自動車、カルロス・ゴーン氏を会長に選任する臨時株主総会を開催

「インドネシアで生産予定の『新型MPV』を日産に供給することも検討中」

2016年12月14日 開催

臨時株主総会で選任され、三菱自動車工業株式会社 代表取締役会長に正式に就任したカルロス・ゴーン氏

 三菱自動車工業は12月14日、千葉県千葉市の幕張メッセ 幕張イベントホールで臨時株主総会を開催した。

 今回の臨時株主総会の議案は、第1号「定款一部変更」、第2号「取締役11名の選任」、第3号「取締役の報酬額改定及び取締役に対する株式等関連報酬額設定」の3つ。

第1号「定款一部変更」、第2号「取締役11名の選任」、第3号「取締役の報酬額改定及び取締役に対する株式等関連報酬額設定」の3つの議案が臨時株主総会の開催理由

 第1号議案では、現状の会社の身の丈に合わせて取締役を適正規模の人数にするべく、現在の「40人以内」から「15人以内」に減員。また、取締役会長に代わって取締役会の招集を、代表取締役以外の取締役にも拡大する。第2号議案では、6月24日の定時株主総会で選任された取締役10人全員が任期満了になることを受け、同10人の再任に加えて、10月20日の取締役会で新たに取締役会長に推薦されたカルロス・ゴーン氏を含めた11人に取締役の選任が議題となる。

 第3号議案では、今後の成長戦略に必要な各種専門知識を身につけた優秀な人材を社外や海外から取締役として任命できるよう、報酬額設定を増加させる内容。現在ある「月例報酬」に加え、取締役が管掌する部門で業績などの達成状況に応じて年度ごとに報酬を支払う「業績連動報酬」、譲渡制限付株式や新株予約権を付与するための金銭報酬などを支給する「株式等関連報酬」の2種類を新設するというもの。採決は総会の終盤に実施され、会場に足を運んだ株主のほか、書面やインターネットなどを通じて議決権を行使した株主の賛成多数でそれぞれ可決されている。

6月24日の第47回定時株主総会に続き、幕張メッセが会場となった

お客さまに喜んで買っていただける製品を提供できるような体勢にしていきたい

三菱自動車工業株式会社 取締役 副社長執行役員 山下光彦氏

 臨時株主総会の冒頭では、議長を務めた三菱自動車工業 代表取締役社長の益子修氏が、4月に表面化した燃費不正問題について改めて謝罪し、登壇した役員一同で頭を下げる場面からスタート。議事に先立ち、同社の現在の取り組みについて開発、品質担当の三菱自動車工業 取締役 副社長執行役員である山下光彦氏が報告を実施。

 山下氏は同社が長年に渡って行なってきた燃費不正の問題について、4月20日の公表以降の流れなどをふり返って説明。現在は特別調査委員会から提出された調査報告書の内容などを受けて作成した31項目の再発防止策を実行に移していると語り、具体的な見直し内容としてこれまで「PX(プロダクト・エグゼクティブ)」と呼ばれるリーダーが各項目のプロジェクトマネージャーをまとめ、1人ですべてを取り仕切っていたPX制を見直し、収益について責任を持つ「PD(プロダクトダイレクター)」、商品力確保に責任を持つ「CPS(チーフプロダクトスペシャリスト)」、品質やコスト、納期などに責任を持つ「CVE(チーフビークルエンジニア)」という3人のリーダーを領域別に設定。3人体制で負荷と責任を分散することになっている。

 また、主要な課題に対しては各種委員会を設置し、関係者が集まって議論する場を組織化して取り組みを推進。従業員の意識調査も定期的に実施することになり、社員1人1人が会社の現状をどのように認識しているかを把握して経営にフィードバックする。これに加え、これまでは経営陣が開発部門に関与することが少なかったとの指摘を受けていることから、開発部門の業績の月次報告など4つのシステムを制度化して経営側が開発現場を把握できるようにしている。

 報告の最後に山下氏は「燃費不正問題の直接的な再発防止にとどまらず、これを機に会社内部を立て直して、いまいちどお客さまに喜んで買っていただける製品を提供できるような体勢にしていきたい」と締めくくった。

冒頭で登壇した役員一同で陳謝
山下氏から燃費不正問題の再発防止に向けた取り組みを解説
6月24日に開催された株主総会までの流れ
問題点の洗い出しを行ない、再発防止策と取りまとめた
31項目に渡る再発防止策の一覧
再発防止策は4つの領域に細分化
1人に責任と負荷が集中してしまうPX制を見直して、3人の責任者が力を合わせる開発体制を新採用
副社長以下の組織体制も、階層を減らしてフラット化した
取り組むべき大きな課題ごとに委員会を設置
人材育成についても管理職まで含めて再構築
意識調査は1回目がすでに終了し、結果を集約中とのこと
経営陣も開発現場に積極的に関わっていく体制を整えている
三菱自動車工業株式会社 取締役 副社長執行役員 池谷光司氏

 山下氏に続いて登壇した財務、経理担当の三菱自動車工業 取締役 副社長執行役員である池谷光司氏は、今年度上期の決算関連の情報や通期見通しなどを紹介。上期は赤字となってしまったが、下期はなんとしても黒字にして業績改善に取り組んでいくと宣言。また「一企業としてこのまま沈んでいるままではいられません。下期には確実な黒字化を果たし、業績V字回復に向けた足がかりにしたいと思います。当社は日産自動車との資本提携を機に、会社の仕組みや経営管理プロセスを抜本的に見直して生まれ変わろうとしています。こうした変化を着実に収益力の底上げに繋げ、日産自動車とのシナジー効果も加わる来年度以降、業績回復を加速させていきたいと考えています」と池谷氏はコメントした。

日産自動車との資本提携で、ノウハウや人材での支援も受けられるようになる
三菱自動車が得意とするPHEV技術を日産だけでなくルノー向けにも提供することのほか、インドネシアでの生産を予定する「新型MPV」を日産に供給することも検討を始めたという
従来は部門別に分かれていた組織を昨日軸で分ける新しい会社の形も提携による効果だとアピールされた
議長を務めた三菱自動車工業株式会社 代表取締役社長 益子修氏

 決議に入る前の質疑応答では、5月に行なわれた日産との資本提携の会見で益子氏の顔に笑みがあったことが指摘され、このときの心中について質問された益子氏は「自動車産業は今、大きな転換期を迎えていると認識しています。1つは世界各国で強化されている環境規制への対応、加えて自動運転やコネクテッドカーに代表されるIT技術への取り組みが求められています。これらの新しい技術に挑戦して結果を出していかなければ、企業は生き残っていくことが難しいと考えます。次に、これまで自動車メーカーの競争相手はほかの自動車メーカーでした。つまり、自動車産業のなかで約100年間競争してきたわけです。しかし、最近では自動車産業以外の業種からの挑戦を受けるようになりました。Google、Apple、テスラといったところが挙げられます。テスラはすでに独自に電気自動車を開発し、生産・販売を行なっています。最近では掃除機のメーカーとして有名なダイソンが電気自動車の開発を宣言。英国政府も支援を表明しています」。

「厳しさを増す競争環境のなかで、私どものような規模の自動車メーカーがすべての新しい技術開発に挑戦し、結果を出していくことには限界があり、現実的には無理であると言わざるを得ません。今回の日産自動車との資本提携は、燃費不正問題がきっかけとなりましたが、私どもはそれ以前の段階から『本当に1人で生きていけるのか』という問題をずっと問い続けていて、結論としては信頼できるパートナーとの提携が不可欠であると判断し、軽自動車やクルマのOEMなどの協業でお互いに理解の度合いを深めていた日産自動車との資本提携を決断しました。今回の提携は、私どもの判断としては自然な流れであり、最良の選択であったと思います」と語っている。

 また、上期での赤字をどのようにして黒字化するのかという問いに対して、財務、経理担当の池谷氏は、まず上期の赤字の要因となった1660億円の減益が、為替で円高が進んだことにより910億円ほど利益押し下げの影響があったことを紹介し、さらにリコールに関連して320億円などの特別損失があり、減益の大半が外的要因にあることを説明。

 今後については国内販売も回復基調を取り戻しており、2017年にはインドネシアとフィリピンに新工場の立ち上げを予定しているなど、三菱自動車にとって大きな市場となっているアジア諸国を中心にトライすることで収益を高めていきたいと述べている。

3つのコミットメントによって三菱自動車を成長させ、株主の価値増大に取り組むと語るゴーン氏

 このほか、総会の終了時に三菱自動車工業の代表取締役会長に正式に就任したカルロス・ゴーン氏が就任の挨拶を実施。ゴーン氏は会長として株主の利益を守り、会社の持続的な成長を果たすため3つのコミットメントに取り組むと語る。1つめは燃費不正問題で損なわれた信用を取り戻すこと、2つめはルノー・日産アライアンスのスケールメリットを活用して会社を黒字化し、持続可能な成長軌道に乗せること、3つめは三菱自動車のアイデンティティを尊重し、三菱自動車の持つ強みを生かすと同時にアライアンスをつうじて進化させ、成長と株主価値の増大に取り組むことを紹介。今日が三菱自動車再生に向けた新しい幕開けであると位置付け、取締役会、マネジメント、従業員が強い決意を持って取り組むことで明るい未来が待っていると信じているとコメントしている。