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タカタ、民事再生手続に至った経緯について高田重久 代表取締役会長兼社長が会見

キー・セイフティー・システムズ支援のもとで事業再建を目指す

2017年6月26日 開催

民事再生手続開始の申し立てを行なったタカタ幹部が記者会見を開催

 タカタは6月26日、取締役会において民事再生手続開始の申し立てを行なうことを決議。同日に東京地方裁判所に申し立てを行ない、同日受理されたことを発表した。

 同時に連結子会社であるタカタ九州およびタカタサービスについても民事再生手続開始の申し立てを行なうとともに、米国子会社であるTK Holdings Inc.(TKH)を含む海外子会社12社についても、6月25日(米国東部時間)に米国連邦倒産法第11章(チャプター11)に基づく再生手続開始の申し立てを行なうことを決議。同日付で米国デラウェア州連邦破産裁判所に申し立てを行なった。

 タカタは今後、外部専門家委員会からスポンサー候補として推薦を受けたキー・セイフティー・システムズ(KSS)の支援のもとで事業再建を図ることを予定している。KSSは、タカタの海外を含む実質的全資産および事業を15億8800万米ドルで取得することを発表している。

 6月26日、タカタ 代表取締役会長兼社長の高田重久氏らが出席する記者会見を実施した。

会見に臨んだタカタ株式会社 代表取締役会長兼社長の高田重久氏
取締役兼執行役員会長室長事業再生担当の吉田勉氏(左)、取締役兼執行役員品質保証本部長兼営業本部長の清水博氏(右)

資金繰りが持たず、製品の安定供給ができなくなるリスク

 タカタはシートベルト、エアバッグなど自動車安全部品の製造などを行なっており、近年では世界における自動車安全部品のトップメーカーに上り詰めた。

 しかし、2007年ごろからタカタグループが製造したエアバッグにおいて、膨張ガスを発生させてエアバッグを膨張させる部品のインフレータが破裂し、破裂したインフレータの金属片で死亡事故が発生するなど、インフレータ関連の不具合が判明した。そのため2008年11月以降、各自動車メーカーはタカタグループが製造したエアバッグを搭載する車種について、不具合の有無およびその原因を調査するためにリコールを繰り返し実施してきた。

 それを受けてタカタグループは信用収縮とともに資金繰りの悪化に追い込まれ、さらに2015年11月、TKHが米国運輸省道路交通安全局との間でエアバッグ製品に係る一連のリコールに関して同意指令に同意し、TKHは7000万米ドルの民事制裁金を支払う義務を負うことになった。また、タカタは2017年1月、米国司法省(DOJ)との間でインフレータの性能検証試験にかかる自動車メーカーに対する報告の不備の問題に関して司法取引に合意し、これにかかる司法取引において2500万米ドルの罰金を科され、さらにインフレータの不具合による被害者の損害補償のための1億2500万米ドルの補償基金拠出義務を負い、各自動車メーカーの損害補償のため8億5000万米ドルの補償基金拠出義務を負うこととなった。

 タカタでは、こうした問題に対応するため、2016年2月に再建計画を策定することを目的に外部専門家委員会を設立。グローバルに事業会社・ファンドにコンタクトした結果、支援金額、手続の安定性等の観点からKSSをスポンサー候補に挙げた。

 こうした状況のなか、主要債権者等のステークホルダーやスポンサー候補と複数回にわたって協議したものの、私的整理による再建計画についての合意を得られなかったため、現状を放置したまま事業を継続した場合、早期に資金繰りが破綻することが必至の状況になったとしており、「資金繰りの破綻が現実化した場合、製品の安定供給も危機にさらされ、当社の企業価値は著しく毀損し、スポンサーの支援を受けることや各種自動車メーカーや金融機関等からの協力を受けながら事業再生を目指す途が絶たれることとなり、債権者の皆様を始めとする関係各位に対してより多大なご迷惑をおかけすることが想定された」という。

 そして6月26日、外部専門家委員会から再建スキームとして、日本において民事再生手続、米国においてチャプター11に基づく再建手続を利用することが相当であるとの意見を受け、タカタは上記外部専門家委員会の意見も踏まえ、民事再生手続開始の申し立てを行なうことを決議。KSSとの間で事業譲渡に関する基本合意を締結したうえで、民事再生手続の中で主要自動車メーカーから資金繰り支援を得るとともに、金融機関からのDIPファイナンスを得ながら事業再建を目指すことになったと報告されている。

記者会見には多くの報道陣が集まった
高田氏は会見で経営責任を取って辞任する意向を示した

 6月26日に行なわれた記者会見にはタカタ 代表取締役会長兼社長の高田重久氏、取締役の吉田勉氏と清水博氏らが出席。

 会見の冒頭、高田氏は「タカタ並びに連結子会社2社は、本日東京地方裁判所に民事再生手続開始の申し立てをいたしました。また、弊社の米国子会社を含む海外子会社12社においても、米国における法的再建手続きであります、いわゆるチャプター11に基づく手続きの申請をいたしました。これまでご支援とご協力をいただきましたすべての関係者の皆さま、債権者の皆さまにご迷惑をおかけすることになり、タカタを代表しまして心より深くお詫び申し上げます」として深々と頭を下げた。

 今回の申し立てに至った経緯については、「平成19年ごろからエアバッグの部品でありますインシュレーターの不具合により、残念ながら事故が発生しました。弊社は不具合の原因究明や製品改良に努めてまいりましたが、リコール債務の拡大ならびに米国における訴訟等により弊社の経営環境は厳しさを増してきました。その結果、次第に大変厳しい状況に追い込まれていくことになりました。弊社が取り扱わせていただいているのは自動車の安全部品でありますので、弊社といたしましては製品の供給をぜひとも継続していかなければなりません。昨年2月、弊社の再建計画を作成していただくため外部専門家委員会を設立いたしました。弊社としましては、民事再生手続等の法的再建手続ではなく、同意に基づく私的整理による解決が先ほど申しました製品の安定供給継続にもっとも望ましいと考えておりました。また、外部専門家委員会も同様の考えのもと、再建計画策定プロセスを進めてきたものと考えております」。

「しかしながら、時間をかけて協議を重ねてまいりましたが、世界各国の10社以上の自動車メーカー様ならびにスポンサー候補との間での合意に達するというのは極めて困難なことでございました。自動車メーカー様との合意に至らないまま、残念ながら米国司法省との合意による多額の罰金による負担や、一部報道等によるサプライヤー様との取引状況の悪化に加え貴重な人材の流出の懸念が重なり、また取引金融機関様の弊社に対する姿勢も大変厳しいものになってまいりました。このままでは資金繰りが持たず、製品の安定供給ができなくなるリスクがあると認識しています」。

「そのようななか、弊社の置かれている環境やスポンサー候補並びに各自動車メーカー様との協議の状況、外部専門家委員会の意見等を踏まえ、取締役会にて民事再生手続開始の申し立てを行なうことを決議し、本日東京地方裁判所に申し立てを行なうこととなりました」と説明を行なった。

 今後については、KSSに事業譲渡が実行できれば再建の見通しはつくとしており、「事業譲渡等の実行までの適切な時期に、私は経営責任を取って辞任し、次期経営陣に引き継ぐ所存でございます。弊社の再建をより確かなものにするために、各自動車メーカー様にもご協力をお願いしてまいりましたが、この点につきましては各自動車メーカー様も製品の安定供給のため、弊社の事業継続を支援する意向を示していただいています。具体的には今後も取引を継続していただき、また支払いサイトの短縮等により資金繰り等の支援をすることを表明していただいています」と述べるとともに、「皆様からのご協力により、弊社は資金繰りに不安なく製品の安定供給を継続できると考えています。取引先様、その他のステークホルダーの皆様におかれましても、ぜひとも弊社製品の安定供給継続にご協力を賜りたくお願い申し上げます」として説明を終えている。