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SUPER GT第2戦 富士、予選でフロントローを独占したNSX-GTの開発エンジニア 佐伯氏に聞く

2020年8月8日~9日 開催

SUPER GT第2戦 富士の予選でポールポジションを獲得した8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)

 SUPER GT 第2戦 富士が、8月8日~9日の2日間にわたって富士スピードウェイで開催されている。8月8日には予選が行なわれ、GT500クラスは8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)がポールポジションを獲得。2位にも17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)が入り、ホンダ NSX-GTがフロントローを独占した。

そのホンダ NSX-GTの開発をリードする本田技術研究所 HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏に、開幕戦の評価と第2戦の好調な予選について聞いた。

ホンダ NSX-GTの開発をリードするHRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏

開幕戦の決勝ではズルズルと後退。セットアップに課題があったホンダ陣営

──開幕戦、そして第2戦の予選までを振り返っての感想を。

佐伯氏:このクルマを作るにあたり、実走テストが新型コロナの拡大で中止になるなどの影響もあり、今シーズンはレースを戦いながら直していくしかないと考えていた。開幕戦は予選はよかったが、決勝レースではズルズルと後退するようなレースになってしまった。今回のレースに向けては、ホンダとチームが一丸になってセットアップを見直してきたことが、予選でフロントローを独占する結果につながったと考えている。それはよいことだが、レースではまた別の話なので、期待もあり、不安もある。

──前回のレースで優勝したトヨタのドライバーは、ホンダ勢が後退したのはタイヤ選択ではないかと示唆していた。今回のレースでポールを取った8号車の野尻選手に予選後の会見でその点について聞いたところ、前回のレースでズルズルと後退したのはタイヤ選択の影響はそんなに大きくなかったと言っていた。佐伯氏の評価は?

佐伯氏:同じブリヂストンを履いている車両でも、種類が違うタイヤを使っており、2台ともズルズルと下がっていったということは、セットアップにも課題があったと考えている。ウインターテストでもロングをやってて落ちるような状況があったり、開幕戦に関してはセットアップと路面温度が大きく影響を与えていると考えている。セットアップで対処していくしかない。

──決勝レースではタイヤチョイスは奏功するか?

佐伯氏:各タイヤメーカーともそうだと思うが、ものすごい種類のタイヤがあり、その中から気温などに合わせたものを持ってきている。しかし、それは気温や路面温度次第だ。

──昨シーズンのミッドシップNSX-GTではピックアップが課題の一つといわれていたが、FRになってからはどうか?

佐伯氏:一部ドライバーのコメントにもあったが、開幕戦ではピックアップが課題として上がってきていたことは事実。今回はそれを対策したセットアップを施しており、その課題を解消できると考えている。

決勝レースに向けては表彰台を目指して着実に戦っていく

──セットアップに関する車体面での変更点を教えてほしい。

佐伯氏:今年はレギュレーションで、車体やエンジンをいじることはできない。従って、サスペンションジオメトリなどのセッティング面で対応していく必要がある。開幕戦では、GRスープラのストレートでのスピードがとても速く、それはまずいねという話になっているので、それに近づけようというセッティングを施している。エンジンに関しては「塵も積もれば山となる」式の積み上げを毎レースやっており、それと同時に速度が300km/hになると対空気という部分が重要になるので、空力のセッティングを調整して対処している。

──昨年もNSX-GTは予選はよかったが、決勝ではというレースが多かったが?

佐伯氏:それを言われると、心配で今晩眠れなくなる(苦笑)。今のクルマはまだ道具として完全に使いこなしていない部分があり、テストができない現状ではレースウィークで徐々に強さというのを出していくしかないと考えている。予選一発は確認できたので、決勝レースで強いクルマを作れるようにセットアップを見つけ出していく必要がある。

──土曜日の午前中の公式練習でも連続走行ではわるくないタイムを出していたように見えたが……。

佐伯氏:そんなにわるくないと評価している。しかし、実際にレースになると、路面も汚れてくるし、GT300も抜いていかないといけない、その時にどうなるのかを見ていかないといけない。

──ホンダのGT500のドライバーラインアップを見ると、牧野選手や福住選手などの若いドライバーが増えている。そうした若手が増えたことの影響をどう評価しているか。

佐伯氏:予選1回目(Q1)で牧野選手がトップタイムをマークするなど間違いなく若手がしっかり機能しつつあると評価している。しかし、GT500のレースでは経験値も必要になってくる。そこでベテランのドライバーが若手をしっかり指導しながらやっていけば明日につながると考えている。

──他メーカーも含めて、決勝レースに向けての展望を。

佐伯氏:日産さんも修正してきて、(予選では)4位と5位にしっかり入っている。こうなってくると、この後は拮抗した戦いになる。予選だけよくても、決勝がよくないことには強いことは言えない。まず表彰台をしっかりとっていきたい。