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トヨタ、水を電気分解して水素を製造する「水電解装置」を新開発 FCEV「MIRAI」の技術を活用、デンソー福島工場で稼働開始

2023年3月9日 発表

水電解装置の内部構造

 トヨタ自動車は3月9日、FCEV(燃料電池車)「MIRAI(ミライ)」のFCスタックなどを流用して、水を電気分解して水素を製造する水電解装置を新たに開発したと発表した。今後の普及促進に向けた技術実装の場として、デンソー福島工場において稼働を開始する。

 トヨタが新開発した水電解装置は、「MIRAI」やFCバス「SORA」に搭載しているFCスタックを流用したもので、水を電気分解するスタック「水電解スタック」に使用しているセルは、2014年12月の初代「MIRAI」発売以降、700万枚以上(FCEV約2万台分)の量産・使用実績があるもの。

 スタックのセパレーターにはチタンが採用され、耐食性の高いチタンの特性を活かして水電解装置に求められる耐久性の向上を追求。また、長期にわたり安心して使えるよう、約8万時間の稼働を経ても初期とほぼ変わらない性能維持を目指して開発された。

 水電解スタックの生産過程においては、FCEV用FCスタックの部品及びFCスタック生産設備の90%以上の流用/共用が可能で、これによる量産効果で、今後、普及可能なコストレベルを追求。さらに、長年にわたるFCEV開発で培ってきた技術・知見・経験を活かすことにより開発期間の大幅な短縮が可能としている。

 今後、この水電解装置で製造したクリーンな水素を工場ガス炉で自家消費する「水素地産地消」モデルの構築を目指して取り組みを加速。さらに、こうした水素利活用モデルの構築に向けた取り組み内容を広く公開していく。

 なお、デンソー福島工場における水素利活用は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として実施される。

 トヨタでは、水素を「つくる/はこぶ/ためる/つかう」の各領域において、様々な業界のパートナーとの取り組みを進めており、これまでトヨタは、FCEVやFC定置式発電機、工場での製造時などで水素を「つかう」とともに、水素運搬のためのFCトラックの開発・製造など「はこぶ」活動を進めてきた。今回の水電解装置の開発による水素製造に加え、今後、タイでの家畜の糞尿から発生するバイオガスを活用した水素の製造に取り組むことにより、「つくる」領域での選択肢の拡大を目指すとしている。

外観(デンソー福島工場での設置状況)
水電解装置の構成
スタックの使い方 : 燃料電池(FC)と水電解