トヨタ、“走るスマートフォン”「Fun-Vii」をお披露目
未来の車は「走る・曲がる・止まる・つながる」

豊田社長とFun-Vii

2011年11月28日公開



 トヨタ自動車は11月28日、東京都江東区のメガウェブで「東京モーターショー前夜祭」を開催、同モーターショーに出展する「“つながる”コンセプトカー」である「Fun-Vii」を報道関係者に公開した。

全面ディスプレイとネットワーク接続機能を搭載
 Fun-Vii(ファン・ヴィー)は、「20XX年の未来を具現化したコンセプトカー」とされる。ボディーとインテリアの全面をディスプレイとし、各種のネットワーク接続機能とセキュリティー機能を備える。

 ボディーがタッチパネルディスプレイになっているため、カラーや表示項目を自由に変更でき、情報端末のディスプレイとして使うこともできる。また、Fun-Viiは常にユーザーのスマートフォンと近距離無線通信技術やトヨタ自動車のクラウドサービス経由でつながっており、ユーザーがスマートフォンで好きな画像を選び、スマートフォンをクルマに向かってフリックすることで、ボディーの表示を変更する機能も備える。

Fun-Vii
スマートフォンで選んだ色をFun-Viiに向けてフリックすると、Fun-Viiのボディーカラーがその色になる
SNS「トヨタフレンド」に投稿されたテクスチャをボディーに表示することもできる
カフェの前に停まると、店舗のロゴが表示される。位置情報と連動してデジタルサイネージになる
ボディーのディスプレイにSNSの友人の位置情報を表示したところ
たくさんのFun-Viiが集まったクラブイベント。VJのコントロールで、多数のFun-Viiが巨大スクリーンになる

 インテリアもまた全面ディスプレイのため、インテリアのデザインを自由に変更できるほか、専用サーキットではレースのVR画像を表示し、スリリングなレースを楽しむこともできる。カーナビなどの情報はフロントガラスに直接、AR(拡張現実)技術により表示。対話形式で操作できる「ナビゲーションコンシェルジュ」などの機能を搭載する。

 ドライバー正面に3D投影可能な透過型HUDによるマルチインフォメーションディスプレイを表示、天気やドライバーの健康状態など各種情報を表示できる。

インテリアデザインを自由に変更できる
対話型のカーナビ「ナビゲーションコンシェルジュ」カーナビは車外の光景にオーバーレイしたARで表示されるドライバー正面のマルチインフォメーションディスプレイ
バーチャルレース

 各種のネットワーク接続機能を備えており、トヨタの自動車向けソーシャルネットワークサービス(SNS)「トヨタフレンド」と連携して友人とコミュニケーションできるほか、駆動系、制御系、マルチメディア系の各種ソフトウェアをネットワーク経由で常に最新に保つアップデート機能、周辺の車両やインフラとコミュニケーションして、死角にいるクルマを察知する機能を備える。

 このほか、顔認証やモーションセンサーによるオーナー認証システムや、マルウェアの侵入、不正アクセスなどを防ぐセキュリティシステムを備える。

 ボディーサイズは4,020×1,745×1,415mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2,750mm。乗車定員は3名。駆動エネルギーは電力を想定しており、非接触充電システムを搭載する。

生体認証(顔認証)で解錠できる
充電量など、車両の状態をボディーのディスプレイで確認できる
ディーラーがリモートでクルマの状態を監視し、トヨタフレンド経由でメンテナンス情報などを知らせてくれる

 

スマートフォンにタイヤを4つ
 前夜祭には同社の豊田章男社長が登場、東日本大震災やタイの大洪水と自然災害が続き、「何度も続く試練に心が折れそうになったこともある。しかし今は、こういう時代だからこそ、みんなが明日への希望を見出すことができる、未来の車社会に向けた歩みを進めなければならないと思っている」と述べた。

 同社は4月に米マイクロソフト、5月には米セールスフォース・ドットコムと、立て続けにIT業界のビッグネームと提携、8月にはフォードとハイブリッドシステムと次世代テレマティクスで協業すると発表。トヨタフレンドのほか、スマートグリッド向けエネルギー管理システム「トヨタスマートセンター」といった、自動車が外部と情報をやりとりするための基盤を整備してきた。

 セールスフォース・ドットコムとの提携発表で豊田社長は「クルマは走る、曲がる、止まるに加えて“つながる”が大切」と述べているが、前夜祭においても「未来のクルマは、クルマ単体で存在するのではなく、通信技術によって、住宅をはじめわたしたちの暮らしや社会とつながり、社会の一員になっていくことは、間違いないと思う。同じ社会の一員になるなら、低炭素省エネルギー社会をリードするような役割を果たしてほしいし、私達の友達のような存在として仲間に入ってきてほしい」と、同社のビジョンが“つながるクルマ”にあることを強調した。

マイクロソフト、セールスフォース・ドットコム、フォードと、立て続けに提携

 Fun-Viiについても「マイクロソフトやセールスフォース・ドットコムといった新しいパートナーと一緒に車を作ったら、どんな車になるだろう。いっそのことスマートフォンにタイヤを4つつけたようなクルマがあれば、面白いんじゃないか。そんな発想から、このFun-Viiは生まれた」と、ITをフィーチャーしたコンセプトカーであるとし、「これがクルマ? と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、私はこういうクルマがあってもいいと思う。今、スマートフォンなどの登場で、新しいコミュニケーションの形がひろがっている。クルマだって、情報端末としてのコミュニケーション機能に磨きをかければ、もっともっと楽しく便利になる。そう考えるとクルマの可能性は無限に広がると思う」と述べた。

豊田社長(左)と柳社長

2輪車が「走るセンサー」に
 発表会にはヤマハ発動機の柳弘之 社長も登場。ヤマハ発動機は同日、同社の次世代モビリティが、トヨタスマートセンターとつながり、トヨタの充電スタンド「G-ステーション」などの充電インフラを共有することを発表しているが、その発表の場となった。

 柳社長は同社の2輪車の将来像を「トヨタスマートセンターと情報でつながることで、クルマとバイクがコンシェルジェのようにつぶやき、人、クルマ、バイクがコミュニケーションできる社会になる。家、クルマ、G-ステーションと充電インフラを共有することで、いつでもどこでも電気でつながるより使いやすい乗り物になり、また機動力がある蓄電池としても利用できる」「(つながる2輪車が)走るセンサーとして新しい交通システムを作る可能性がある。2輪+4輪=6輪ライフスタイルやシェアリングなど多様化するモビリティ社会、その中のヤマハの乗り物が、単なる乗り物ではなく、つながる道具として走りまわることで、より身近で楽しくなる未来のモビリティ社会を作りたい」と述べた。

 豊田社長はヤマハ発動機との関係を「かつての2000GTの開発のパートナーであり、LFAでもエンジン開発でご協力いただいた」と述べ、その関係を「伊勢神宮の式年遷宮」に例えた。「式年遷宮は、伊勢神宮で西から東へ、東から西へ、お社を20年に1度変える儀式。これによって職人さんの技能を伝承している。トヨタでも1960年代に2000GTを担当したメカニックが、その20年後にはスープラやセリカを経て、さらに30年後、LFAでは棟梁として活躍した。ヤマハは、私達にとって、スポーツカー開発というトヨタの式年遷宮に欠かせない仲間だったが、これからは未来の車社会づくりの仲間にもなる」。

トヨタとヤマハの“式年遷宮”的つながりの象徴、LFA(左)と2000GT発表されたばかりの86も展示された
まだ正式に公開されていないコンセプトカー達もチラ見せコンパクトHV「アクア」は実車がシャッターの奥にいた

(編集部:田中真一郎)
2011年 11月 29日