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進化し続けるカーナビのトレンドを紹介

増税前に据え置き型カーナビを買うなら、これだけは知っておこう

 消費税増税直前という時期でもあり、Car Watchの読者でもクルマを買い替えた、もしくは新規購入した読者も多いだろう。減税や低燃費などのメリットからエコカーを検討・購入した人も多いかもしれない。しかし、エコカーを購入した場合もそうでない場合も、クルマの購入後に時間や燃料の無駄を減らすことは可能である。何もエコカーを買うことだけがエコなカーライフではないのだ。

 同じ場所に行くにも、道の選び方や運転の仕方でかかる時間やガソリンの消費量が違ってくる。そこで1つ注目したいのが、クルマに装着するカーナビゲーションだ。最近はクルマの購入時にカーナビを装着するケースが多いが、目的地までのルートを引き、日々の運転をガイド・サポートするカーナビも、時間の短縮や燃費に配慮したエコなカーライフにつながる役割を持っているのである。増税前のこのタイミングで、より充実したカーライフを送る為の性能・機能に注目したカーナビ選びをしてみてはどうだろう? 本記事ではガイド企画として、直近のカーナビトレンドを紹介する。

 いまやクルマになくてはならないアイテムとなったカーナビ。ほんの四半世紀程度前までは映画などフィクションの世界にしか存在しなかったモノだけれども、地磁気を利用した最初期モデルの登場後、GPS(Global Positioning System)衛星が出現したことにより、個人が普通に購入できる価格となった。それにより普及に弾みが付き、いまではエアコンなどと同じく設計時からクルマに組み込まれることが当たり前になっている。

 カーナビの登場からこれまで数十年の間に、大きな進化を遂げてきたのはまずハード面だ。CD-ROMからDVD-ROM、HDD、そして今ではフラッシュメモリが一般的に。そして直近の大きなトピックとしては通信機能の装備と充実がある。ここから得られる情報をどのように活かすかが各社カーナビのソフト面、機能面での特徴、差別化ポイントとなっているのだ。通信機能を使ってサーバーにアクセスし、交通情報を取得することで、より早く目的地に到着できるだけでなく、燃費への影響まで考慮したルート案内を実現するなど、エコ機能に注力したモノもあれば、音声認識機能などインターフェイスに通信機能を活用し、従来の同機能と比較して大幅に精度を向上させたモノもある。

世界初のHDD搭載カーナビであるカロッツェリア サイバーナビ「AVIC-H09」。据え置き型カーナビでは必須とも言えるミュージックサーバー機能は、この機種から始まった。2001年発売
サイバーナビがHDDナビに進化した結果、DVDナビはエントリーカーナビに位置づけられた。写真はDVDナビである初代楽ナビ「AVIC-DR100」。2003年発売
2013年発売の最新サイバーナビ「AVIC-ZH0009HUD」。AR HUDユニットに、外部カメラを使ったクルーズスカウター機能、通信モジュール標準装備と、機能満載のカーナビ。十数年でHDDナビはここまで進化した

一時的に人気となったPNDだが

 カーナビのトレンドを語る上で、PND(Portable Navigation Device)に触れないわけにはいかない。一時的にとはいえPNDが人気となったのは、ある意味必然のこと。当時、据え置き型ナビは大容量HDDの搭載によりエンタメ機能の強化を目指していた。それは高価格化も意味する。その一方でPNDは、フラッシュメモリの普及に伴う小型軽量化&地図データを中心としたソフトの充実化、高性能ジャイロの小型化&低価格化などによる精度アップなど、周囲の状況も普及の後押しとなった。クルマを複数台所有するユーザーにとっては、載せ替えて使えるというメリットも大きかった。

 ただ、そういった状況は自らの首も絞めることになる。スマートフォン(スマホ)の出現だ。ほぼ同じようなハードウェア構成で、出荷規模が桁違いとなれば、価格面に限定せずともその勝敗は明らかだった。PNDには車載専用の傾斜・加速度センサーを使った自車位置精度の高さや、据え置き型ナビゆずりの使い勝手のよさといったメリットがあることから根強いファンがいるものの、市場規模は徐々に縮小しつつあるのだ。

 一方のスマホは低価格化と高性能化の恩恵を受け、一気に市場を席巻。ただ、確かに導入コストは低いし手軽ではあるものの、GPS(とWi-Fi)だけを頼りにした精度、収録情報の少なさ、画面サイズなど、物足りなく感じてしまう部分が少なくない。NTTドコモがリリースしている「ドライブネットクレイドル」を使うことで精度の問題はほぼ解決するものの、スマホの手軽さをスポイルすることになってしまう。2DINサイズの据え置き型ナビが取り付けられない輸入車やクラシックカーのオーナーで、ナビの精度やルートにこだわりがある方なら、PNDという選択肢はありだろう。

NTTドコモとパイオニアが共同開発した「ドライブネットクレイドル」。スマホナビの位置精度を高める工夫がされている
PNDは、パナソニックの「ゴリラ」シリーズとユピテルが市場を牽引する。高機能PNDとも言えるパナソニックの「CN-SP735VL」では、GPSのほか準天頂衛星みちびきに対応し、加速度センサーを組み合わせた「Gジャイロ」も搭載。PNDの欠点とも言える精度改善を行っている

据え置き型カーナビのトレンドはネットワーク連携へ

 さて、こうしてライトユーザー向けのナビが世代交代を果たす間、据え置き型ナビはといえば低価格化への圧力を受けながらも、ナニもせず手をこまねいていたわけじゃない。ハード面でいえばPND同様地図データはフラッシュメモリに格納されるようになり、静電式タッチパネル採用によるスマホ的インターフェイスの採用、長らく7型止まりだった画面サイズも8型や9型などへと大型化したものも増えてきた。据え置き型ならではのAV機能も、地デジ化に伴うフルセグ対応チューナーの搭載、iPhoneなどのポータブルオーディオプレイヤーやUSBメモリを使った音楽再生などを実現してきた。

 そして、ここ最近のトレンドといえるのが通信機能の装備やスマホ連携だ。

 価格面で大きく後塵を拝するスマホを利用したナビゲーションに対し、据え置き型ナビのメリットは圧倒的な自車位置精度の高さにある。GPSデータに加え車速パルスや平面だけでなく傾斜角まで測定する高精度のジャイロセンサーを加えることで、トンネルの中だけでなくビル街など都市部でも正確に自車位置を測位できる。そしてレーンガイドなどの交通情報や道路の傾斜データなど、豊富なデータを加味することで分かりやすく、そして的確な案内をしてくれるのだ。

 その半面、大きな弱点となるのがデータの鮮度だ。据え置き型ナビに搭載するデータの収集~商品化には長い期間を必要とするため、最短でも1年程度のタイムラグができてしまう。お店の情報や道路など、日々変化していく情報に対応することができないワケだ。だが、その弱点をサポートしてくれるのが、通信機能やスマホ連携機能なのだ。

 まず、お店など各種スポットの情報については、通信機能やスマホで検索したデータを手軽に据え置き型ナビに送る仕組みが実現している。

 有名どころではデンソーの「NaviCon」、パナソニックの「ここいこ♪」などがある。スマホとの間でやりとりするのは地点データだけなので、据え置き型ナビへ負担をかけることがないのが特長。携帯電話や通信モジュールを使うタイプもあるけれど、利用時のネゴシエーションに時間がかかるし、ナビ画面で操作する必要があるため車内でしか使えないのが難点といえる。

 そして2014年の注目機能といえるのが「自然発話」による音声検索機能。こちらも通信機能やスマホ連携を利用するもので、「近くのイタリアンレストランに行きたい」「人気のあるラーメン屋に行きたい」などの曖昧な内容でも、クラウドを使ってデータを抽出して結果を教えてくれる。通信機能を用いるサイバーナビの「フリーワード音声検索」をはじめ、スマホアプリを使うイクリプスの「CarafL(カラフル)」やケンウッドの「mia(ミア)」、クラリオンの「Intelligent VOICE」などがすでにリリース済み。現状ではまだ完全とはいえないものの、音声の認識率は十分にハイレベルといえ、今後のバージョンアップでさらに実用的になっていくハズ。走行中の安全対策という観点からも対応機が増えていくと思われる機能だ。

富士通テン イクリプスのスマホアプリ「CarafL(カラフル)」。カーナビと連携して音声検索を行うエージェントアプリ
ケンウッドの最新カーナビでは、音声対話アシスタントアプリケーション「mia(ミア)」による対話形式の情報検索・端末操作が可能となっている

リアルタイムのプローブ情報を反映したエコルート機能はこれからのトレンド

 ソフト面ではプローブ情報を利用した渋滞考慮探索(やリルート)が標準化していきそうだ。「スマートループ」でカロッツェリアが先鞭をつけた機能で、ホンダの「インターナビ」、トヨタの「プローブコミュニケーション交通情報」など自動車メーカーも積極的に導入している。ただ、こちらはサービスのために大きな負担が必要となることもあって、先行したカロッツェリアや自動車メーカーが中心となっている。

 プローブ情報の充実で注目されているのがエコ機能だ。当初、PNDから搭載が始まった時は加減速や停止時間などから燃費のわるい運転を判断、ドライバーに注意を促すことでエコ運転をサポートするだけのシンプルなものだった。だが、あるメーカーが一般ユーザーに対して行ったテストでは数%程度の燃費改善が見られるなど、十分に実用的といえる機能になっている。最近ではカロッツェリアのサイバーナビのようにプローブ交通情報に加え、大型車なら幹線道路優先、小型車なら渋滞回避優先などクルマの排気量まで加味したモデルも。目的地に短時間で到着できるのはもちろん、さらに燃料消費の少ないルートで案内してくれるのだ。こういった機能を持つナビを装着すれば、燃費のよいクルマを求めて愛車を手放す必要がなくなる。カーナビを交換するだけである程度の燃費アップが実現できるのだから。

 2014年中というわけにはいかないかもしれないが、今後はさらに一歩進んで道路の傾斜データまで加味して、燃料消費の少ないルートを探索できるようになる方向。道路のアップダウンが燃費(電費)に大きく影響するEVには必須といえる情報ということもあり、データの整備は主要道から一般道へと着実に進行中で、徐々にデータが収録されていくだろう。これも据え置き型ナビの精度の高さあってこその機能といえるため、スマホにはないメリットといえそうだ。

EV/PHV向けカーナビ「AVIC-MRZ007-EV」。神奈川県川崎市の「低CO2川崎ブランド'13」に認定されたエコカーナビ
最も電力消費が少ないルートを走行前に提案する「EV専用エコ・ルート探索」。ガソリンエンジンに対応する探索機能は、楽ナビやサイバーナビが搭載する

インターフェイス面にも新しい波が

 音声検索と同様、安全面からのアプローチとなるのがHUD(ヘッドアップディスプレイ)だ。これもカロッツェリアがサイバーナビで先鞭をつけた機能ながらケンウッド、パナソニックが追従。価格はまだ出始めということもあって手頃とはいえないものの、後から購入可能なものもあることから装着に関してのハードルはずいぶんと低くなっている。実際に使ってみると確かに視線移動が少なくてすみ、なおかつ必要な情報をだいたい把握できるため、利便性はかなり高いといえるレベル。いずれ標準機能として定着していきそうだ。

パナソニックのフロントインフォディスプレイ「CY-DF100D」。ストラーダRシリーズに対応するHUDユニット
カロッツェリアのAR HUDユニット「ND-HUD10」。メモリーナビとして一本化され、通信モジュールも用意されている楽ナビシリーズに対応する

 ちょっと未来予測的なハナシも入ってしまったけれど、据え置き型ナビは着実に進化を遂げている。これら据え置き型ナビの中心価格帯は10万円前後~20万円前後と、5%から8%への消費税増税による価格差は無視できない額。いずれ購入するのであれば、時間短縮や燃費向上の実現でカーライフを豊かにするカーナビを、金額面でもエコに購入検討していただければと思う。

(安田 剛)