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ル・マン24時間、アウディ2号車が優勝、トヨタ7号車は無念のリタイア

2位はアウディ1号車でワンツーフィニッシュ。トヨタ8号車は3位表彰台獲得

みごと2014年のル・マン24時間レースを制したアウディ2号車(マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ)
2014年6月14日、15日(現地時間)決勝

中嶋一貴選手が日本人初のポールポジション

 6月12日(現地時間)に行われたFIA世界耐久選手権(WEC)第3戦ル・マン24時間レースのフリープラクティスで、アウディR18 e-tron quattro(1号車)のロイック・デュバル選手が大クラッシュし赤旗中断となった。これを皮切りに赤旗が頻繁に出され、フリープラクティス、予選1回目、2回目ともスケジュールが頻繁に変更された。公式予選1回目は、ポルシェチームが早々にアタックを決め、1-2体制を構築。しかし、トヨタ、アウディともに本格的なアタックを行ってはおらず、これも赤旗中断の影響ともいえた。

 翌日19時から開始された2回目の予選で、トヨタTS040 HYBRID(7号車)の中嶋選手が暫定トップのタイムを計測して、ポルシェ勢を上回った。アウディは終始他社を上回ることができず、5~7位を3台で争う格好となった。クラッシュしたアウディ1号車は新品のモノコックから作り直され新車状態となり、ドライバーもデュバル選手が抜け、代わりにマルク・ジュネ選手での参加となった。この回も赤旗中断が続き、主催者は急遽3回目の予選を30分前倒しして行うと発表した。

素晴らしい走りを見せたトヨタTS040 HYBRID(7号車)

 そして予選3回目も、トヨタ7号車のアタッカーを務めた中嶋選手が躍進。ただ1人、3分21秒台のタイムをたたき出してポールポジションを決めた。ポールポジション獲得は、トヨタとして1999年に続き2度目、日本人選手として初めての快挙となった。同じトヨタ8号車もタイムを詰めたが惜しくも1-2とは行かず、ポルシェ919ハイブリッド(14号車)に続く3位となった。アウディ勢は3、2、1号車の順で予選を終えることとなった。

ポルシェ919ハイブリッド(14号車)
アウディ勢は3、2、1号車の順で予選を終えた

 また、新技術を紹介する車両のために用意される「ガレージ56」枠で参加したNissan ZEOD RCは、LMP2とLM GTEの間(27位)で予選を終えたほか、LMP2クラスのトップはティリエ・バイ・TDSレーシングのリジェJS P2・ニッサン(46号車)。ラルブル・コンペティションチーム(50号車)の井原慶子選手は25位となった。LM-GTE ProはAFコルセのフェラーリ458 イタリア(51号車)、LM-GTE Amはアストンマーティン・レーシング(98号車)がそれぞれクラストップとなり、日本からの参加で中野信冶選手がドライバーを務めるチーム・タイサンのフェラーリ458 イタリア(70号車)は53位に留まった。

Nissan ZEOD RC(0号車)
リジェJS P2・ニッサン(46号車)
フェラーリ458 イタリア(51号車)
アストンマーティン・レーシング(98号車)

激しい決勝を制したのはアウディ2号車

 6月14日の決勝開始時間には雷雨の予報が出ていたものの、実際には快晴のままスタートを迎え、上位3台は順当にスタートを切った。2周目のストレートで早くもトヨタ8号車が2位に上がり1-2体制を築いた。そしてアウディ勢が激しい追い上げを見せてポルシェチームは次第に順位を落としていった。しかし、4時30分ごろに激しい雨がユノディエールで突然降り出し、トヨタ8号車がアウディ3号車を巻き込んだ形でスピン。2台はかなりのダメージを負った。トヨタ8号車はピットに戻りレースに復帰したが、アウディ3号車の傷は癒えずにリタイアとなった。夜を迎え、トヨタ7号車のトップは引き続き揺るがないものの、2位以下は激しいデットヒートを繰り返していた。

 そしてようやく夜明けを迎えたころ、突然トップのトヨタ7号車が電気系トラブルでストップし、無念のリタイアとなった。これを受けて2番手争いがトップ争いに変わり、レースはさらにヒートアップ。アウディとポルシェがピットインごとに順位を変える展開。しかし、お昼を迎えるころにポルシェが相次いでピットイン。残念ながら上位入賞は望めなくなった。トヨタ8号車はスピンでつけられた9周の差を詰めることはできなかったが、みごと3位入賞を果たした。優勝は最初から果敢に攻め抜いたアウディ2号車(マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ)となった。

トヨタ7号車のリタイア後、アウディとポルシェが激しく争った
激戦を制しアウディ2号車がみごと優勝

 なお、無念のリタイアとなったトヨタ7号車の中嶋選手は「こういうのを痛恨の極みというのだろうか。言葉が見つからない。我々を支えてくれた全ての人達に申し訳ない気持ちで一杯だ。あの瞬間までは素晴らしいレースをしていたと思っている。よいペースでレースをリードしていた。こういうことがあり得るとは思っていたが、今回実際に起こってしまった。しかし、これがル・マンであり、だからこそ挑戦し甲斐もあるのだと思う。また挑戦する」とコメントを発表。

 また、チーム代表の木下美明氏はレース後に「ル・マンでの3位は大変喜ぶべき名誉だが、我々のTS040 HYBRIDは勝てるスピードを持っていただけに、今日は複雑な気持ちだ。予想外の出来事が多く、改めてこれがル・マンなんだと実感した。幸運は要らないが、もう少しアクシデントが少なければ、と思う。しかし、それがモータースポーツであり、結果は厳粛に受け止めなければならない。この経験を糧に、我々はより強くなって帰って来る。加えて、世界選手権に照準を合わせ、次のアメリカ・オースティン戦から再び全力を尽くす。#8の酷いダメージを短時間で修復してくれたチームメンバー、またそのクルマで諦めること無く走り続け、3位表彰台を獲得したドライバーに心から感謝したい。自分はこのチームを誇りに思う。最後に、アウディ、ポルシェの素晴らしいパフォーマンスを讃えたい。このレースに参加した全員が非常に激しく戦い、素晴らしいスピリットを見せてくれた」と述べている。

(Photo:中野英幸)