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NEXCO中日本、笹子トンネル天井板落下事故をうけ安全性向上3カ年計画

「二度とこのような事故を起こしてはならない」という深い反省と決意のもと

NEXCO中日本 代表取締役社長CEO 金子剛一氏(右)、執行役員 安全管理部長 加藤英樹氏(左)
2013年7月26日発表

記者会見の冒頭、金子代表取締役社長CEOより、事故で亡くなった方、ケガをした方、そのほか迷惑をかけた方へのお詫びが述べられた

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は7月26日、「安全性向上3カ年計画」を発表。同日本社内で記者会見を開催した。

 NEXCO中日本管内の中央自動車道 笹子トンネル(上り)では2012年12月2日、天井板落下事故が発生。9名の死者が出るほどの大事故となった。事故後同区間は全面通行止めとなり、12月29日に下りの笹子トンネルを用いた対面通行での開通を経て、2013年2月8日全面復旧となった。

 この事故の発生に伴い、全国の同様の構造を持つトンネルは、天井板の点検および撤去を行い、NEXCO中日本でも中央道 恵那山トンネル(下り)や、東名高速 都夫良野トンネル(下り)で天井板の撤去、トンネル内にあるジェットファンのチェーン設置など安全対策を実施している。

 NEXCO中日本は、「二度とこのような事故を起こしてはならない」という深い反省と決意のもと「安全性向上3カ年計画」を策定。2015年度末までに、この計画を終える予定だ。

 金子剛一代表取締役社長CEOは、NEXCO中日本の2015年の目標を「安全を最優先とする企業文化を有し、社会から信頼される会社」とし、「『お客さまの安全が何よりも優先する』という意識を持ち、潜在的リスクにも目を向け、強い責任感を持って自ら考え行動している。」など5つの到達目標を策定。安全性向上3カ年計画の実行にあたっては、以下の5つの行動指針を掲げた。

・事故を決して忘れず、お客さまの安全を何よりも優先します。
・現場に向き合い、現場から学び、考え行動します。
・潜在的リスクにも目を向け、計画・実行・評価・改善のサイクルを着実に実行します。
・安全に関する情報を積極的に収集し、自らの問題として考え行動します。
・安全について自らのテーマを設定し自己研鑽します。

 これらの行動指針のもと、「安全を最優先とする企業文化の構築」「構造物の経年劣化や潜在的リスクに対応した業務プロセスの見直し」「安全管理体制の確立」「体系化された安全教育を含む人材育成」「安全性向上に向けた事業計画」に取り組んでいく。

 意識改革、業務改革によってより安全な道路の実現を目指していくが、安全性向上に向けた事業計画では、従来の修繕費を大幅変更。これまでの計画では2013年度~2015年度では約1700億円を予定していたが、3カ年計画の安全対策を盛り込んだ新しい計画では750億円上積みした約2450億円を予定。上積みした予算のほとんどは、トンネル天井板の撤去、門型標識、料金所PC上屋などの撤去、コンクリート剥離対策などに使われる。

 また、点検・補修に関わる部分はこれまでグループ関連会社に発注していたが、一部をNEXCO中日本に組み入れる形で増員。これまで約300名のスタッフで行っていた作業を、3割増の約400名近くで行うという。これらにより、点検・補修計画の策定支援が容易となるようシステムを改善。天井板崩落事故の際に問題となった、点検記録が一部なかった(点検時に問題がなかった場合、記録を残していなかった)部分を改善し、点検・補修データは構造物の供用期間中システムに保存していく。

 金子代表取締役社長CEOは、「(NEXCO中日本は事故によって)国民からの信頼をなくしてしまった。2度とこのような事故を起こさないため、この3カ年計画を社員で確実に実行していく」と述べ、「安全性向上3カ年計画」の実行は経営の最優先事項であるとした。

(編集部:谷川 潔)