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フォードがIFAで9つの新しいSYNCアプリケーションを発表

新コンセプトカー「S-MAX Concept」をフランクフルトに先駆け公開

 米国の自動車メーカーであるフォードは、以前から米マイクロソフトと提携して音声操作が可能な車載情報システム「SYNC」に取り組むなどIT技術の取り込みに熱心な自動車メーカーとして知られている。その社長兼CEOであるアラン・ムラーリ氏は、欧州最大の家電見本市「IFA(イファ)」で行われた基調講演に登場し、同社の自動車におけるIT技術の取り組みについて説明した。

 ムラーリ氏は、IT技術に造詣が深いことでも知られており、英国の通信社ロイターは、同氏が来年での引退を発表したマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOの後継と報じるなど、IT業界からも優秀な経営者の1人と目されている(いうまでもないことだが、リーマンショックで北米のビッグ3のうち2社が会社更正法の適用を受けたが、ムラーリ氏率いるフォードは回避した)。ムラーリ氏は、積極的にITや家電の展示会に参加しており、ここ数年は1月にラスベガスで行われる世界最大のデジタル家電ショーである「International CES」に参加することが恒例になっている。

フォード・モーター・カンパニー 社長兼CEO アラン・ムラーリ氏
フォードの創始者であるヘンリー・フォードが目指したのは自動車で人々の生活を豊かにすること
マイクロソフトで共同で開発した車載情報システム「SYNC」を展開している

 今回のIFAでムラーリ氏は、フランクフルトモーターショーで公開される予定のコンセプトカー「S-MAX Concept」について紹介したほか、同社が展開する車載情報システムSYNCにアプリケーションを追加する仕組み「SYNC with AppLink」に、新しく9つのサードパーティアプリケーションが追加されたことを明らかにした。この中にはドイツの通信会社であるドイツテレコム(日本で言えばNTTのような存在)のアプリケーションも含まれており、今後両社が協力して自動車におけるIT技術の普及に尽力していくことなどが発表された。

車載情報システムSYNCに新しいアプリケーションを9つ追加

 講演の冒頭でムラーリ氏は「フォードは創始者のヘンリー・フォードが目指した人々の生活を豊かにするために自動車を作っている会社だ。現在のフォードはもちろん自動車を作る会社であるが、同時にテクノロジーの会社だ。我々の使命は、スマートでかつ安全な車をドライバーに提供することだ」と述べ、フォードの姿勢をアピールした。その上でムラーリ氏は「我々は早い段階からSNYCというネットワークにつながるサービスを提供してきた。すでにヨーロッパで350万台を出荷しており、グローバルには900万台を出荷済みだ」と述べ、これまでの経緯を説明した。

 そうしたSYNCを搭載したヨーロッパ向けの車の例として、同社が昨年から発売しているSUV車「ECOSPORT」を紹介し、ECOSPORTなどSYNC搭載車向けに用意されているアプリケーションを追加する仕組み「SYNC with AppLink」について語った。

 SYNC with AppLinkは、フォードが用意しているSYNC向けのアプリストアで、スマートフォンにアプリケーションを追加するような感覚で車載情報システムにアプリケーションを追加することができる。ムラーリ氏は「我々はSYNC with AppLinkにすでに4つのサービスを提供してきたが、今回そこに新しく9つのアプリケーションを追加する。また、ドイツテレコムとアプリケーションの開発で協業していくことを発表したい」と述べ、SYNC with AppLinkの新しいアプリケーションと、ドイツ最大の通信企業であるドイツテレコムとの協業を発表した。

SYNCを搭載した車両はヨーロッパで350万台、全世界で900万台がすでに出荷されている
昨年発表したECOSPORTの特別仕様車には、今回発表された新しい9つのアプリケーションが標準で搭載されている
新しい9つのアプリケーションが新しいパートナー企業7社から発表され、ドイツテレコムとの提携も発表された

 フォード・モーター・カンパニー コネクテッドサービス 事業部長 エド・プリート氏は、その詳細を説明。プリート氏は「我々はSYNC with AppsLinkの開発環境をオープンソース化し、それを車載情報システムの標準化を行っている団体であるGENIVIに寄贈した。そうした開発環境には、すでに5000を超える開発社が登録しており、開発が進んでいる。また、AndroidやiOS向けにアプリケーションを検索してSYNCにダウンロードするためのアプリケーションを提供している」と述べた。プリート氏によればすでにヨーロッパ地域向けのSYNC with AppLinkでは、Spotify、Grimなど4つのアプリを提供しており、今回それに加えて9つの新しいアプリが提供されることになったのだという。

 提供される新しいアプリケーションは、Wikipediaの情報を音声で検索できる「ASKWiki」、ドイツテレコムの携帯電話キャリアであるT-Mobile(日本で言えばNTTドコモのような会社)のSMSなどを受信できる「T-Mobile」アプリ、さらにはカーナビメーカーであるTomTomの渋滞情報などを受信できるアプリケーション、ホテル予約が可能なhotels.comのアプリケーション、ドイツの駐車場情報を検索できるADACアプリ、ドイツの新聞「ディベルト」アプリなどが紹介された。

 プリート氏は「今後はAppLinkのバージョンをさらに上げて2.0とし、スマートフォンで実現されているようなメールなどの着信通知、ボイスパススルー機能、さらにはより詳細な車両情報へのアクセスなどの機能を追加する。今後も開発者コミュニティとは密接に協力して発展させていきたい」と述べ、SYNC with AppLinkを発展させ、より多くのアプリケーションを提供していけるようにしたいと説明した。

フォード・モーター・カンパニー コネクテッドサービス 事業部長 エド・プリート氏
SYNCに新しい機能を追加する仕組みのSYNC with AppsLink
SYNC with AppsLinkの開発環境はオープンソースとしてGENIVIに提案されている
すでに5000の開発者がフォードの開発者向けのサイトに登録している
既存の4つにくわえて新しく9つのアプリケーションが追加された
SYNC with AppsLinkのバージョン2.0ではさらに機能が追加される

ITを利用して、より安全なドライブを実現する「S-MAX CONCEPT」を公開

 引き続いて、フォード・モーター・カンパニー 電装電気担当部長 ジム・ブチコフスキー氏が、コンセプトカー「S-MAX CONCEPT」を紹介した。S-MAX CONCEPTは、欧州でフォードが販売していたミニバン「S-MAX」の次期コンセプトモデルで、詳細は9月10日から行われるフランクフルト・モーターショーで公開される予定になっている。

 ブチコフスキー氏によればS-MAXにはSYNCの最新版が搭載されており、スマートフォンと連携してさまざまな操作ができたり、Wi-Fiを利用して車両と車両が自動で通信し、例えば道の先で事故が起きていることを検知すると、それをWi-Fiを通じて車が自動でバケツリレーのように先にいる車に事故の発生を伝える仕組みが用意されているという。また、シートにはドライバーの心拍数を計測するセンサーが入っており、ドライバーの健康状態を常にチェック。ドライバーの健康維持に貢献するほか、運転時に問題がある場合には車を止めたりという仕組みが入っているという。

 このほか、バックで駐車するときに、車の前後左右をセンサーで確認し、自動でハンドルを動かして安全に駐車する仕組みも用意されている。さらにレーザーなどを利用して前方に人が歩いているのを検知したら自動で停止する機能なども組み込まれている。

 ブチコフスキー氏は「こうしたドライブを安全快適にする機能を求めやすい価格で提供していくことが重要だ」と述べ、S-MAX CONCEPTのような普及価格帯の車にも積極的にそうした機能を搭載していきたいと説明した。最後に再びステージに登場したムラーリ氏は、「このように、テクノロジーを活用することで、自動車をより便利に、常にネットワークに接続した状態にしておくことができるようになり、しかもより安全にすることができる。こうしたテクノロジーを活用することで、人々の生活をより豊かにするというフォードのビジョンを実現していきたい」と述べ、講演を締めくくった。

フォード・モーター・カンパニー 電装電気担当部長 ジム・ブチコフスキー氏
S-MAX CONCEPT
自動車同士がWi-Fiで通信して、事故などの情報をバケツリレー方式で後方の車などに伝えていく
シートに内蔵されているセンサーで心拍数などをモニタリングする
バック時にも周辺の状況を検知して、ハンドルを自動で動かす
前方に障害物や人などを検知すると自動で停止する
ムラーリ氏とS-MAX CONCEPT
ヘッドライト部
リアに向けて流線を多用したデザインとなっている
前方シート部分。中央に車載情報システムのモニターが用意されている
心拍数のセンサーなどが入っているシート
メーターパネル

(笠原一輝)