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コンティネンタル・オートモーティブ、「Japan TechRide2013」を開催

将来の“自動運転”に繋がる車両制御技術の現状をアピール

2013年9月5日開催

 コンティネンタル・オートモーティブは9月5日、千葉県旭市にある同社の旭テストセンターで技術説明会「Japan TechRide2013」を開催した。

 コンティネンタル・オートモーティブは、ドイツのタイヤメーカーとして長い歴史を持つコンチネンタルコーポレーションの自動車部品サプライヤー部門。「シャシー&セーフティー」「パワートレーン」「インテリア」といったジャンルを担当している。

 この説明会では、同社が世界の自動車メーカーに供給するさまざまな先進技術をテストコースでの試乗で体感できるほか、プレゼンテーションと製品展示によって進化を続ける自動車技術の現状、同社が目指している近い将来に向けたロードマップなどが解説された。

「さまざまな技術を発展・連携させ、我々が掲げている安全コンセプト“ビジョン・ゼロ(交通事故ゼロ)”が達成されたその先に、自動運転が見えてくる」と語るハゲドーン氏

 先に行われたプレゼンテーションでは、コンティネンタル・ジャパンプレジデント シャシー&セーフティー部門日本・韓国地区代表のクリストフ・ハゲドーン氏から冒頭の挨拶のほか、コンティネンタル・オートモーティブの紹介に続いて自動車業界のメガトレンドについて解説が行われた。

 このなかでハゲドーン氏は、この先に注目されていくのは「安全」「環境」「情報マネジメント」「アフォーダブルカー」の4ジャンルであると語り、具体的な製品化では2025年に本格化を迎えると言われている自動運転に向けた技術開発がトレンドになると解説。同社がすでに自動車メーカーに対して製品を供給して市場投入されているESC(横滑り防止装置)や緊急ブレーキ、死角検知などに加え、まもなくのデビューに向けて開発を続けている歩行者保護、「Driver Distraction(ドライバーの注意散漫検知)」といった先進技術が自動運転の実現に向けたキーテクノロジーになると説明し、現状の技術を統合して作り上げた“自動運転カー”を使ってアメリカのネバダ州を舞台に実証テストをスタートさせていることを紹介した。

同社では、自動車の運転が2016年に「部分的な自動化」に進み、2020年には「高度な自動化」、そして2025年には「完全な自動化」が実現されると予測している
クルマの自動運転に向けた“キーテクノロジー”は一部がすでに市販化されている。日本メーカーの車両では、アウトランダーの「e-Assist」、ワゴンRの「レーダーブレーキサポート」で使われる近距離レーザーレーダー、長距離レーダーなどを同社が手がけている
コンチネンタルコーポレーションの2012年における部門別売上は、タイヤが29%、シャシー&セーフティーが21%、インテリアが20%、パワートレーンが19%、コンチテック(ゴム、プラスチック製品部門)が11%という内訳となっている
コンティネンタル・ジャパン パワートレイン部門 日本&ASEAN地域担当 上級副社長の田中昌一氏

 続いてプレゼンテーションを担当したのは、コンティネンタル・ジャパン パワートレイン部門 日本&ASEAN地域担当 上級副社長の田中昌一氏。田中氏の解説で中心となったのは、これからの持続可能なモビリティに向けて必要不可欠な「ニーズに応じた電動化」というテーマ。自動車市場は環境問題とエネルギー問題などの対応で制約がますます大きくなる半面、新興国市場の需要増加などによって世界全体での自動車需要は右肩上がりが続くと予測されている。この市場動向の先行きを受けて同社では、今後のパワートレーン市場がさらに複雑化していくことに対応するさまざまな製品、システムの開発を行っている。

 取り上げられた開発中の技術で「我々コンチネンタルが大きく注力している分野」と紹介されたのが「48Vシステム」と呼ばれる電動化技術。既存のアイドリングストップシステムとハイブリッドカーのギャップを埋める存在となるこの技術は、200~400V前後という高い電圧を利用してEV走行まで視野に入れるハイブリッドカーまではいかないまでも、48V対応のモーターとDC/DCコンバーター、リチウムイオンバッテリーなどを組み合わせることで制動時のエネルギーをモーターの回生発電で回収。さらに発進加速や巡航走行といったシーンでエンジンをアシストして燃料消費を抑えるシステムとなっている。48Vシステムのメリットとしては、人体に危険とされる60Vより低い電圧なので高度な安全管理が必要ないこと、バッテリーやモーターがそれほどの大きさがなく、システム全体のコストが抑えられることに加え、コンパクトカーなどにも導入しやすいと解説する。

 このほかの具体例では、スズキが中国市場で販売している「Big Dipper e+」という車両を取り上げ、前にハゲドーン氏が説明した「アフォーダブルカー」について詳しく解説。同社ではこの車両のエンジンマネジメントを手がけているが、開発にあたっては単純に従来技術の寄せ集めではなく、むしろ機能を集約して発揮できるような高度な製品を投入。生産時の作業工程を単純化することで最終的な製品のコスト低減を実現している。また、中国市場でのニーズを独自に調査し、これまで培ってきたOEM生産のノウハウと合わせて現地の交通状況に沿ったチューニングが行われていると説明した。

自動車の動力をクリーン化するため、同社ではエンジンの燃焼効率、ドライブトレーンの効率性、電動化の推進、排出ガスの後処理装置などの分野でパーツ提供、製品開発を進めている
今後、エンジンの電動化はますます加速し、アイドリングストップも使わない純粋なエンジン(ICE)は2025年には全体の生産台数で10%前後まで減少するという予測データ
同社が精力的に開発を続ける「48Vシステム」の概要。既存の自動車技術から流用できる部分が多く、投入するコストに対してCO2削減効果が高いことも大きなメリット
中国にあるスズキの現地法人が生産している「Big Dipper」は、エンジンの制御システムや車両とのキャリブレーションなどをコンチネンタル・オートモーティブが請け負っている。単純なパーツ開発にとどまらず、中国市場でのニーズ分析なども実施して適切な製品供給を実現する
日本市場にも投入されているアウディ・Q5 ハイブリッドのインバーターやDC/DCコンバーターなどはコンチネンタル製。さらにドイツ市場では、より積極的なCO2削減を実現するプラグイン・ハイブリッド車に対応する製品もラインアップしている
プレゼンテーション会場には実際のパーツを用途ごとに並べて展示
アウディ車のCVTでは、複雑な制御を司るインテグレーテッドTCU(トランスミッションコントロールユニット)を供給
右側は廉価版ESCユニット。左側は進化型の統合ブレーキユニットで、これ1つにABS、ESCストロークシミュレーターなどをコンパクトにまとめ、ユニットの軽量化でCO2削減効果を発揮するほか、生産時の効率も高いことでコストダウンも実現。高度な製品がアフォーダブルカーで求められるという1つの例
シフトバイワイヤの制御ユニット。小型なので設置する場所の自由度が高い
自動ブレーキで使われるマルチファンクションカメラ。ショートレンジレーダーとの組み合わせでレーンキープアシストなどを実現する
技術試乗会は旭テストセンター内にある広々としたテストコースを使って開催

 プレゼンテーション終了後には、実際にコンチネンタル・オートモーティブが手がけたパーツなどを使う車両による技術試乗会を実施。多岐にわたる同社製品を紹介するため、1種類あたりの体験時間は短いものとなってしまったが、それぞれの車両で担当説明員から解説を受けながら自分でステアリングを握って運転し、同社製品の実力を体感できた。

ACC(アダプティブクルーズコントロール)

 今回の技術試乗会で最も印象深かったのが、このACC(アダプティブクルーズコントロール)を搭載したフォルクスワーゲン ゴルフ。事前の説明で「自動車メーカーのACCはドライバーの運転操作を重要視しており、システムの積極的な介入を抑える傾向がある。コンチネンタルではユーザーの利便性と快適性を向上させるため、むしろアクティブに加減速を行って車両をコントロールする方向で開発を続けている」と紹介されたが、試乗中はそんな開発意図をしっかり確認できた。

 先導車に追従して走るゴルフは、前方の車両がアクセルをゆるめてわずかに減速したことを筆者が意識したのとほぼ同じタイミングで、先導車の減速度合いに合わせてソフトに減速。その後も先導車のペースにしっかりとタイミングを合わせて加減速を繰り返し、なにより加減速の操作は「上品」と表現したくなるレベル。試乗が広いテストコースで行われ、ACCの車間距離設定が広めだったことも要因になっていると思うが、開発を続けた先に自動運転を視野に入れているメーカーらしい、洗練された乗り心地だと感じさせた。

フロントグリルのエンブレム後方に設置したレーダーセンサーで前方の車両を認識するゴルフのACC。運転席に座っていて前方の車両の減速とほとんどタイムラグなく減速Gを感じるので、安心して加減速を任せられる装備となっている

ブレーキ・バイ・ワイヤ

 つい車両自体にも興味が湧いてしまうフォードのC-MAX ハイブリッドを使って行われたのは、車両制御の自動化に不可欠なブレーキ・バイ・ワイヤのデモンストレーション。この車両では車内のセンターコンソールに専用のコントロールパネルを設置し、走行中にオーディオの音量操作のようにダイヤルを動かすことで、指先でブレーキを制御。ペダル操作以外で車速を調整するという貴重な体験となった。また、コントロールパネルにはリアルタイムのブレーキ圧、安全装備によるブレーキの与圧状況なども表示され、作動状況をチェックできた。

試乗以外のタイミングでも多くの参加者が内外装を見学していたC-MAX ハイブリッド
センターコンソールに設置されたコントロールパネルのダイヤルを動かすと、回した量に応じてブレーキが作動。実際の車両ではダイヤルでの入力がECUなどからの信号に置き換わってブレーキを制御する

電動ブレーキブースター

 市販車の多くではエンジンの力を一部利用してブレーキペダルの踏力を高め、それほど強く踏み込まなくてもしっかり制動力が発揮されるブースターを備えているが、EVやハイブリッドカーではエンジンを活用できないシーンがあるため、圧力を電動ポンプで発生させて利用している。コンチネンタルもブレーキブースター向けの電動ポンプを手がけているが、この試乗では電動ポンプ自体の性能ではなく、設置方法による違いが紹介された。

 テスト車両には3つの電動ポンプがブレーキブースターとして設置され、車内に用意されたスイッチで切り替えながら、ブレーキを効かせて加圧が必要になったときに、取り付けた位置によってどのような差があるかを体験。設置位置は「エンジン」「メンバー」「フレーム」の3種類で、ほぼ固定状態のフレーム設置では、電動ポンプが作動した瞬間から特有の高周波音が車内に響いてくる。メンバーとエンジンはそれぞれに振動を吸収するブッシュやマウントを持っているため、ポンプが作動しても振動が抑えられて大きな音が出ない。とくにポンプよりもずっと大きな力が発生するエンジンは振動対策が万全なだけに、アイドリング程度でもエンジン音に隠れて耳を澄まさなければ確認できないレベルとなっていた。

 このように、コンチネンタルでは単純に製品を作るだけでなく、それぞれの使用状況をリサーチして分析し、最適な使用方法についてのノウハウを自動車メーカーなどに提供する業務も行っている。

下り坂でブレーキを踏み込むとブースターの圧力が消費され、再充填するために電動ポンプが作動。エンジンルーム内の設置方法によって同じ電動ポンプを使っても騒音の発生具合に差が出るという試乗内容
テスト車両はレガシィで通常使われているブレーキブースターから電動ポンプに経路を変更。3種類を切り替えてブレーキを効かせられるよう設定されている
エンジンに固定された電動ポンプ。エンジンマウントが振動を吸収し、走行中の車内ではほとんど作動音が聞き取れない状態だった
エンジンに隠れたメンバー設置の電動ポンプ。フレームに固定された場合のように耳障りなほどの音量ではないが、走行中でも作動音が聞き分けられるレベルだった
インパネ上に設置された電動ポンプの切り替えスイッチ。右側のインジケーターはブレーキブースター内部の圧力を表示しており、ブレーキペダルを踏むと数値が減少。電動ポンプが作動して与圧していることも確認できる

市場向けローカライズ

 最後に紹介するのは、ワゴンRワイド、ではなく、中国市場でスズキの現地法人が販売している「Big Dipper」というクルマ。コンチネンタルはこのモデルのパワートレーンの中国市場向けセッティングとパーツ供給を担当。単純にベースモデルより排気量の大きい1.4リッターエンジンを車両に載せるだけでなく、中国市場でのクルマの使われ方をリサーチし、より適切な商品となるようセッティングしているという。具体的には、中国ではちょっとした車間距離でもアグレッシブにノーズを入れて先を急ぐという走り方が一般的で、アクセルを踏み足した初期から鋭いトルクの立ち上がりが求められるという。

 実際にステアリングを握って運転してみると、確かに1.4リッターのNAエンジンらしからぬパワーを披露するセッティングとなっているものの、同時にかなりワイルドで、日本人の感覚では「アクセルワークに過敏すぎる」と感じさせる内容となっていた。ただ、中国市場ではこの仕様が実情にあったものということで、市場に合わせたローカライズもコンチネンタルの重要な事業であると説明された。

力強い加速を見せるBig Dipper。車両の内外に響くエンジン音もなかなかにワイルド
VVT付きのK14B-D型エンジンを搭載
2年ほど前に中国で購入され、船便で運び込まれてからこのテストコースで走っているというBig Dipper
メッキグリルやフォグランプの形状など、細部がワゴンRワイドと異なる。中国のナンバープレートが装着されたままとなっている。
テスト車には「CHENGSHAN」というブランドのタイヤが装着されていた
左ハンドルの5速MT仕様
中国での合弁会社「昌河鈴木」のロゴマーク
中国語名は「北斗星」となる

(編集部:佐久間 秀)