ニュース

コンティネンタル・オートモーティブ、自動車とデジタル世界が融合する未来を語る「テック・セッション」開催

「車載カメラ画像のスマホ転送」「ビッグデータ活用の車両制御」などの先進技術を紹介

「テック・セッション」で実施されたプレゼンテーションの様子
2014年7月16日開催

 コンティネンタル・オートモーティブは7月16日、コネクテッド・ビークル(インターネット常時接続車)における同社の開発内容などを紹介する「テック・セッション」を開催した。

 コンティネンタル・オートモーティブは、ドイツのタイヤメーカーとして長い歴史を持つコンチネンタルコーポレーションの自動車部品サプライヤー部門。グループ内で「シャシー&セーフティー」「パワートレーン」「インテリア」の製品ジャンルを担当しており、今回のプレゼンテーションでは、めまぐるしい変化を遂げている自動車業界のマーケットトレンドの分析とこれに対する同社の取り組みを説明。さらに、次世代自動車の大きな到達点と考えられている「自動運転」に向けて開発・市場投入を進めている同社の最新技術について、スライドを使った説明やデモンストレーション機器による解説などで紹介した。

 まず行われたスライドによる説明では、ここで紹介される「インフォテインメント&コネクティビティ」のジャンルをインテリア部門で担当しており、自動運転に向けたコネクテッド・ビークル技術を進化させていくことで、省エネルギー化によるクリーン性能、事故を未然に防ぐ安全性などが実現されるという将来像を紹介。この実現に向けた具体的な製品開発として、「コネクティビティ&テレマティクス」「マルチメディア」「ラジオ」「ソフトウェア&コネクテッドソリューション」という4つの製品セグメントで取り組んでいるという。

コネクテッド・ビークル技術で車車間通信を行い、クルマ同士の接触などを未然に防ぐほか、情報マネジメントでエネルギーの効率化などを実現していく
「十分な情報」「接続の実現」「低コストで実現」の3点がインフォテインメント&コネクティビティのジャンルで独自の価値を創造する
具体的な製品開発を進めている4種類の製品セグメント
日産自動車のDCMのほか、同社の製品は世界各国の自動車メーカーで採用され、市場ごとのニーズに対応した開発を行っている

 また、自動車とデジタル技術の世界との関わり合いについては、1990年代に入って携帯電話がクルマに取り付けられるようになったが、まだ充電やハンズフリー通話といったレベルに止まっていた。これが2000年代になって携帯電話が有線接続からBluetoothに移行し、通信などクルマに対して意味のある段階に進化。現代に至る2010年代では、スマートフォンの普及によってクルマとデジタルワールドの融合が進んでいると解説し、2020年代にはクルマ自体が“コネクテッド・デバイス”になっていくとして歴史と将来像を紹介している。

自動車とデジタル技術の世界との歴史。2020年代には自動車もデジタルワールドの一部になっているという同社の将来予測
2013年にはインターネットに接続された製品は150億あったという統計だが、これが2020年には500億以上に増加すると考えられているという。自動車もインターネット接続することで多くのメリットが出てくるが、そのためには信頼性を確保し、業界の規格に準拠していることが課題になる
コネクテッド・ビークルが実現した場合、燃費が4%まで改善されてコストと環境性能が高まるほか、ヒューマンエラーによる事故の回避、リアルタイム交通状況のデータを使った渋滞回避などに効果を発揮する

 さらにプレゼンテーションでは、日本初公開の機器などを使ったデモンストレーションを交え、「テレマティクスLTE」「フラットパネルラジオ」「eHoriozon」「ドメイン・インテグレーション」という4種類の製品&イノベーションについて紹介された。

「テレマティクスLTE」

 スマートフォンなどの高速通信規格として日本でも定着したLTE(Long Term Evolution)を採用する車載機器のデモでは、車両(デモでは便宜上模型を使用)の四隅に設置したカメラで撮影した映像を合成し、センターコンソールのカーナビ画面に加え、LTE回線で接続したスマートフォンの画面にも表示するシーンを紹介。LTE回線なので遠く離れた場所でも車両のリアルタイムの周辺状況が確認できることから、同社では盗難防止装置などと連動させ、異常を感知したときに離れた位置から愛車の状況確認ができるというソリューションへの発展も可能であると紹介している。また、同社のシステムではカメラ映像を車両上方だけでなく、斜め上方からの角度としても表示可能。さらにスマートフォン上に表示されたアイコンをタッチして表示内容を変更するといった操作も行われていた。

車両のアラウンドビュー画像をスマホでも表示するLTE接続のデモ。広角カメラで撮影した映像を使っているが、画像処理で離れた場所まで歪みなく表示している。スマホ上のアイコンでも操作可能
カメラとの接続にはEthernetのケーブルを使用。従来型の専用ケーブルよりも軽く、車両の軽量化に貢献。カメラを動かすための電力供給も行える
自宅から出ることなく愛車の状態を確認できるというソリューションの提案
最高100Mbit/sの通信速度でさまざまなリッチコンテンツに対応する
2018年までにLTE通信を車載機器に採用する車両の台数の予測。総数では北米、欧州、日本と続くが、搭載の割合では日本が一番高まっていくと想定している

「フラットパネルラジオ」

 LTE通信機能を組み込む機器の2つめの提案となるフラットパネルラジオ。名前のとおり、これまでの車載ラジオ(オーディオ)と比べて大幅に奥行きが縮小され、軽量化と低コスト化を実現。長年に渡って関係を築いてきた米クアルコムから車載向けに最適化されたLTE通信用チップが供給され、これを使った多機能なSoC(Sytem on Chip)の採用がキーになっているという。

フラットパネルラジオのデモ機材
USB端子でスマホなどに保存された音楽ファイルなども利用可能。ディスプレイはタッチパネルとなっている
基板の中央にセットされているのがコンティネンタル・オートモーティブ製のLTE内蔵SoC。各種アンテナなどの拡張性も高く、すでに自動車メーカーからの問い合わせも来ているという
車載用のオーディオとしては極めて奥行きが少ない。軽量・低コストというメリットに加え、インパネデザインを革新させる可能性も秘めている
どちらも車載向けの通信基盤だが、右は上級車向けのプレミアム仕様、左は大衆車向けのエントリー仕様となる
LTEによってインターネットに接続し、同時に接続ポイントになって車内にWi-Fi環境を提供する
ロングドライブで子供が退屈しないよう、動画やゲームなどをインターネット接続で提供するという提案

「eHoriozon」

 eHoriozon(エレクトロニックホライズン)は、地図情報を中核とした自動運転に向けた同社の大がかりな取り組み。2006年に第1世代の「スタティックeHoriozon」は地図情報に自車のレーダークルーズコントロールなどを組み合わせてシフトプログラムがより適切に働くよう制御。現在は第2世代の「コネクテッドeHoriozon」に進化し、IBM、シスコ、ノキア HEREとのパートナーシップにより、コネクテッドeHoriozonを搭載した車両から現在地や走行状態などをビッグデータとして収集。カーナビのルート設定やATのギヤ選択などを長期的な視点で最適化して燃料消費を抑えたり、カーナビのルート設定などをしていない状況でも過去の走行パターンからこれから走行する道を推測。ギヤ選択を調整するといった制御も実施するという。実際に北米で使われる長距離輸送用のトラックでは、年間の燃料代で20万円ほどの経費削減効果が計測されていると説明された。

eHoriozonのイメージ展示
コネクテッドeHoriozonで使われる通信モジュール
一定区間を走行したコネクテッドeHoriozon搭載車の走行データ比較。データが蓄積されている後から走る車両の方が平均値より燃料消費量が低下する傾向があるとのこと
地図情報と過去の走行パターンから車両が走る道路を推測するというeHoriozonの技術
ビッグデータでフォグランプを点灯させている車両が多い地域に霧が出ていると認識。ドライバーに注意喚起して事故の危険性を低下させる
コネクテッド・ビークルが普及して車車間通信によるデータ共有が行われるようになった段階が第3世代「ダイナミックeHoriozon」となる

「ドメイン・インテグレーション」

 複数のOSを仮想化技術によって1つの基板で制御するというドメイン・インテグレーション。デモでは1つの基板でメーターパネルと車載オーディオを擬似的に動かすタブレットの2つを同時に制御し、さらにタブレットでAndroid OSも使用。また、Android OSはファイヤーウォールで隔絶されており、Android OSにトラブルが起きて動作を停止しても、メーターパネルや車載オーディオは正常に動作し続けているシーンも紹介された。

ドメイン・インテグレーションのデモ機材
メーターパネルと車載オーディオを中央に置かれた1つの基板で制御
3眼式のメーターパネルは中央が全面液晶タイプとなっていた
SoC(Sytem on Chip)と各OSを、ハイパーバイザーという仮想化技術によって制御。さらにAndroid OSやアプリなども動かせる

(編集部:佐久間 秀)