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三重県総合博物館、9月19日よりホンダF1初優勝マシン「RA272」を展示

ホンダのF1マシンと鈴鹿サーキットの歴史を紹介する企画展

2015年9月19日~11月15日開催

一般:1000円、大学生:600円、高校生以下:無料

発表会では、F1解説の森脇氏がトークショー

 三重県総合博物館、愛称「MieMu」(みえむ)は、9月25日から開幕するF1 日本グランプリに合わせ、9月19日~11月15日に企画展「SUZUKA 夢と挑戦のステージ ~ホンダのF1と鈴鹿サーキット~」を開催する。入場は個人の一般料金が1000円、大学生600円、高校生以下は無料。

 企画展の開催に向けて9月4日、三重テラス イベントホール(東京都中央区日本橋室町)でプレス発表会が行われ、同博物館における展示の概要を紹介するとともに、F1テレビ中継の解説でもおなじみの森脇基恭氏によるトークショーを実施した。なお、F1 日本グランプリは鈴鹿サーキットにて、9月25日にフリー走行、26日に予選、27日の決勝という日程で開催される。

マン島TT初参戦マシンやホンダ RA272などが展示

 2014年4月に開館したMieMuは、三重県の自然、歴史、文化に関わる展示、郷土資料などの収蔵、各種研修・講座などの開催を行っている比較的新しい博物館。9月19日からは、F1 日本グランプリの舞台となっている三重県鈴鹿市にある鈴鹿サーキットと、そこで戦ってきた本田技研工業のF1やレースに関わる活動の歴史などを展示。9月21日には元F1パイロットで現在はインディカーレースに参戦している佐藤琢磨選手のトークショー(要事前申し込み)も予定しているほか、主に子供向けのワークショップなども開催する。

MieMuの展示内容、内部施設を紹介

 展示の内容としては、ホンダの創業者である本田宗一郎氏が建設の旗振りを行った鈴鹿サーキットの建設中の写真、ホンダ初のレース活動となるマン島TTに関わる資料や参戦車両ホンダ RC142、初のF1参戦マシンであるホンダ RA271のV型12気筒横置きエンジン、1965年のF1 メキシコグランプリで初優勝したホンダ RA272、ターボエンジンのホンダ RA166Eと自然吸気エンジンのRA109Eなど。さらに、ホンダにとってF1最盛期とも言える時代のウイリアムズ ホンダ FW10、マクラーレン ホンダ MP4/5Bの実車も公開する。また、9月29日~10月4日は2015年型の最新マシン マクラーレン ホンダ MP4-30も特別展示する。

実車展示となるF1カー
マン島TT参戦に関わる資料、車両も公開
鈴鹿サーキットの建設途中の写真
ホンダのF1初参戦マシンホンダ RA271はエンジンの展示のみ
ターボエンジン、ナイジェル・マンセルが駆ったウイリアムズ ホンダ FW10、アイルトン・セナが2度目のチャンピオンを獲得したマクラーレン ホンダ MP4/5Bも展示
比較的最近のマシンも展示する
鈴鹿サーキットに併設されているゆうえんち、ホテルなどの過去の写真も

 なお、営業時間は9時~17時(土日祝日は19時まで)、展示期間のうち9月24日、28日、10月5日、13日、19日、26日、11月2日、9日は休館日となる。

F1の進化の歴史を森脇氏が解説

 9月4日の発表会で合わせて行われたトークショーでは、学生の頃に飛行機の設計士を志しながらも、1965年、純ホンダ製のマシンであるホンダ RA272が優勝するのを見てホンダに入社することを決めたという森脇氏が、F1のテクノロジーの進化の歴史を丁寧に解説。9月25日から開催するF1 日本グランプリの見どころなども紹介した。

 世界で初めてエンジン付き車両によるレースが開催されたのは、1894年のパリ~ルーアン間とされている。1930年からはサーキットにおいて高速なレースが行われるようになり、同一規格を定めて公平なルール(フォーミュラ)のもと競争する考えが広まった結果、1950年にF1レースが誕生する。こうして速さを追求していくなかで、エンジニアから次々に新しい発想が生まれてきたとし、そのなかでもキーとなるテクノロジー、出来事などを森脇氏は解説していった。

 1958年はクーパー クライマックス FPF(排気量2.2リッター、出力195PS)が登場。4気筒エンジンをコクピット後方に搭載(ミッドシップ)し、プロペラシャフトの廃止によって部品点数を少なくした。また、エンジンという重量のある物体を重心近くに置くことで、慣性モーメントを小さくして運動性能向上を図っていた。1962年のロータス 25では、現在のF1カーのコクピットの考え方のベースとなる、アルミ板によるモノコック方式のシートが誕生。車両の軽量化、高剛性化、小型化、小容積化が図られた。

画期的なミッドシップエンジンのクーパー クライマックス FPFの登場
モノコック構造のシートが誕生

 一方、エンジンについては、1967年のロータス 49に搭載されたフォード コスワース DFVエンジン(V8 3.0リッター)が以降のF1エンジンの基礎となった。低重心、軽量、高剛性、搭載しやすさ、補器類レイアウトといった観点から圧倒的に優れていたと森脇氏は語る。

優れた設計、性能と言われたフォード コスワース DFVエンジン

 外観、空力に関しては、1968年のベルギーグランプリで初めてウイングが登場。エンジン出力が上がって高速化するに伴い、車体の下に潜り込む空気によって車両が浮き上がる方向へと力が働き、エンジン性能を発揮しにくくなってきた。そこで考え出されたのが、ウイングで受けた風の力で車体を路面に押しつけるダウンフォースの仕組みだ。1977年になると、ロータス 78において車体底と路面との間にある空気の流れもダウンフォースとして利用する考え方が生まれた。

ウイング搭載によりダウンフォースを活用するマシン作りが始まった

 1981年には、現在も主流の炭素複合素材(カーボン)を使ったモノコックがマクラーレン MP4で採用される。当時はアルミなどの金属素材も組み合わせる形で作られていたが、時間とともにカーボンはブレーキにも応用され、その後はデジタル機器によるドライビングデータ等の蓄積、そして昨今の電子制御へとつながっていく。

カーボンモノコックでさらなる軽さ、強靱さを持ち合わせた
1983年にはブレーキもカーボンに
1986年頃よりデジタルデバイスが発達し始める
同時期に電子制御も登場した

F1 日本グランプリ、「見どころはたくさん」

 F1 日本グランプリの見どころとしては、鈴鹿サーキットが世界に類を見ない8の字型であり、ドライバーにとってもエンジニアにとっても難しいサーキットであること、ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットと並ぶチャレンジングなコースで、レコードラインが1つしかないところだと森脇氏は話す。

 観戦ポイントは、「F1はびっくりするほど短い距離で減速する」ことから、その急激な減速を間近で見ることができるホームストレートの終わりから1コーナーにかけて。また、「向きが180度近くグイっと変わる、その変わり方も素晴らしい」という2コーナー、そこから続くS字、上り坂のコーナーで横Gの大きいダンロップコーナー、その後のクルッと向き変えるデグナーなど、見どころは「たくさんある」とした。

 最後に「三重で観光したことがあるか?」と司会に聞かれた森脇氏は、2016年に「伊勢志摩サミット」が開催される予定の志摩、伊勢神宮などを、プライベートで三度ほど観光したことがあるとのことで、ステーキ、ハム、白魚、穴子、うなぎがおいしいと絶賛。特にうなぎについては、三重県は住民1人当たりのうなぎ屋が最も多い県とされ、「東京方面から来る人は質が全然違うので、絶対に三重県のうなぎは食べた方がいい」とアピールしていた。

発表会場ではミニチュアのRA272が展示
小林可夢偉選手のサイン入りヘルメットやかつてのF1用タイヤも
鈴鹿サーキットや近くの白子駅などでしか販売していないという抹茶を使ったお菓子
鈴鹿抹茶オレは10本入り650円
鈴鹿抹茶ラングドシャ。12個760円と21個1300円がある
試食用に配布された

(日沼諭史)