インプレッション

ホンダ「N-BOX プロトタイプ」(2017年モデルチェンジ予定)

 もう間もなく、8月31日に発表される新型「N-BOX」。初代は発売からの約5年で、車名別販売台数(軽四輪車通称名別)の年間1位を4度も獲得している大ヒットモデルだけに、その注目度はかなりのもの。今回、短時間ながらプロトタイプに試乗する機会を得たので、デビュー直前の速攻インプレッションをお届けしたい。

 まず外観の印象は、老若男女問わず親しみやすく、キリリとした“N-BOXらしさ”が標準デザインにもカスタムにも受け継がれている。そこに、どっしりとした安定感や、サイドをストレートに通るキャラクターラインの伸びやかさ、フルLEDヘッドライトを標準装備するなどによる先進感が加わり、より洗練されていると感じる。また、先代はちょっとアメリカンな雰囲気だったが、新型はどちらかといえばヨーロピアン寄り。そこは好みが分かれるかもしれないが、新型は緻密さからくる上質感や、モダンな佇まいも特徴の1つと言えそうだ。

 そして室内は先代の驚異的な広さからまたさらに広がっており、新骨格のインパネやサイズアップして座り心地もよくなった新設計シートを採用したというだけあって、居心地のよさにもこだわっていると感じる。

 しかも、その広さを最大限に活用した、N-BOXにしかできない“ママ想い機能”が満載だ。とくに感心したのは、570mmも前後に動かせて前後ウォークスルーもできる「助手席スーパースライドシート」。これによって、ママは何度も車外へ出ることなく、子供の乗り降りなどのお世話や荷物の出し入れなどができるようになり、猛暑や雨・雪の日などはとくに大助かり。パパが運転のときには、助手席の位置を前席と後席の中間にしてママが座れば、パパとの会話も子供のお世話もちょうどしやすくなる。

 また、収納スペースでは、フロントのドアまわりやシートバックに細かなポケットを多く設置して、子育てファミリーが車内に持ち込む小物類が迷子にならないような工夫があるし、助手席のインパネトレイにはUSB端子が2つあり、タブレットやスマートフォンを充電しながら置いておける。それに初代から低めだった荷室フロアはさらに大幅に低くなり、自転車などママ1人では難儀だった荷物がグンと積みやすくなっている。

 こうした使い勝手の大きな進化は、決してキャッチーな飛び道具的なものではないが、実際に使う人たちにとってはなによりよさを実感できる機能にちがいない。

快適・安心第一の「家族みんなが気持ちのいいクルマ」

N-BOX G・EX Honda SENSING

 さて、エンジンもCVTもプラットフォームも新しくなった新型N-BOXは、走りの方もかなり気になるところ。まずは自然吸気エンジンの「G・EX」から試乗すると、直進ですでにガッシリ感が増しているのを感じ、少し強めにアクセルを踏み込んでも室内の会話を邪魔しない静粛性にびっくり。低回転から高回転までをシームレスに引き出すCVTの制御も素晴らしく、加速したいと思ったところで狙ったとおりのスピードが得られるあたりは、「スーパーハイトワゴンの自然吸気エンジンはもたつく」という概念を消し去るものだ。

 また、カーブに進入するためのブレーキングに前のめり感がなく、そこから出口へ向かって立ち上がるまでの安定感も頼もしい限り。プラットフォームの進化などで重心を下げ、走りの根本から見直したというのも納得だ。

N-BOX カスタム G・EXターボ Honda SENSING

 そしてターボエンジンの「カスタム G・EXターボ」に乗り換えると、感覚的には自然吸気の1.5倍くらいの加速フィールでグイグイ走れる俊足。剛性感もよりガッシリと感じるが、それがガチガチの硬さではなく、しなやかさがあって乗り心地もいいことに感心した。

 ターボと自然吸気でサスペンションのチューニングを変えていないというが、ターボは15インチ、自然吸気は14インチとタイヤサイズや銘柄が変わり、重量差もあることで多少の違いが生じるようだ。とはいえ、ターボでもヤンチャ系ではなく、どちらも乗り味の方向性は快適・安心第一といった印象で、家族みんなが気持ちのいいクルマを目指したように感じた。

 また、ピラーを細くして視界を広くとったり、シートの調整幅を拡大して大柄なパパでも運転ポジションが合わせやすいようにしたりと、細かなこだわりも多い。今回は試せなかったが、先進安全運転支援システム「Honda SENSING」が全グレードに設定されるのも大きなトピックだ。近日中には一般道での試乗が叶いそうなので、さらに詳しいレポートができるはず。ひとまずは、新型N-BOXがまた歴史を塗り替えそうな「傑作」の予感プンプンだということをお伝えして、続報を楽しみにしていただきたい!

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。

Photo:高橋 学