すっかり秋も深まりを増し冬がすぐそこまで来ていることを朝夕の気温で感じるようになってきた。すでに北海道からは雪の便りも届いており、本州においてもじきに降雪が観測されることだろう。そして冬を迎えるにあたり忘れてはいけないのが、クルマのタイヤをスタッドレスタイヤに交換することだ。雪道を走行する可能性がある場合はもちろんのこと、雪がなくとも低温となった路面は、水分が凍って想定外の凍結路面となることもある。比較的暖かいとされる房総半島に暮らす私だが、写真家としてさまざまな地方にクルマで遠征することが多いため、例年12月初頭には冬タイヤに換装するようにしている。
まずは簡単に自己紹介をしておきたい。私は広告や雑誌記事などの撮影を行う仕事に加え、日本各地に赴き風景やそこに暮らす人々を撮影し、作品を制作する写真家としても活動している。カメラマンという仕事は機材が非常に多いので、公共交通機関を使うようなことは少なく、ほとんどの遠征において撮影機材を載せた自車で長距離を走り現地へと赴く。もちろん冬期においても、雪がほとんど降ることのない房総半島の自宅エリアから、雪の多い東北、上信越、そして北海道までも自車で駆けつける。そのため、命を預けることになるクルマのタイヤには、安全面の性能を第一の優先事項とするように意識している。
ここ数年、自車として使用してきたのはトヨタのヴェルファイアだ。ご存じのとおり、ミニバンとしてはクラス最大級の大きさと車重を持ったクルマである。さらに人と撮影機材を満載することも多いので、タイヤへかかる負荷も大きいはずだ。このヘビー級のボディは、特に雪上を走行する際は、いったん滑り出すとコントロールが難しい。過去にはスタッドレスタイヤを履いていても、何度かヒヤっとするシーンに出くわすこともあった。もちろん雪上の走行には十分すぎる程の注意を払ってはいるが、このときに履いていたスタッドレスタイヤでの走行には少なからず不安感を持ちながら運転していたのも事実だ。
そうした決して小さくはない不満点を抱えたまま、毎年雪上の運転を続けていたのだが、2年前にそれまで使用していたスタッドレスタイヤが摩耗し履き替えの時期を迎えた。ちょうどそんな折りに、なんともタイミングよく私が記事を寄稿させていただいているデジカメWatchの編集部から、姉妹誌であるCar Watchとの共同企画のお話をいただいた。それが2年前に公開した「雪景色を撮りに行こう! スタッドレスタイヤに挑戦」というスタッドレスタイヤのレビュー企画であったのだ。
この企画は写真家がスタッドレスタイヤを履いた自車で、雪深い地域へと撮影に赴き、雪景色撮影の魅力を伝えるというものであった。その際に提案を受けたスタッドレスタイヤが「ミシュランX-ICE XI3(ミシュラン エックスアイス エックスアイスリー)」(以下X-ICE XI3)である。
いまだから正直に言うが、これまで自身が乗ってきたすべてのクルマにおいてタイヤは国産メーカーのものを履いてきており、海外メーカーのタイヤを履くこと自体が初めての経験であった。もちろんミシュランというタイヤメーカーはとても有名なので存在は知っていた(これはミシュランのキャラクターであるミシュランマンの存在が大きい)。だが、これはあくまでもイメージだが、ミシュランという海外メーカーのタイヤは高級外車用のタイヤであると漠然と思い込んでいたのである。
何はともあれ人生初の海外メーカーのタイヤ、それもスタッドレスタイヤのX-ICE XI3に履き替え、いきなりの雪国撮影に出かけることとなった。その顛末は先にも紹介した「雪景色を撮りに行こう! スタッドレスタイヤに挑戦」に詳細を記してあるが、一言でいうならば、それまでのスタッドレスタイヤに持っていた不満点が、X-ICE XI3では一掃されたことにただただ驚くばかりであった。雪上や凍結した路面での走行性能や制動性能はもちろんのこと、いや、むしろスタッドレスタイヤを履いている期間に走るドライ路面での安定性、グリップ性能、アクセルを踏み込んだ際の踏ん張りなどが、それまで履いてきたどのスタッドレスタイヤとも別次元であった。大げさな話ではなく、これは私のスタッドレスタイヤに対する認識を大きく変えるきっかけとなった。
さて、ここまででスタッドレスタイヤをX-ICE XI3に履き替えた顛末を改めてお話しさせていただいた訳だが、実はここからが今回のレポートの本題となる。
X-ICE XI3に履き替えたのが2013年12月のこと。その冬は新潟、長野、岐阜、群馬、北海道へ赴き、また翌年となる昨冬にも長野、群馬、北海道などで撮影行を敢行した。いずれも翌年のGW明けとなる5月第1週前後までこのタイヤを履き、日常のドライ路面と併せてかなりの距離を走ったことになる。
今回は2シーズン目となったX-ICE XI3を履き、今年1月に赴いた北海道での撮影作品を掲載させていただきたいと思う。実は北海道は私の作品撮影の舞台として10数年に渉り、年に数回は訪れている地だ。とくに極寒期にも赴き雪景色の撮影を行うことが私のライフワークともなっている。ここ数年は自車に機材を満載し北海道までフェリーで向かい、10日から2週間程度かけて北海道各地を走り回っている。
今回訪れたのは、かつて北海道の金融街と呼ばれた港町・小樽。北海道初にして現ニッカウヰスキー発祥の地である余市のウイスキー蒸溜所、豊かな自然に恵まれ冬季は一面銀世界となるニセコである。またこの撮影期間中、毎年私が主催している撮影ワークショップも同時に開催し、美瑛、富良野、南富良野、新得、帯広、上士幌と広範囲にて撮影を行った。この2週間の北海道滞在期間中の走行距離は、延べにして2,000kmを超えるものとなった。
毎年1月に開催している撮影ワークショップでは、一面の雪景色のなかでのモデルポートレート撮影と風景、夜景撮影の実習を行っている。南富良野にあるダム湖「かなやま湖」湖畔のリゾートホテルをベースキャンプとし、この極寒の時期にしか撮れない特別な光景を撮ることができるスペシャルワークショップだ。なお、今冬も来年1月に北海道ワークショップを開催する。興味のある方はこちらで募集しているので参照いただきたい。
一言で北海道といっても、そのエリアは広く、場所によって気温も違えば雪質も違い、道路の状況も異なってくる。今回の舞台となった富良野周辺と新得、帯広のある十勝周辺でも天候は大きく異なり、富良野周辺はいつもに増した厳しい寒さと深く降り積もった雪道を走行し、十勝周辺ではこの時期の北海道としては異例とも言えるほどのプラス1℃を超える暖かさで、雪が溶け日中はシャーベット状、夜間は凍りつくブラックアイスバーンとなる滑りやすい路面を走行しなければならなかった。
このように各所ごとで非常に極端な状況となってしまった今回の撮影行だが、結論から言えば2シーズン目を迎えたX-ICE XI3ではあったが、その走行性能は非常に高いレベルを維持してくれていた。粉雪が舞うような降りたての雪面でも、踏み固められ圧雪された硬い雪面でも、アクセルの踏み込み量に比例してタイヤのブロックパターンが雪面に食いつくようにトルクを伝えてくれるのを実感できた。
また、シャーベット状やブラックアイスバーンとなった道路面においても、慎重なアクセルワークとブレーキング、ハンドリングこそ欠かせないが、極端な滑りによる想定外の挙動で、ひやっとさせられることはなかった。
一般的にタイヤの劣化は走行距離による磨耗と経年劣化によるゴムの硬化だ原因だという。特にゴムの柔らかいスタッドレスタイヤは、最初に装着してから年月が経つにつれて大きく劣化が進む。だが、これはあくまでも私個人の感触であるが、このX-ICE XI3では前年の走りとの差をほとんど感じることなく安心して雪道を走行することができた。
過去に履いてきたスタッドレスタイヤでは、使用シーズンを重ねるごとにグリップ感や荷重がかかった際の踏ん張りなどが徐々に弱まっているのを実感していたことを考えると、このX-ICE XI3の安心感は何者にも代えがたく感じる。現在の摩耗状況から推測しても、おそらく3シーズン目を迎えたとしてもこれまで履いてきたスタッドレスタイヤのように「ラストシーズンだからダマシダマシ走る」といった余計な不安材料とは無縁になるに違いない。これほどまでに信頼感が高いスタッドレスタイヤでの走行は初めての体験であった。
これまでも様々なスタッドレスタイヤを履いてきたが、2年前にこのX-ICE XI3のレビューを担当させてもらうまで、スタッドレスタイヤというものは、とにかく「滑らない」ことだけが目的の、走りに妥協が必要なタイヤだと思っていた。
しかし、このロングタームレビューを通じ、2シーズンに渡り様々な路面状況にて走行を行ったことで、スタッドレスタイヤでも安心感と心地よい走りの両立は可能であることに気づけたことは正直おどろきであった。このような仕上がりとなっているミシュランタイヤは、以前私が漠然と思っていたように高級車のみでなく、生活のなかで日常的に走るクルマや、私のように仕事で走行距離が多くなるクルマにもオススメできるタイヤであることを身を以て実感している。今後、クルマを乗り換えた際にもまたミシュランタイヤを履きたい、そう思わせるに十分な魅力をもったタイヤだと確認している。
モデル:夏弥
協力:ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸溜所 かなやま湖ログホテルラーチ
(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現 東京ビジュアルアーツ)卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍やWeb誌にも数多く寄稿している。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)。2015年9月よりデジタルハリウッド「カメラの学校」講師。2016年1月22〜24日北海道撮影ワークショップ開催予定。詳細はisopy.jpにて。
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