CES 2016

Quanergy、2016年にソリッドステート型LIDAR「S3」の提供を開始

2年後を目処にASIC化し、100ドル以下で提供

2016年1月6日~9日(現地時間) 開催

Quanergy Systems CEOのLouay Eldada(ロエ・エルダダ)氏

 Quanergy Systemsは1月6日(現地時間)、米ラスベガスで開催中の「CES 2016」でプレスカンファレンスを開催し、自動運転技術などに用いられるセンシング技術の1つLIDAR(Light Detection and Ranging)を用いたソリッドステート型ソリューション「S3」を発表した。ブースでもプロトタイプを搭載したベンツ GLE450を展示している。

 1月4日に行なわれたNVIDIAのプレスカンファレンスにおいても、車載人工知能エンジン「DRIVE PX 2」と開発環境の「DriveWorks」の紹介でLIDARを使ったデモを示しているほか、Quanergyに出資している米国の大手部品メーカーであるDelphiもCESに出展するなど、同社のLIDARソリューションの紹介が行なわれている。

 LIDARは短波長の光(レーザー)を照射し、その反射を読み取って対象を認識する技術で、電波を用いるレーダーより小型化できるほか3次元の物体認識が可能であるなどの特徴がある。また、対象認識ではカメラを用いたものもあるが、こちらは適用範囲が狭い一方で、道路標識など色を認識する点では優れる。

LIDARが活用される柱となる4つの分野
LIDARの活用例
LIDARとレーダー、カメラによるセンシング技術の特性比較

 Quanergyでは、駆動部を持たせることで360度検出可能なLIDARソリューション「M8」を1000ドル未満の価格帯で提供しているが、2016年には駆動部を持たないソリッドステート型の「S3」を250ドル未満の価格帯で提供することが発表された。同社ではこれを第2世代のLIDARソリューションに位置付けている。

 第2世代となるS3は、90×60×60mm(幅×奥行き×高さ)のモジュールの形で提供される。コンパクトであることから、グリルの後ろなどに収められることがメリットの1つとなる。ブースの展示車では搭載した状態を見ることはできなかったが、グリルの黒い部分が不可視光ながらLIDARの波長は通すパネルになっているそうで、目立たずに搭載できることを示していた。

 同社と戦略的パートナーシップを締結しているダイムラーが最初のOEM先として決まっており、プレスカンファレンスには運転手支援システムを手がけるダイムラーの担当者も登壇。ソリッドステート化したことでコストが下がり、信頼性が高まることをメリットとして、ADASや自動運転システムの次のステージに向けたエキサイティングな製品であると述べた。

 簡単な仕組みも図解で示された。微妙に位相が異なるレーザーを発し、その反射を読み取り、演算を介して対象を認識する。対応範囲は10cm~150m程度としており、対象へのズームインなどソフトウェアからさまざまな制御をリアルタイムに行なえるという。

 第2世代となるS3は9月には出荷準備を整え、第4四半期から出荷を見込んでいる。

 さらに、2年後を目処に、S3をASICに統合するロードマップを示している。同社ではこのASIC化したS3を第3世代に位置付けており、第2世代となるS3の機能をすべて1チップに統合。小型化となるだけでなく、100ドル以下と低価格化も実現する。エルダダ氏はセンサービジネスにおいて100ドルという数字はマジックナンバー、と表現し、限られた車種だけでなく広く利用されるためには、この価格帯を実現できることが重要であるとした。

同社にとって第2世代LIDARソリューションとなるソリッドステート型の「S3」を2016年に250ドルの価格帯で提供。さらに2年後を目処に1チップ化した第3世代を100ドルのレンジへ持っていく
すでに提供しているメカニカルLIDARの「M8」
ソリッドステート型のS3をCES 2016で展示。小型化、低価格化が大きな特徴
Quanergyブースで展示されたS3を搭載するベンツ GLE450。メカニカル型のように上部にコンポーネントを搭載することなく、フロントグリルの内側に収納されている
第2世代となる「S3」は90×60×60mmのモジュールとして提供される
異なる位相のレーザーを照射可能なオプティカルフェイズドアレイを利用する
S3はソフトウェアによる制御も可能
ブースで上映された車載LIDARのデモ。動く物体の種類や車線も認識している
既存のメカニカルLIDAR「M8」
ブースではM8を用いたセキュリティシステムのデモを実施。決められたエリア内に入った人を赤く表示している。カメラよりも広範囲の情報を得られるのがメリットという

編集部:多和田新也