CES 2017

Qualcomm、「Snapdragon 820A」などがフォルクスワーゲンの2018年モデルに採用

V2Xの実証実験をAudi、Ericssonとドイツで実施へ

自動車向け製品について語るQualcomm Technologies 上席副社長 兼 オートモーティブ事業本部長 パトリック・リトル氏

 半導体メーカーのQualcommは、「CES 2017」のプレスデー(2017年1月3日~1月4日)の初日に記者会見を行ない、同社の最新製品となるスマートフォン/タブレット/PC向けのハイエンドSoC「Snapdragon 835」などを発表した。

 記者会見の後半、自動車関連のソリューションが紹介。同社が2016年にスマートフォンやPC向けに投入した携帯電話回線を利用して1Gbpsの通信速度を実現するLTEモデム「Snapdrago X16 LTE modem」のオートモーティブグレード製品を発表した。自動車メーカーはこの製品を利用すると、セルラー回線を利用してV2X機能を実現する「セルラーV2X」「DSRC」などの実装が容易になる。

 Qualcommは昨年の「CES 2016」で発表した同社のIVI/デジタルコックピット向け製品「Snapdragon 820A」および、LTEモデムとなる「Snapdragon X12 LTE modem」と「Snapdragon X5 LTE modem」が、2018年~2019年に発売を予定しているフォルクスワーゲンの自動車に採用されたことを明らかにしたほか、Audi、Ericssonなどと共同でセルラーV2Xの実証実験をドイツで2017年に開始することを明らかにした。

「Snapdragon 820A」を採用したコネクテッドカーを2019年に発売

 Qualcommが発表したのは、2016年にスマートフォンやPC向けのLTEモデムとして発表した「Snapdrago X16 LTE modem」のオートモーティブグレード製品。Qualcomm Technologies 上席副社長 兼 オートモーティブ事業本部長 パトリック・リトル氏は「この製品は自動車にもギガビットクラスの通信速度をもたらす製品になる。それだけでなく、Wi-Fi/Bluetooth、GNSS、DSRC、セルラーV2Xなどの機能も合わせてもたらすことができる」と述べ、自動車にセルラー回線を利用した1Gbpsの通信速度やそれに付随する機能を提供する。

パトリック・リトル氏は、Qualcomm製品が「自動車にもギガビットクラスの通信速度をもたらす」と語る
自動車のIT化は加速するばかり
自動運転を導入する理由、全世界で年間120万人の交通事故死を減らすことができる

 Snapdrago X16 LTE modemは、LTEのカテゴリー16と呼ばれる通信モードをサポートしており、4x4 MIMOなどの手法を利用することで、下り最大1Gbpsの通信速度を実現することができる。それに加えて、Wi-Fi/Bluetooth/GNSSなどの無線に関してもコントローラがICに内蔵されており、無線部分を負荷するだけで低コストで実現することができる。さらに、DSRCやセルラーV2X(携帯電話回線を利用した路車間、車々間通信)に関してもオプションとしてサポートしており、自動車メーカーがそうした機能を実装することが容易になる。Qualcommの関係者によれば、オートモーティブグレードとなるので、自動車向けの温度サポートや長期間提供などが保証されているという。

自動車にはさまざまなワイヤレス機能が
Snapdrago X16 LTE modemのオートモーティブグレードを追加

 リトル氏は「ドイツの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンが、Snapdragon 820AおよびLTEモデムを採用する。前者は2019年に、後者は2018年に発売されるコネクテッドカーに採用される」と述べ、同社の製品がフォルクスワーゲンのコネクテッドカーに採用されることを明らかにした。

各種の自動車向けOSに対応
フォルクスワーゲンがSnapdragon 820Aを搭載したコネクテッドカーを2019年に、Snapdragon X12 LTE modem/Snapdragon X5 LTE modemを搭載したコネクテッドカーを2018年にリリースする予定

ドイツの公道でセルラーV2Xの実証実験。AudiとEricssonと共同で行う

 リトル氏はQualcommが自動運転に向けてソリューションを充実していく計画があるとし、その中でも通信に関するものを同社の強みとしてアピールした。前出の「Snapdrago X16 LTE modem」のオートモーティブグレード製品でもサポートされているセルラーV2Xをその代表として紹介した。

 セルラーV2Xと、IEEE802.11pとして定義されているV2Xとの違いは、11pがWi-Fiを利用して通信を行なうのに対して、セルラーV2Xは無線として携帯電話回線を利用することだ。このセルラーV2Xは、セルラー回線の仕様を定めている3GPPのリリース14と呼ばれるLTEの仕様の中で規格化がされているものとなる。将来的には自動車向け回線の本命と考えられている5G通信でも仕様に含められる予定だ

 Qualcommは、ドイツの国道交通省にあたるMinistry of Transportation and Digital Infrastructure (BMVI) の協力の下、Audi、Ericssonなどと共同でセルラーV2Xの実証実験を、ドイツの公道で今年から行なっていく計画だと明らかにした。

自動車の自動化は今後も止まらない
ドイツでセルラーV2Xの実証実験が行なわれる