CES 2017
Intel、BMWグループやMobileyeと自動運転車を2017年後半に実証実験
グローバル周波数対応の5Gモデムを競合他社に先駆け出荷へ
2017年1月11日 08:54
半導体メーカーのIntelは、「CES 2017」の会場において、自動運転の実現に向けたいくつかの新しい発表を行なった。その中で注目されているのは、ドイツのBMWグループ、イスラエルのMobileyeと共同で開発したBMWの自動運転車両の実証実験を2017年後半から開始するというもの。
そのほかIntelは、「CES 2017」の期間中に、同社が開発を続けている5G(第5世代移動通信システム)に対応したモデムの最新バージョンを、2017年の前半と後半に順次投入していくと明らかにした。
BMW/Mobileyeと共同開発の自動運転車が2017年後半に実証実験
Intelは、1月4日の朝にBMWの記者会見に登場し、自動運転のビジョンについて説明した。Intelは、BMWグループ(BMW、MINI、ロールス・ロイスなどのブランド有する)およびイスラエルのMobileye(モービルアイ)とアライアンスを組み、自動運転技術の開発を行なっている。
Intelがマシンラーニング/ディープラーニングを利用したAI(人工知能)やそれを活用できる半導体を開発し、MobileyeがカメラとCV(コンピュータビジョン)を利用した物体認識を担当、その技術要素を利用してBMWグループが完成車を作るという形で自動運転車の開発を進めている。
この3社のパートナーシップは2016年6月に発表され、現在も開発が進められている。2017年後半にそのテストカーが実際に路上に登場し、実証実験を行なうことが会見で発表された。
自動運転車開発プラットフォーム「Intel GO」
Intelは「CES 2017」において、そうした自動運転を実現するためのソリューション、「Intel GO」と呼ぶ自動運転車向けのプラットフォームを発表した。Intel Goは車両側の開発プラットフォームとなる「Intel GO In-Vehicle Development Platforms」、クラウドサーバーとの連携などを含めたソフトウェア開発開発キット「Intel GO Automotive Software Development Kit(SDK)」、さらには車両とクラウドサーバーを接続する携帯電話回線網を構築するための「Intel GO Automotive 5G Platform」から構成されている。「Intel GO」を利用することで、自動車メーカーはAIを利用した自動運転のエコシステムを構築することが可能になる。
車両側のIntel GO In-Vehicle Development Platformsには、次世代のAtomプロセッサ(14nmプロセスルールで製造、AEC-Q100グレード2/ISO26262 ASIL C認証)とAltera FPGAを利用したAtom版、次世代Xeonプロセッサ+Altera FPGAを搭載したコンピューティングボードを2枚まで搭載できるXeon版の2種類が用意されており、自動車メーカーのニーズに応じて変更することができる。これらを利用して、ADASを実現したり、自動運転を実現したりすることが可能になるとIntelでは説明している。
グローバルな周波数に対応した5Gモデムを今年サンプル出荷。Qualcommとの開発競争
そして、Intelにとってもう1つ鍵となる発表があった。Intelの5Gに関する開発の進展だ。5Gは、現在主要各国で利用されている携帯電話の通信方式である4G(より厳密に言うとLTEとか、HSPA+などと細分化されるが、ここでは4Gに統一する)の後継となる通信方式で、新しくミリ波と呼ばれる28GHzなどの超高周波数を利用してデータ通信を行なうもの。
これにより、ネットワーク全体で通信できるデータ量が増大し、1つのアンテナでカバーできる端末の数を増やしたりすることが可能になる。5Gに移行することで、回線に接続されるデバイスが従来のようにスマートフォンだけでなく、IoT(Internet of Things、常時接続機能を持つデジタル機器)やコネクテッドカー(インターネットに常時接続されている自動車)も同じように携帯電話回線を利用してインターネットに接続される。回線への負荷が高まると予想されていることに対しての回答になる。このため、5Gは自動運転を実現するための重要なピースの1つだと考えられている。
Intelは、2016年の2月にスペイン バルセロナで開催された「MWC 2016」会場において、5Gのトライアルキットを発表。パートナー各社と開発を続けてきた。その中にはNTTドコモといった日本のキャリアも含まれており、基地局の開発と同時にクライアント側の開発を続けてきている。
今回Intelは、昨年提供したトライアルキットに含まれている5Gモデムの第2世代製品として、「Gold Bridge(ゴールドブリッジ、開発コードネーム)」と呼ばれるモデムチップと、世界各国で利用される5Gの6GHz以下の周波数に対応したRFIC(高周波集積回路、無線信号を処理するチップのこと)となる「Monumental Summit(モニュメンタルサミット、開発コードネーム)」を発表した。
すでにIntelが2016年から提供するミリ波(28GHz)用のRFICとなる「Segula Peak(セギュラピーク、開発コードネーム)」と組み合わせることで、ミリ波そして6GHz以下の両方をサポート可能な5Gのモデムとして利用することができる。Intelによれば、グローバルな5G周波数をサポートする商用5Gモデムとしては世界初の製品になるという。
IntelはこのGold Bridgeを、ホームゲートウェイなどのIoT機器や自動車向けの5Gモデムと位置づけており、自動車メーカーなどに提供していきたいという意向だ。Intelは、このモデムを含む車載向け5G開発システムを、「Intel GO Automotive 5G Platform」として提供していく意向で、現在の4Gの規格であるLTEに対応したモデムであるXMM 7360 LTE modemなども含まれている。
Intelによれば、Monumental Summitを2017年前半に、Gold Bridgeを2017年後半にサンプル出荷開始。その後、遠くない時期に製品版が出荷される予定だ。5Gの開発では、Intelの競合となるQualcommも、同社CEO スティーブ・モレンコフ氏の基調講演の中で、ミリ波に対応した5Gモデムを2017年の終わりから2018年の年頭にかけて投入するロードマップを明らかにしており、今回の発表でIntelはQualcommに若干先んじることになる。今後も、5Gのメインターゲットと言われる車載でのマーケットシェアを巡り、両社の開発競争が繰り広げられていくことになりそうだ。